投資の天才”を名乗る臣民たちよ。 その全財産、確かに受け取った。 我が民のために活かそう』 〜虚飾を砕く女王の経済鉄槌〜

しおしお

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第二十四話 再設計

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第二十四話 再設計

 王都に、新しい張り紙が増え始めた。

 取引所の掲示板ではない。

 工事現場の案内でもない。

 それは、法案の告知だった。

 ――金融監督庁設置法。  ――担保評価透明化法。  ――海外投資実在確認義務法。

 文字は小さい。

 だが重い。

 宮殿の会議室では、地図と帳簿が広げられている。

 リリアーナは立ったまま言う。

「虚偽を罰するだけでは不十分です」

 重臣たちが耳を傾ける。

「虚偽を可能にした構造を改めます」

 財務卿代理が慎重に問う。

「監督庁の権限は?」

「監査権、凍結権、強制開示権」

 ざわめき。

「それでは、貴族の特権が……」

「特権は、虚偽の免罪符ではありません」

 静かな断言。

 シルヴィアが補足する。

「担保は実体確認を経て登録制に」

「担保登録台帳を公開」

「融資は中央報告義務」

 言葉が積み上がる。

 それは新しい枠組み。

 ロデリックの不在は、重い。

 だが会議は進む。

 外では、没収された屋敷の一つが行政庁舎へ改装されていた。

 豪奢な舞踏室が、書類室に変わる。

 シャンデリアの下に、監査官の机が並ぶ。

 象徴的だった。

 虚飾が、制度に転用される。

 地方。

 差し押さえられた農地が再分配される。

「小作契約です」

「三年更新制」

 農民が戸惑いながらも契約書に目を通す。

 文字は難しい。

 だが説明がある。

 透明。

 それだけで、空気は違う。

 王都銀行。

 再編計画が進む。

「投機資産の部門は閉鎖」 「実業融資を優先」

 銀行員たちの顔に、ようやく目的が戻る。

 取引所は縮小された。

 派手な看板は外され、規模は半分に。

 だが閉鎖はしない。

 市場は必要だ。

 ただし、透明であること。

 宮殿。

 リリアーナは布告書に署名する。

「これで、次の泡は防げますか」

 財務卿代理が問う。

「完全ではありません」

 女王は答える。

「ですが、虚偽は長くは続きません」

 制度は盾。

 万能ではない。

 だが、裸ではない。

 夕刻。

 広場で新法が読み上げられる。

 民衆は静かに聞く。

 拍手はない。

 歓声もない。

 だが嘲笑もない。

 冷静な受容。

 地下倉庫。

 備蓄の一部が市場に放出される。

 価格が安定する。

 実体は、ゆっくりと流れ始める。

 リリアーナは窓辺に立つ。

「終わったと思いますか」

 シルヴィアが問う。

「いいえ」

 女王は微笑む。

「崩壊は終わりました」

「では?」

「再設計は、始まったばかりですわ」

 王都の空は、確かに明るくなっていた。

 虚飾は消え、制度が立つ。

 王国は、泡の上ではなく、地面の上に立ち始めていた。
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