逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
266 / 333

267

しおりを挟む
笑い声、それが頭の中をこだまして駆け巡ってる
大きな音楽とみんなの笑いが混ざって、何だか気分がいい
体が軽くなったような、今なら空も飛べそうな程足取りも軽い
目の前で笑っている臼田うすたさんも、きっと私と同じ感じだろう

彼が笑うと私もさらに笑顔になった
なんでかなんて分からないし、それすら考えようとはしなかった

なんで笑ってるかも気にならない
ただ、笑っていただけ
だからジャンさんが後ろから来て、私に話しかけた時この笑いを分けたくて思わず抱きついた

「ジャンさん、ぎゅー」

「はぁ?あんた正気じゃないぞ」

「ぎゅうー、えへへ」(”正気じゃない”って言われちゃった。)

「あんた何か食ったか?」









(何かって、)「いっぱい食べました!!」

「だからんだって!!」

「怒んないでくださいよジャンさん。もっと、ぎゅーしますから」

「はあぁ?もういい」

「えぇー、どこ行くんですかー?」

「おい、離せって」

ジャンさんは怒ってる
笑ってもらいたくって抱きついたのに……
(…全然笑ってくれない。)

離せ離せと私を邪魔だと言うように引き離そうとする
どうしてそんなに怒ってるの?私には分からない
臼田うすたさんなら笑ってくれるのに、なんで怒ってるのよ……

「いい加減に、」

「ヤです…。ジャンさんだって私が”やめて”って言っても、やめてくれなかったじゃないですか」

「何言ってんだよ。…あぁ、分かった。捕まえといてくれ、あとカメの回収頼んだ」

「何が”分かった”っていうんですか?…」

私が話してるのに、耳に手を当てて聞いてくれないなんて酷い
さっきまで嬉しい気持ちでいっぱいだったのに、今は真逆な気分だ

「あんたに言ったんじゃない」って冷たく言って、本当にひどい人だ
絶対に離したりなんかしない
いつもいつも私を困らせるんだ、これくらいしたってバチは当たらないでしょ?

顔をジャンさんのお腹にうずめた
離れないように、取れないように後ろで手と手を掴んで拘束する
ジャンさんは「分かった分かった」って面倒くさそうな気怠い声で言ってから、私を持ち上げた
あんなに強く抱きついていたのにいとも簡単に解かれ、肩に担がれて移動した

相変わらずガヤめいた店内と笑い声の音だけが耳に入って来る
でもその音は徐々にボリュームダウンしていき、次第に小さくなる
カジノを出たのか、それとも私の耳がおかしくなって聞こえなくなったのか
答えは前者だった

「あんたはここに居ろ」

置いて行くんですか……?」

「他の奴らを迎えに行くだけだ、変なこと言うな」

「”変”ってなんですか…。真面目に言ってるのにジャンさんはちゃんと聞いてもくれないし、言ってもくれない」

また……ひとりにされるんだ
あの時とおんなじ風に、ひとりにしてどこかに行っちゃうんだ…

教会で会った時も本当のこと言わないで、ずっと私の反応を楽しんでたんだ……
春さんまで呼んで、私があんな所でシスター見習いのフリなんかしてたのを面白おかしく笑ってたんだ…きっと
だから私の手でひよこを殺して、体を洗うように言って”笑顔でいてほしい”だなんて戯言言って、陰では笑ってたんでしょ…
私の幻にまで現れてさ、私を馬鹿にしてるんでしょ

_____「ひどい人だ…」………

「そうだ、俺はひどい奴だ」

「……ずっとひどい人だったら、よかったのに…。どうして優しくするの………」

「そんなの俺が知りてぇよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...