魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく

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第21話 社交界に咲いた魔界の花

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人間界最大の舞踏会場は、光で満ちていた。

高い天井から垂れるシャンデリア。
音楽と笑い声。
人間界と魔界――今では混じり合うことが当たり前になった空気。

「……すごい」

セラフィナは、ノエルの隣で小さく呟いた。

十歳になって、社交界に招かれるのは初めてだ。

(人が、いっぱい……)

ドレスの裾を、きゅっと握る。

(でも……)

視線を感じる。

たくさん。
本当に、たくさん。

(……みんな、こっち見てる)

胸が、少しだけどきどきした。

* * *

「――来たな」

ざわめきの中心で、金髪の王子が呟く。

「噂以上だ」

隣には、銀髪の王子。
その向こうに、青髪の王子。

三人とも、同じ方向を見ていた。

魔界の姫。

「……なぁ」

金髪の王子――カイゼル・レオニスが、ノエルに声をかける。

「紹介してもらえないか」

「魔界の美しい姫君に」

ノエルは、一瞬だけ黙った。

アルトも、横で小さく息を吐く。

(……来たか)

(……来たな)

だが、王子として。

「……わかりました」

ノエルは頷いた。

「こちらへ」

* * *

「セラフィナ」

ノエルが、やさしく呼ぶ。

「こちらは、隣国の王子たちだ」

アルトが続ける。

「ちゃんと紹介する」

セラフィナは、背筋を伸ばした。

(……えっと)

「レオニス帝国 皇太子、カイゼル・レオニス」

(……つよそう)

金色の髪。
背が高くて、
まっすぐな目。

(ちょっと、こわいけど綺麗な人)

「エルディア魔導王国 王子、リュシアン・エルディア」

(……きれい)

銀色の髪。
声も、動きも静か。

やさしそうなのに、
なにか、見られてる感じ。

「セレナイト王国 王子、フィオレ・セレナイト」

(……ちかい)

青い髪。
にこにこしてて、
距離が、近い。

でも、不思議と怖くない。

セラフィナは、ドレスの裾をつまみ、
小さくお辞儀をした。

「……はじめまして」

「セラフィナ・ノワールです」

その瞬間。

三人の王子の胸が、
それぞれ、違う音で鳴った。

* * *

「……噂以上だな」

カイゼルが、低く笑う。

「これは、帝国に連れて帰りたくなる」

「冗談が過ぎる」

ノエルの声が、少しだけ硬くなる。

リュシアンは、静かに微笑んだ。

「いえ。理解できますよ」

「彼女は……特別だ」

フィオレは、屈んで目線を合わせる。

「ねぇ、セラフィナ姫」

「踊るの、好き?」

(……踊る)

(好き…だけど……)

セラフィナは、少し考えてから答えた。

「……たのしいのは、すき…です…」

その言葉で。

空気が、一気に熱を帯びた。

「なら、俺と一曲」

「いえ、先約は――」

「順番制にしようか!」

三人が同時に動きかける。

「……待て」

低い声。

クロウ・フェルゼンが、
いつの間にか一歩前に出ていた。

「姫君は、まだ幼い」

「無理はさせない」

(……クロウ怖い顔してる)

セラフィナは、心の中で思う。

でも。

その背中は、ちょっと安心する。

* * *

音楽が、再び流れる。

セラフィナは、
ノエルとアルトの間に立ちながら、
小さく息を吐いた。

(……なんか)

(大変…)

でも。

胸の奥は、少しだけあたたかい。

(みんな、ちゃんと 見てくれてる)

知らない国の王子たちも。
知っている人たちも。

その視線の中心にいることを、
まだ、完全には理解していないまま。

社交界に咲いた魔界の花は。

この夜、
確かに――

世界中の心に、
根を張り始めていた。
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