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55 トントン、注目される
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魔王は闘技場の観客席で一人、試合が始まるのを待っていた。
「くそ、なぜ我が出場できんのだ……」
一応受付にエントリー申請に行った。しかし当然のごとく却下であった。
魔王はこの上なくぞっとしない。
「ふん! こうなれば、しこたまうまいもんでも食ってくれるわ!」
魔王は売り子のお姉さんから唐揚げやジュースなどを頼んで貪り食う。
おもしろくない。
自分があの会場に立てないのが、あそこでトントンと試合ができないのが、心底おもしろくない。
ーーーーーー
《精霊剣使い》フューエル・ノックスは、闘技場の賭博用受付で、対戦者表を眺めていた。
表に見たことのある顔写真が現れて、口元を緩ませる。
名前 トントン・トトントーン
Eクラス冒険者
「へえ、あのおっさんも勝ち残ったんだ。つうか出場してたんだ」
フューエルも、トントンの強さを見抜いていた。
精霊剣なしならば、自分が勝てるかどうか……といった見解であった。
当然、自分も予選を突破していた。本選リーグがトントンと同じでなかったことが残念でならない。
「誰に賭けるかと思っていたが……なら、おっさんに俺様の有り金全額賭けるか!」
若い無頼漢は、快活に笑いながら財布の紐を全開にする。
ーーーーーー
観客席にいた《竜殺し》Sクラス冒険者ゼビカ・フラムバーナーは、対戦表から、やはりフューエルと同様トントンの写真を見つけて感心した。
「一度会った時にも感じていたが……強いな、あの御仁は」
ゼビカは汗もかかずに軽く予選を通過していた。
予選は、猛者とは出会えなかった。
もしくは、自分が強くなりすぎたのかもしれない。
その自信が、トントンを見ていると揺らいでくるようだった。
「見たところ熟練の兵といった感じだが……」
ゼビカは顎に手を当てて考える。
「若い猛者たち相手にどう戦うのか……勉強させてもらおう」
ーーーーーー
特別席で、《剣帝》ガゼット・ディスオーバーは対戦表を眺める。
ガゼットはトーナメントを連覇している絶対的な強者であり、本来なら決勝前の対戦表など興味もないところだったが……。
「ふん。やはり、残ってきたか」
今回は違った。
対戦表で、受付を通った時にチラと見た顔を探していた。
ほとんど無意識のようなものだった。
確認しなくてはいけないような気がした。
それほどまでの人物と、ガゼットは直観していた。
決勝まで残れば、本物か。しかし、残る予感はしている。
で、あれば、手並の拝見といこうか。
ガゼットは一人静かに、試合開始の時を待つ。
ーーーーーー
観客席の隅で、青年が二人、試合が始まるのを待っている。
「……ライジング様、次の試合、どちらが勝つと思います?」
従者と思われる青年の一人が、主人と思われるもう一人の青年に問う。
ライジング、と呼ばれた青年は、その端正な顔立ちに微笑みを讃える。
「もちろん、あのおじさんの方。予選じゃボロボロを装ってたけど、強いね」
明るく長めの髪が揺れる。
「ま、誰が勝ち残ったとしても変わらないけどね」
「左様で」
従者と思われる青年が澱みなく頷く。
「誰が勝ち残っても、この僕、ライジングの敵ではない」
「かの《剣帝》でさえも」
「そういうこと」
ーーーーーー
全身を甲冑で覆った騎士のような姿の人物は、対戦表を見遣っている。
バイザーも下げ、完全に顔を覆っている兜。そこからは、やや興奮気味の呼吸の音しか漏れてこない。
「…………」
トントン対ローズウェル。
対戦表を持つ騎士は、その兜の隙間から、恨めしそうな視線をその顔写真に投げかけていた。
ーーーーーー
試合直前。
軽食屋から戻ってくると、俺は控室に置いていたはずのブロードソードが、どこにもないことに気づいた。
「俺の剣が……ない?」
部屋中探したが見当たらない。
控え室の外に出てみる。ない。
「すまんが、俺の剣を見なかったか? 誰かが持っていってしまったとか」
入り口にいた警備兵に訊いてみるも、
「いえ、知りませんが」
首を横に振られた。
「誰も侵入者はいなかったのだな?」
「ええ」
「なるほど、よくわかった」
とにかく紛失したらしい。
この試合では、帯剣していないと失格となる。
どこかで剣を手に入れねばならんか……しかし金はすでに全額自分に賭けてしまった。小銭も軽食屋で使ってしまったし、もはや雀の涙ほどしか残っていない。
戦士の町なだけあって新しい剣はそこらじゅうに売っているが、それを買う金がない。
「お時間です。試合へどうぞ」
係員に促されるが、
「……少し待ってくれ」
俺は帯剣をどうするべきか、その策を考える。
「くそ、なぜ我が出場できんのだ……」
一応受付にエントリー申請に行った。しかし当然のごとく却下であった。
魔王はこの上なくぞっとしない。
「ふん! こうなれば、しこたまうまいもんでも食ってくれるわ!」
魔王は売り子のお姉さんから唐揚げやジュースなどを頼んで貪り食う。
おもしろくない。
自分があの会場に立てないのが、あそこでトントンと試合ができないのが、心底おもしろくない。
ーーーーーー
《精霊剣使い》フューエル・ノックスは、闘技場の賭博用受付で、対戦者表を眺めていた。
表に見たことのある顔写真が現れて、口元を緩ませる。
名前 トントン・トトントーン
Eクラス冒険者
「へえ、あのおっさんも勝ち残ったんだ。つうか出場してたんだ」
フューエルも、トントンの強さを見抜いていた。
精霊剣なしならば、自分が勝てるかどうか……といった見解であった。
当然、自分も予選を突破していた。本選リーグがトントンと同じでなかったことが残念でならない。
「誰に賭けるかと思っていたが……なら、おっさんに俺様の有り金全額賭けるか!」
若い無頼漢は、快活に笑いながら財布の紐を全開にする。
ーーーーーー
観客席にいた《竜殺し》Sクラス冒険者ゼビカ・フラムバーナーは、対戦表から、やはりフューエルと同様トントンの写真を見つけて感心した。
「一度会った時にも感じていたが……強いな、あの御仁は」
ゼビカは汗もかかずに軽く予選を通過していた。
予選は、猛者とは出会えなかった。
もしくは、自分が強くなりすぎたのかもしれない。
その自信が、トントンを見ていると揺らいでくるようだった。
「見たところ熟練の兵といった感じだが……」
ゼビカは顎に手を当てて考える。
「若い猛者たち相手にどう戦うのか……勉強させてもらおう」
ーーーーーー
特別席で、《剣帝》ガゼット・ディスオーバーは対戦表を眺める。
ガゼットはトーナメントを連覇している絶対的な強者であり、本来なら決勝前の対戦表など興味もないところだったが……。
「ふん。やはり、残ってきたか」
今回は違った。
対戦表で、受付を通った時にチラと見た顔を探していた。
ほとんど無意識のようなものだった。
確認しなくてはいけないような気がした。
それほどまでの人物と、ガゼットは直観していた。
決勝まで残れば、本物か。しかし、残る予感はしている。
で、あれば、手並の拝見といこうか。
ガゼットは一人静かに、試合開始の時を待つ。
ーーーーーー
観客席の隅で、青年が二人、試合が始まるのを待っている。
「……ライジング様、次の試合、どちらが勝つと思います?」
従者と思われる青年の一人が、主人と思われるもう一人の青年に問う。
ライジング、と呼ばれた青年は、その端正な顔立ちに微笑みを讃える。
「もちろん、あのおじさんの方。予選じゃボロボロを装ってたけど、強いね」
明るく長めの髪が揺れる。
「ま、誰が勝ち残ったとしても変わらないけどね」
「左様で」
従者と思われる青年が澱みなく頷く。
「誰が勝ち残っても、この僕、ライジングの敵ではない」
「かの《剣帝》でさえも」
「そういうこと」
ーーーーーー
全身を甲冑で覆った騎士のような姿の人物は、対戦表を見遣っている。
バイザーも下げ、完全に顔を覆っている兜。そこからは、やや興奮気味の呼吸の音しか漏れてこない。
「…………」
トントン対ローズウェル。
対戦表を持つ騎士は、その兜の隙間から、恨めしそうな視線をその顔写真に投げかけていた。
ーーーーーー
試合直前。
軽食屋から戻ってくると、俺は控室に置いていたはずのブロードソードが、どこにもないことに気づいた。
「俺の剣が……ない?」
部屋中探したが見当たらない。
控え室の外に出てみる。ない。
「すまんが、俺の剣を見なかったか? 誰かが持っていってしまったとか」
入り口にいた警備兵に訊いてみるも、
「いえ、知りませんが」
首を横に振られた。
「誰も侵入者はいなかったのだな?」
「ええ」
「なるほど、よくわかった」
とにかく紛失したらしい。
この試合では、帯剣していないと失格となる。
どこかで剣を手に入れねばならんか……しかし金はすでに全額自分に賭けてしまった。小銭も軽食屋で使ってしまったし、もはや雀の涙ほどしか残っていない。
戦士の町なだけあって新しい剣はそこらじゅうに売っているが、それを買う金がない。
「お時間です。試合へどうぞ」
係員に促されるが、
「……少し待ってくれ」
俺は帯剣をどうするべきか、その策を考える。
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