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第二十三話 責任
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第二十三話 責任
王都は、怒りよりも疲労に包まれていた。
暴露から数日。怒号は消え、代わりに低い囁きが街を満たしている。
――誰が責任を取るのか。
取引所の掲示板はほとんど動かない。エルドラド株は、もはや記号のような存在になっていた。
だが人々の視線は、数字ではなく宮殿へ向いている。
宮殿の大広間。
重臣、貴族、商会代表が並ぶ。
その中央に、ロデリックが立っていた。
顔色は灰色に近い。
リリアーナは玉座から静かに見下ろす。
「財務卿ロデリック」
「……はい」
「監査結果に基づき、虚偽担保の黙認、過大評価の承認、融資拡大の推進について、説明を求めます」
広間が息を止める。
ロデリックはゆっくりと口を開く。
「市場の拡大は、王国の繁栄に資すると判断しました」
「実在確認は?」
「……南大陸の報告を信頼しました」
「信頼の裏付けは?」
沈黙。
それが答えだった。
リリアーナは淡々と告げる。
「虚偽の可能性を認識しながら、承認を続けた事実が確認されました」
ざわめきが広がる。
ロデリックは膝を折る。
「陛下……私は、王国のために」
「王国とは、虚飾ですか」
その一言で、空気が凍る。
ロデリックは目を閉じる。
敗北を、ようやく受け入れた。
「責任を取ります」
その声は、かすれている。
広間の扉が開く。
監査局の官吏が前に進む。
「財務卿ロデリック、職務停止および財産調査開始」
王国史に残る瞬間だった。
広間は静まり返る。
リリアーナは告げる。
「責任は、連鎖の終点です」
虚偽は連鎖した。
担保が連鎖し、融資が連鎖し、破綻が連鎖した。
ならば責任も、連鎖の最後に置かねばならない。
ロデリックは立ち上がる。
もはや財務卿ではない。
ただの一人の男だ。
「陛下……王国を、お守りください」
「守ります」
短い返答。
彼は広間を去る。
その背中に、誰も声をかけない。
外では、布告が貼られる。
――財務卿ロデリック、職務停止。
民衆はそれを読む。
怒りは、静かに落ち着く。
誰かが責任を負う。
それは秩序の回復を意味する。
宮殿。
シルヴィアが言う。
「これで、一区切りですか」
「いいえ」
リリアーナは首を振る。
「個人の責任は始まりに過ぎません」
「では次は?」
「制度です」
虚偽を生んだのは、人だけではない。
監査なき承認。
保証なき熱狂。
制度の穴。
女王は窓の外を見る。
取引所は静かだ。
数字は動かない。
だが人々は、また働き始めている。
公共事業の槌音が遠くで響く。
「責任は、終わりではありません」
リリアーナは言う。
「秩序の再設計が、本番です」
王都の空は、薄く晴れていた。
虚飾は剥がれ、責任が置かれた。
次に築くのは、地に足のついた王国だった。
王都は、怒りよりも疲労に包まれていた。
暴露から数日。怒号は消え、代わりに低い囁きが街を満たしている。
――誰が責任を取るのか。
取引所の掲示板はほとんど動かない。エルドラド株は、もはや記号のような存在になっていた。
だが人々の視線は、数字ではなく宮殿へ向いている。
宮殿の大広間。
重臣、貴族、商会代表が並ぶ。
その中央に、ロデリックが立っていた。
顔色は灰色に近い。
リリアーナは玉座から静かに見下ろす。
「財務卿ロデリック」
「……はい」
「監査結果に基づき、虚偽担保の黙認、過大評価の承認、融資拡大の推進について、説明を求めます」
広間が息を止める。
ロデリックはゆっくりと口を開く。
「市場の拡大は、王国の繁栄に資すると判断しました」
「実在確認は?」
「……南大陸の報告を信頼しました」
「信頼の裏付けは?」
沈黙。
それが答えだった。
リリアーナは淡々と告げる。
「虚偽の可能性を認識しながら、承認を続けた事実が確認されました」
ざわめきが広がる。
ロデリックは膝を折る。
「陛下……私は、王国のために」
「王国とは、虚飾ですか」
その一言で、空気が凍る。
ロデリックは目を閉じる。
敗北を、ようやく受け入れた。
「責任を取ります」
その声は、かすれている。
広間の扉が開く。
監査局の官吏が前に進む。
「財務卿ロデリック、職務停止および財産調査開始」
王国史に残る瞬間だった。
広間は静まり返る。
リリアーナは告げる。
「責任は、連鎖の終点です」
虚偽は連鎖した。
担保が連鎖し、融資が連鎖し、破綻が連鎖した。
ならば責任も、連鎖の最後に置かねばならない。
ロデリックは立ち上がる。
もはや財務卿ではない。
ただの一人の男だ。
「陛下……王国を、お守りください」
「守ります」
短い返答。
彼は広間を去る。
その背中に、誰も声をかけない。
外では、布告が貼られる。
――財務卿ロデリック、職務停止。
民衆はそれを読む。
怒りは、静かに落ち着く。
誰かが責任を負う。
それは秩序の回復を意味する。
宮殿。
シルヴィアが言う。
「これで、一区切りですか」
「いいえ」
リリアーナは首を振る。
「個人の責任は始まりに過ぎません」
「では次は?」
「制度です」
虚偽を生んだのは、人だけではない。
監査なき承認。
保証なき熱狂。
制度の穴。
女王は窓の外を見る。
取引所は静かだ。
数字は動かない。
だが人々は、また働き始めている。
公共事業の槌音が遠くで響く。
「責任は、終わりではありません」
リリアーナは言う。
「秩序の再設計が、本番です」
王都の空は、薄く晴れていた。
虚飾は剥がれ、責任が置かれた。
次に築くのは、地に足のついた王国だった。
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