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第二十九話 公開聴聞
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第二十九話 公開聴聞
王都の中央広場に、仮設の壇が設けられた。
舞踏会の舞台ではない。
聴聞の場だ。
――経済崩落に関する公開聴聞会。
布告にはそう記されている。
群衆が静かに集まる。
怒号はない。
だが関心は強い。
壇上に、金融監督庁の官吏、再編銀行の代表、そして元財務卿ロデリックが座る。
護衛はいる。
だが剣は抜かれていない。
リリアーナは玉座ではなく、傍聴席に座る。
王が裁くのではない。
制度が問われる。
司会官が口を開く。
「本日、崩落に至る経緯と責任の所在を、公開の場で明らかにします」
ざわめき。
ロデリックが立ち上がる。
顔色は落ち着いている。
「私は、虚偽担保の可能性を認識しながら、承認を続けました」
広場が静まり返る。
「理由は、市場崩壊への恐怖です」
誰かが小さく笑う。
苦い笑いだ。
「崩壊を恐れ、虚偽を支えた。その結果、より大きな崩壊を招きました」
言葉が、石のように落ちる。
次に銀行代表が発言する。
「担保評価を精査せず、融資を拡大しました」
理由は同じ。
利益。
期待。
圧力。
民衆の中から声が上がる。
「なぜ誰も止めなかった!」
静寂。
監督庁官吏が答える。
「制度がなかった」
それが事実。
監査権も、強制開示も、透明台帳もなかった。
ロデリックが再び口を開く。
「私は、特権を疑わなかった」
重い告白。
「貴族の言葉は真実だと、無意識に思っていた」
広場の空気が変わる。
怒りは、少しだけ形を変える。
リリアーナは静かに立ち上がる。
「虚偽は、個人の罪です」
視線が集まる。
「ですが、それを可能にした制度もまた、罪を負います」
群衆は耳を傾ける。
「本日をもって、監督庁の権限を拡大します」
ざわめき。
「海外契約は王室登録制。担保は公開台帳義務。融資限度は自己資本比率に基づく」
言葉は難しい。
だが意味は明確。
繰り返さない。
公開聴聞は、断罪の場ではなかった。
確認の場。
終盤、ロデリックが頭を下げる。
「王国に損失を与えた責任を負います」
拍手は起きない。
だが石も飛ばない。
それが成熟だった。
聴聞が終わり、人々は散っていく。
議論を交わしながら。
怒りを抱えながら。
だが暴力はない。
宮殿へ戻る道すがら、シルヴィアが言う。
「公開してよろしかったのですか」
「隠せば、次は噂になります」
リリアーナは答える。
「噂は虚偽より速く広がります」
広場の壇は解体される。
石畳に跡は残らない。
だが人々の記憶には残る。
公開聴聞。
責任を見せる。
制度を見せる。
王国は、隠すことをやめた。
それが、再建の次の段階だった。
王都の中央広場に、仮設の壇が設けられた。
舞踏会の舞台ではない。
聴聞の場だ。
――経済崩落に関する公開聴聞会。
布告にはそう記されている。
群衆が静かに集まる。
怒号はない。
だが関心は強い。
壇上に、金融監督庁の官吏、再編銀行の代表、そして元財務卿ロデリックが座る。
護衛はいる。
だが剣は抜かれていない。
リリアーナは玉座ではなく、傍聴席に座る。
王が裁くのではない。
制度が問われる。
司会官が口を開く。
「本日、崩落に至る経緯と責任の所在を、公開の場で明らかにします」
ざわめき。
ロデリックが立ち上がる。
顔色は落ち着いている。
「私は、虚偽担保の可能性を認識しながら、承認を続けました」
広場が静まり返る。
「理由は、市場崩壊への恐怖です」
誰かが小さく笑う。
苦い笑いだ。
「崩壊を恐れ、虚偽を支えた。その結果、より大きな崩壊を招きました」
言葉が、石のように落ちる。
次に銀行代表が発言する。
「担保評価を精査せず、融資を拡大しました」
理由は同じ。
利益。
期待。
圧力。
民衆の中から声が上がる。
「なぜ誰も止めなかった!」
静寂。
監督庁官吏が答える。
「制度がなかった」
それが事実。
監査権も、強制開示も、透明台帳もなかった。
ロデリックが再び口を開く。
「私は、特権を疑わなかった」
重い告白。
「貴族の言葉は真実だと、無意識に思っていた」
広場の空気が変わる。
怒りは、少しだけ形を変える。
リリアーナは静かに立ち上がる。
「虚偽は、個人の罪です」
視線が集まる。
「ですが、それを可能にした制度もまた、罪を負います」
群衆は耳を傾ける。
「本日をもって、監督庁の権限を拡大します」
ざわめき。
「海外契約は王室登録制。担保は公開台帳義務。融資限度は自己資本比率に基づく」
言葉は難しい。
だが意味は明確。
繰り返さない。
公開聴聞は、断罪の場ではなかった。
確認の場。
終盤、ロデリックが頭を下げる。
「王国に損失を与えた責任を負います」
拍手は起きない。
だが石も飛ばない。
それが成熟だった。
聴聞が終わり、人々は散っていく。
議論を交わしながら。
怒りを抱えながら。
だが暴力はない。
宮殿へ戻る道すがら、シルヴィアが言う。
「公開してよろしかったのですか」
「隠せば、次は噂になります」
リリアーナは答える。
「噂は虚偽より速く広がります」
広場の壇は解体される。
石畳に跡は残らない。
だが人々の記憶には残る。
公開聴聞。
責任を見せる。
制度を見せる。
王国は、隠すことをやめた。
それが、再建の次の段階だった。
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