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第9章 ネシアのダンジョン編
えっ、あんたも来るの?
しおりを挟むパニアさん達の試合を見た後、闘技場から俺達の泊まっている宿へとぞろぞろと移動をした俺達。
パニアさんとは宿で合流することになっている。
「……それにしてもお前ら、ホントいつも良い宿に泊まっているよな。」
ヒューザは俺たちの部屋を見てため息をついた。
いや、この人数だとこの部屋が一番リーズナブルなんだよ?
とりあえず皆で部屋の中央にある円形のソファーに座り、パニアさんが到着するまでしばらく待つことにした。
「……それにしてもさっきの試合のことだが、クーガーの姿がかなり変わっていたな。初めて会った時はお前とそんなに変わらない体格だったような気がしたんだが……?」
スコットさんが首を傾げながらヒューザに問いかける。……確かにこの数ヶ月であんなに変わるものか?
するとヒューザは苦笑いをしながら「そうだな、奴は変わったよ」と言う。
「あいつ、見た目ムキムキにする為に鍛えるだけじゃなくて、何か飲んでいたようだぞ。おかげで短期間であんなに身体が大きくなったんだそうだ。」
「いや、身体が大きくなったはいいが、以前のような身のこなしができなくなるようじゃ駄目じゃないか?」
クーガーは何をしてあんなになったのかを教えてくれたが……そうだよね、こっちの世界ではプロテインなんてもの無いもんね。
でも何らかの飲み物を飲んでいたっていうけど、なんだろう?
でもまた試合に出るのであれば、ヒューザ相手にはあの身のこなしでは勝てないと思う。
クーガーは一体どうするつもりなんだろうね?
そんな話をしていると、部屋のドアをノックされた。多分パニアさんだろう。
案の定、中には入ってきたのはパニアさんだった。
だが、入ってきてドアを閉めるかと思ったらまだ閉めないのでどうしたのかと見ていると、噂をしていたクーガーがおずおずと部屋の中に入ってきた。
皆して訝しげな顔でクーガーを見ていると、パニアさんが「なぁ、こいつもダンジョンに連れて行ってもらえないだろうか?」と頼み込んできた。
「……そいつ、大丈夫なのか?」
そう言ったのはリッキーだ。
確かに『競技』としての戦闘と『冒険者』としての戦闘は、戦う人の『覚悟』というものが違う。
俺も出場したことのあるあの闘技場での大会はいわゆる『エンターテイメント』というもので、見ている人が恐怖や嫌悪を感じない程度までしか戦わないのだ。
どちらかというと剣技などの『演武』という感じだろう。
そこには『死ぬ覚悟』などというものは存在しない。
だが『冒険者』の戦闘はそうはいかない。
戦う相手は自分を『殺す』つもりでいるのだ。
ならばこちらも同様の考えでいないと、力不足なら死ぬのは、自分だ。
リッキーが言いたいのは、まずそこだろう。
『何者かを殺す覚悟はあるのか?』という意味を、あの『大丈夫か?』にこめているのだ。
それを正確に受け取ったパニアさんはしばらく考えて、「大丈夫だとは思う」と答えた。
「曖昧だなぁ?ダンジョンに一緒に潜るなら、ちゃんと『殺す覚悟』を持ってもらわないとだ。それはなにもクーガーだけじゃない。ヒューザも、そして悠馬もだ。だがまあ……悠馬に関してはスコットとエミリーが何とかするだろうから、別に戦闘なんてしなくても良いけどな。」
厳しい顔でそう言ったリッキーは、最後には悠馬に向かって苦笑いをする。
そうだね、この中で命の危険があるのって、俺が作った魔道具のアクセサリーを持ってない悠馬とクーガーの2人だけだ。
ならばせめて危険な時には結界が発動する魔道具を俺が作って、クーガーにはそれをレンタルさせるか。
……悠馬には怪我も瞬時にしっかりと治る機能を追加した魔道具にするけどね?
俺はひとまずソファーの目の前にある円卓の上にルーシェさんから貰った魔石を取り出す。
それをだいたい同じくらいの量になるよう2つに振り分け、その内の小粒ばかりを寄り集めた方を掌に取手で包み込む。
そして俺の魔力を掌に集中させ、魔石に魔力を流し込む。
すると徐々に魔石が柔らかくなってきた。
更に全部の魔石に魔力を行き渡らせると今度はそれをひと纏めにして持ち、まるで粘土を捏ねるかのように捏ねて1つの塊へと捏ねていく。
この段階でしっかりとだまにならないように少しずつ魔力を流しながら、滑らかな塊になるまでしっかりと捏ねた。
だまのない良質な塊にすると、それをブレスレットの形に成形する。
もちろん最初は大きめの輪にするのも忘れないぞ!
形を成形し終わったら、今度は魔法を入れていく。
この品はクーガーに貸し出す物なので『サイズが自動で切り替わる魔法』と『ピンチになった時に自動で敵からの攻撃を全て弾き返す魔法』をイメージしながら、成形したブレスレットに魔法を付与する。
……これで1つ完成だ!
もう1つの大きめの魔石を寄り集めたものも同様に、魔法を込める直前まで素早く作り上げる。
今度のは悠馬に貸し出す物だから、こめる魔法は『自動で大きさを変える魔法』と『怪我をした時にはすばやく自動で回復してくれる魔法』、『ピンチになった時に自動で敵からの攻撃を跳ね返す魔法』の3つを付与する。
……よし、これで2つ目も完成だ!
俺はホッとした顔で2つを手に持って顔を上げる。
すると周りでみんなが俺の手元を覗き込んでいてびっくりしたよ。
どうやら俺が何も言わずに突然魔道具を作り始めたので、みんなで見学をしていたらしい。
「……お前、めっちゃ手慣れていたな。すげえ熟練の魔道具師のような腕前だよ。……って、そうやって作るのを見たのは初めてだけどな!」
ヒューザはそう言うと、ニカッと俺に笑いかける。
他のメンバーも色々な反応をしていた。
クーガーなんて、目を見開いてぽかんとした口元で俺を凝視していたよ?
他のメンバーも感心したり、真剣な表情で見ていた。
俺はそんな中、それぞれを貸し出す相手に渡す。
もちろん2つは性能が違うので、分からなくならないように目印をつけておいた。
これなら次に貸し出す時もまちがわないもんね!
渡されたクーガーと悠馬は驚いた顔でそれぞれ受け取る。
「これはダンジョンに入る間だけ貸し出すものだよ。クーガーのは結界を勝手に張る能力で、悠馬のはそれの他に自動で傷を回復する機能もついているから。必ず体のどこかに身に着けておいてね?」
俺はそう言うと、2人に目の前で身に着けてもらう。
クーガーは足首、悠馬は、二の腕に装着したようだ。
「クーガー、いいか?お前のはケガの回復まではしてくれないんだから、気をつけろよ?」
「……ああ、分かっている。」
リッキーの言葉に、そう答えるクーガー。
その目は先程までの戸惑っていたものではなく、しっかりとした目つきになっていた。
よし、これならみんなでダンジョンに潜っても大丈夫そうだね!
明日からのダンジョン、楽しみだな!
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