424 / 529
第9章 ネシアのダンジョン編
ゼフィアはどうしてるかな?
しおりを挟む「どうする?ゼフィアを迎えに行くのか?」
リッキーが苦笑いをしながら俺にそう言った。
そうだよねぇ……でも迎えに行くならリリーさん連れて行かないとだな。
「……あいつ、多分大喜びで乗って帰るかもな?」
「そうなの?リリーさんって小さくて可愛いものが好きだったはずだけど……?」
「それは変わってないんだが、実は超大型犬を飼った事があってな。その時に『乗れたら良かったのに!』って言っていたことがよくあったからさ。『今度こそ乗れる!』って喜ぶんじゃないかな。」
俺の心を読んだリッキーが、前世での姉さんの言動からそう言った。
それなら案外ショックは受けなくて済むかも?
……いや、ゼフィアを改めて『譲れ!』と言ってきそうだ。
だがそうなったら、そこはもうゼフィアの意思を尊重することにする。
あの子がリリーさんを主にしても良いと思っているなら、従魔契約を解除し、改めて結んでもらってもいいだろう。
俺がそんな事を考えていると、リーシェさんは俺たちの話を聞いてなんとなく理解したのか、「リリーさんはゼフィアの事をそんなに好きなのかい?」と聞いてきた。
「ええ。俺の従魔になったゼフィアを、肌見放さずしっかりと服のポケットに入れて守っていたくらいですからね。俺の従魔を辞めて私の従魔になって!って言い出しそうです。」
俺が肩をすくめてそう言うと、リーシェさんは珍しくお腹を抱えて笑い出した。
ひとしきり笑うと、涙を拭って微笑む。
「そんなに好きだったんだね。ならフェンリルの長にもう1頭譲ってもらえばどうだろう?あそこは子沢山だから、みんなが乗れるほどの頭数は譲ってもらえるかもしれないよ?」
「いやいや、そんなにはいらないですよ!それにそんなことになれば森の守護にも影響が出るはずですし!」
俺がリーシェさんの言葉に慌ててそう返すと、笑いながら「そうかい?」と言って首を傾げる。
「それにちょうど、もうすぐ出産の時期になるだろうから子供も生まれるだろうしね。その生まれたばかりの子を譲ってもらえば良いんじゃないかな?」
リーシェさんはそんな事を言うが、流石に産まれてすぐの子を譲ってもらう訳にはいかない。
赤ちゃんの時はやはり親元でしっかり愛情を受けて育つのがいいと思うからだ。
俺がリーシェさんにそう言うと、優しい目で「そっか、君は従魔をとても大切にするんだね。」と言った。
「それって当たり前じゃないんですか?」
「いや、そうでもないんだよ?君のように魔獣、神獣どちらも従えることのできる能力を持っている人は、大抵自分の従魔になると手のひら返しのように『物』のように扱うようになる。だからこそ神獣は姿を隠してしまったんだ。君の場合はユーリ様がいるから安心して姿を見せてくれるけれどもね。本来は本当に森の奥や姿が見えないように隠れてしまっているんだよ?それに神獣は無理でも魔獣を扱うことのできる者はなおさらその傾向が強い。特に強い魔獣を見つけると何人がかりであっても絶対に捕まえようとするしね。その手の輩を私が冒険者をしている時に相当数見かけたものだ。」
リーシェさんはそう言って、昔のことを思い出したのか顔を顰めている。
そうなんだ……そういう奴ばかりだと俺が神獣だったとしたら確かにやだなぁ。隠れるのも頷ける。
だがそういえば俺は気づいたことがある。
「でもリーシェさん、魔獣使いって見かけなくないですか?」
そう、俺は今のところ俺以外の魔獣使いを見かけたことがない。街中でも魔獣を連れている人を見かけないのだ。
「いや、実は案外いるんだよ?ただ、街中で従魔を連れてると人によっては奪われたりするから見せないだけでね。特に強い魔獣を連れている者は影に潜ませたりしてるようだ。」
「……影、ですか?」
「ああ。……って、あれ?そういえば君は従魔を腕輪に収納しているけど、影に入れたところを見てないね。もしかしてやり方分からないのかな?」
「ええ、初耳です!」
「おやおや、父さんもうっかりしてたんだね。てっきり父さんから聞いてるのかと思っていたよ。」
リーシェさんはそう言うと、俺にとりあえずユーリを収納から出すように言う。
だがしかし、タイミングよくユーリが収納から出てきたので出す手間が省けた。
「じゃあ簡単に説明するけど……ユーリ様はなんとなくシエルくんの影に入れそうだと感じませんか?」
リーシェさんはまずはユーリに話を振る。
ユーリは頷くと、俺の影に手を突っ込んだ。
するとそのままスルスルと中へと入っていく。
えっ、まじか!?入っちゃったよ!
でも俺から入れたわけじゃないから、どうしたら良いのか分からないんだけど!?
俺は困った顔でリーシェさんを見る。
「ユーリ様は自ら入っていったけど、本来は入れる時は名前を呼んで『影に入れ』と言えばいいし、出す時は名前を呼んで『側に控えろ』と言うんだよ。まぁ君の場合は名前を呼ぶだけでも従魔は出入りできそうな気がするね。」
リーシェさんは俺の影からちょこんと顔を出しているユーリを見て、そんな事を言う。
……ユーリや、なんか見た目おかしなことになってるから早く出てきなさいな。
ほら見ろ、リッキーが顔引きつらせてるぞ?
とりあえずリーシェさんからは「影の中にいるほうがシエルくんの魔力はたっぷり貰えるよ」とのことなので、俺の魔力を与えたい場合は影の中にいてもらうことにした。……ユーリは強制的に腕輪ね。
それから俺たちはリーシェさんとまた学校で会う約束をして、みんなのいるネシアの宿へと一気に転移した。
部屋にはまだみんな帰ってなかったのか、部屋の中が真っ暗でびっくりしたよ。
「なんだ、あいつらまだ帰ってきてなかったのか。」
リッキーは部屋の明かりをつけながらそう言った。
そうだね、俺も皆はもう帰ってきてるのかと思っていた。
だってもうすぐ暗くなる頃だ。
とりあえず俺たち3人は部屋のソファーに座ってみんなの帰りを待ちながら、先ほどのゼフィアの事を話していた。
いつ迎えに行くのか、リリーさんを連れて行くのか、それともみんなで行くのかとかね。
とりあえずはリリーさんに知らせて、すぐに迎えに行きたいとなればすぐに迎えに行くことにした。
そんな話をしている間にみんなが帰ってきて、今日の出来事を話し出す。
どうやら皆はヒューザとか出ていなかったが、闘技場で大会を見てきたらしい。
悠馬が全然見足りなかったようで、観戦することになったのだ。
それを見てから屋台でいろいろ買い食いをしたり、あちこち店を眺めて帰ってきたらこんな時間になったそうな。
「……夕飯は?」
俺はみんなが買い食いをしたあたりから嫌な予感がしていたのだが、やはりみんなお腹いっぱいでいらないと言われてしまった。
しょうがなく3人だけでルームサービスを頼む。
……つもりだったのだが、4属性竜の長たち4人は一緒に食べると言って一緒に頼んでいた。
まぁ少人数より大人数のほうが美味しく感じるよね!
夕飯を食べ終わってから、今度は俺たちが何をしてきたのかの話になり、いろいろ話したのだが……ゼフィアが大きくなっているという話をするとリリーさんはリッキーの予想通りに喜んでいた。
「ねぇ、いつ迎えに行くの?ねぇ、ねぇっ!!」
「ちょっ!落ち着いてよ、姉さん!」
俺の両肩を掴んでガクガクと揺らしながら聞いてくるリリーさんを抑えつつ、少し離れてくれと頼む。
リリーさんは渋々と俺から離れると、改めて聞いてきた。
「それはお前がすぐに迎えに行きたいっていうなら行っても良いんだがな、ただゼフィアも久しぶりに両親と過ごしているだろうから、もう少し後で迎えに行くのも良いんじゃないかと思ったんだ。」
リッキーがリリーさんの頭にぽんと手を乗せると、リリーさんは「む~……」と唸ってしまった。
「まぁどちらにしろ、明日ちょっと様子見に行ってみるか?向こうもこちらの事が気になっているかもしれないしな。」
そう言って、スコットさんは苦笑いをする。
そうだね、明日は久々にゼフィアの顔を見に行こうか。
リリーさんには言わなかったけど……もしかしたら赤ちゃん産まれてたりするかな?
185
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる