逍遙の殺人鬼

こあら

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「もう出てきたら?ちーちゃんはもう上がら帰らせたよ。」

「隠れてたつもり無いんだけど」

「そうなの?ボクはてっきり、ちーちゃんから隠れてるのかと思ってたけど。遠くの方で見てるなんて、何かやらしい。」

「は?んな訳ねぇだろ。お前もサツが居たの気づいてただろ、出会したら面倒だ」

あのジジィの前に入って来た野郎、あいつは私服警官だ
狙いは多分…俺だろうな
そんな中にそうやすやすと居られるわけねぇだろ

この店は意外といろんな奴が出入りする
その中でも大物が好んで来る
そいつらの大半は俺の欲しい情報を持ってる
気色わりぃが、ハルが仲介人になって俺に情報を渡してくれる

ハルの奴も女みたいに振る舞うのが上手いもんだ
それに騙された野郎どもは簡単に口を割る
俺には出来ないことだ









「お前よくそんな格好してられるな」

「可愛いでしょー。この持って生まれた美貌を活かせてこの上ないね。ジャンのそのゴツい体じゃ、絶対似合わない。」

「キメェこと言うなよ。着たいとも思わねぇよ。それに、俺は女装の趣味はねぇ」

「ひどいなー、別に女のコになりたい訳じゃないし。だた…忘れたくないだけだよ。」

昔からハルが女装してたわけじゃない
急に女物の服を着出した時はすげぇ驚いたし、正直少し引いた
でも、理由は何となく分かってた
だから止めたりしなかった

いつも明るく見せてるけど、意外と暗い部分を持ってるのを知ってる
ガキの頃からの仲だからな

もともと厳しい家だっつうのに、女装して相当しごかれたのにやめねぇのは反抗心とかじゃない
ハルもあの女の事を忘れられないって事だろ
俺に"忘れろ"とか言うくせにな、いったいどの口が言うんだか

「んだよ、ニヤニヤしやがって」

「ボクは気づいちゃったよ。あの子に、キスマつけたでしょ?独占欲強いねー。」

「んなんじゃねぇし。キモい妄想とかすんなよ」

「話聞いてたろ?あの子があんなに勇敢だとは知らなかったねー。やっぱり、あの女とは似ても似つかない子だ。」

「おい、またその話かよ。今はそんな気分じゃねぇんだ、やめろよ」

「会わないで帰るの?あぁ、ジャンの目的は情報だったね。はいよ。」

そう言って俺の手にUSBメモリーを渡して来た
そうだ、今日情報を持った男が来るって言ったからここに来たんだ
俺の目的はこのUSB情報

あいつのことなんかどうでもいいさ
それに、あいつはかめのことが好きだ
俺よりかめの方が良いと、あいつの口から出た言葉は凄く鮮明に覚えている
相思相愛の奴らを邪魔して何になる、くだらねぇ

「苛つく…」

「んぁあ?なーに?ちーちゃんならもう寝てるよ。寝る前にひさしと楽しそうに電話してた。」

「だから何だ」

「取られちゃうよ。」

「知らねぇよ」

「要らないなら、ボクも狙っちゃおうかな~。あの子従順だし、ボクのこと凄く信用してるみたいだからさ。」

「俺には関係ねぇ」

そう、俺には関係ない
このUSB情報をかめに調べてさせて、俺はまた人を殺す
関係者全員殺して、あの人の敵を取る
俺には、それしかあの人を弔えない
その為には誰でも利用するし、何だってする
それが、今俺が生きている理由だ

だから…こうやって無防備に寝ているあんたの事も利用する
必要なら、あんたが嫌がることだって「やめて」と拒否しても、俺はやめない

あんたは俺と目を合わせるたびに、一度瞬きして目を逸らすよな
小さくて弱っこいくせに、必死になったりする姿を見てるともやっとする

「あんた痩せたな」

俺から逃げて、俺から離れて、あんな廃墟に近い教会でまともに食ってねぇのに1日中動いてよ
もともと太ってなかったのに、持ち上げた時すげぇ軽くて壊れちまうんじゃねぇかって…内心焦ってた

気持ち良さそうに寝息立てて寝てる
風呂に入ったせいで絆創膏が取れかかってる
真っ白な肌に赤く色付いた傷痕が廊下の明かり越しに照らされて、俺が反対側につけたやつよりも痛々しく見える
触れてみれば熱を持っていて、それが体温なのか俺のせいなのかは判別できない

俺が触るどあんたは体を強張らせる
あんたが寝てる時は、こうやって触れても嫌がらない
どんなに触れてもあんたは泣きそうな顔をしない
だから…あんたが寝てる時じゃないと、俺は優しく出来ないみたいだ
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