魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした

月影みるく

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第22話 社交界に舞う、魔界の姫

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音楽が、静かに切り替わった。

弦の調べは、先ほどよりもゆるやかで、
それでいて――深い。

「……次の曲は」

司会役の貴族が声を張る。

「パートナーダンスです」

その瞬間。

会場の空気が、目に見えて変わった。

* * *

セラフィナは、息をひとつ整えた。

(……また、踊るのね)

ドレスの感触を確かめるように、指先を軽く握る。

深い紫紺のドレスは、
魔界の夜をそのまま写したようで、
胸元には淡く輝く魔石の装飾。

歩くたび、裾が星のように瞬いた。

(……視線、増えてる)

自覚はある。

だが、もう俯かない。

――魔界の姫として、ここに立っている。

* * *

「セラフィナ姫」

名を呼んだのは、ノエルだった。

「この曲……よろしければ」

差し出される手。

人間界の王子としての礼節と、
幼い頃から知る優しさ。

(……ノエル)

一瞬だけ、胸があたたかくなる。

「……はい、喜んで」

指先が、触れ合う。

その瞬間。

ノエルの心臓が、はっきりと跳ねた。

(……近い)

(こんなにも)

音楽に合わせて、静かに一歩。

ノエルの動きは、慎重で、
セラフィナの歩幅を何より優先していた。

「緊張は……」

「もう、大丈夫です」

セラフィナは、少し微笑む。

「楽しい、ですから」

その一言で、
ノエルの表情が、柔らいだ。

* * *

曲の後半。

視線の先で、アルトが立っている。

腕を組み、壁にもたれながら――
だが、目はずっとこちらを追っていた。

(……見てる)

(真剣な顔)

音楽が終わり、拍手。

ノエルが一礼する。

「ありがとうございました」

「こちらこそ」

一歩離れた、その瞬間。

「次は、俺だな」

アルトが、迷いなく前に出た。

「セラフィナ」

その声は、低く、はっきりしている。

「一曲、付き合え」

(……命令みたい)

(でも)

不思議と、嫌じゃない。

「……お願いします」

アルトの手は、温かく、力強い。

導き方は少し不器用だが、
迷いがない。

「人に見られるの、慣れたか」

「……まだ、少し」

「そうか」

アルトは、短く笑う。

「なら、俺だけ見ていろ」

(……え)

心臓が、跳ねた。

(それ、ずるい)

リズムに乗りながら、
セラフィナは必死に平静を保つ。

* * *

曲が終わる頃。

拍手は、先ほどよりも大きかった。

「……さすがだな」

どこからか、感嘆の声。

「魔界の姫……」

「まるで、花だ」

セラフィナは、一歩下がり、深く礼をする。

その仕草一つで、
また視線が集まった。

* * *

クロウ・フェルゼンは、少し離れた場所で見ていた。

(……成長された)

もう、庇うだけの存在ではない。

それでも。

(守らねばならない)

その想いだけは、変わらない。

* * *

セラフィナは、静かに息を吐く。

(……疲れた)

(でも)

胸の奥が、少し誇らしい。

人間界でも。
魔界でも。

自分は、ここに立てている。

社交界に舞った魔界の姫は、
ただ「守られる存在」ではなく――

選ばれ、見つめられ、
未来を動かす存在へと、確かに変わり始めていた。

この夜。

恋も、想いも、運命も。

音楽とともに、
静かに――加速していった。
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