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第9章 ネシアのダンジョン編
フェンリル達の赤ちゃん
しおりを挟む無事にゼフィアとリリーさんの従魔契約が完了し、みんなでお祝いムードとなっているところに、フェンリルの長であるブリーズさんから思いがけない言葉がかけられた。
「シエル殿。もし良かったら産まれたばかりの子らを見ていかれますか?」
「えっ、赤ちゃんがいるの!?」
ブリーズさんの言葉に驚いた俺は思わず大きな声で叫んでしまった。
「はい。つい先日、5匹の赤子が産まれたのです。またほんの数日ですのでまだ目も開いておりませんが……どうですか?」
それはすごいや!
俺はまだ生まれたばかりの子犬……じゃなかった、子フェンリルは見たことないんだよね。
ゼフィアでさえも、生後数カ月ってことだったし。
あの時のゼフィアも子犬サイズほどの大きさだったのだが、多分それよりも小さいのだろう。
「それじゃあ僕がみんなをご案内しますね!父上たちはその後からついてきてください!」
ゼフィアがそう言って胸を張ると、ブリーズさんは笑って頷き、俺達の後ろにつく。
俺達はライトさん達に別れを告げると、リリーさんを乗せたゼフィアを先頭にぞろぞろと歩いていく。
さすがにこの数のフェンリルがいる事で、この森の魔物たちは近づきもしないようだ。
それからしばらく森の中を歩くと、崖の中腹にとても大きな横穴が開いているのが見えてきた。
……まさかあそこだ、なんて言わないよね?
さすがにジャンプしても届かないよ?
俺がそんな事を思っていると、先頭を歩いていたゼフィアがリリーさんを乗せておもむろに崖のわずかな出っ張りに足を載せてひょいひょいと登っていく。
そしてその横穴に入っていってしまった。
俺たちが呆気にとられて眺めていると、突如リリーさんの黄色い歓声が聞こえた。
……なるほど、先に見たんだね?
「シエル殿、我々の背中にお乗りになって向かいましょう。」
ブリーズさんがそう言うと、後ろに控えていたゼフィアほどの大きさのフェンリルたちが尻尾を振って「我に乗って!」とアピールを始めた。
「だめ!にぃには僕が運ぶの!他のメンバーはお願いするよ。」
ユーリが相変わらずの独占欲を発揮して俺を運ぶと息巻いていると、俺以外のメンバーは苦笑いをしながらフェンリルたちの背中に乗った。
ユーリが人型に戻り、背中に羽を生やして俺をお姫様抱っこすると一気に横穴まで飛んていく。
他のメンバーはそれぞれフェンリルに乗ってゼフィアと同じように横穴へと向かった。
みんなより一足先に横穴の中へ入った俺は、横穴の中で満面の笑みでまだ手の平の半分サイズの赤ちゃんを撫でているリリーさんを発見した。
それにしても……産まれたてって相当小さいんだね!
母フェンリルはどんどんやってくる俺たちに戸惑いながら、一番最後にやってきたブリーズさんを睨みつける。
その母フェンリルの態度を見て慌てて「すまない、どうしても皆さんに赤ちゃんたちを見せたかったのだ。」と平謝りするブリーズさん。
……ごめん、ブリーズさん。
「まぁユーリ様がいらっしゃるので、貴方のことだから見せたがるとは思っていましたが……こんな大勢だとは思ってなかったですよ?」
母フェンリルは1つため息をつくとそう言った。
そっか、今日はユーリがいたから尚更有頂天で見せたくなったんだね。それはしょうがない。
「それにしてもこんなに小さいんだね!俺、赤ちゃんって初めて見たよ!」
「そうだな。俺達は動物を飼ったことなかったからな。せいぜい動物園や水族館、サファリパークぐらいにしか連れて行ってやらなかったから、ここまで小さな赤ちゃんは見たことなかったな。」
スコットさんはそう言うと、目をキラキラさせて赤ちゃんフェンリルを見ている悠馬の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。……それ、俺にもよくやるよね?
「それにしても可愛いわねぇ~!ねぇシエル、もう1頭譲ってもらえないかしら?」
悠馬と同じく目をキラキラさせているリリーさんはそんな事を俺に打診してきたが、もう1頭フェンリル増やしてどうするつもり?
成長したら移動の足代わりにするつもりなのかい?
俺が眉間にしわを寄せて唸っていると、リッキーがため息をついた。
「あのな、この子達はまだ産まれたばかりだ。そんなすぐに譲ってもらう事は出来ないぞ。それにお前はもうゼフィアがいる。じゃあ譲って貰った子は誰が契約するんだ?シエルか?シエルにはユーリがいるから、その子がゼフィアみたいに可哀想なことになるから駄目だ。」
リッキーが珍しく?ちゃんとした正論を言うと、リリーさんはしょんぼりしてしまった。
そしてリッキーの「ゼフィアみたいに可哀想なことになる」という言葉に、ブリーズさんは反応した。
「それはどういうことですかな?」
リッキーに向かってそう言うと、俺の方を見つめる。
リッキーは苦笑いをすると「さっき下で見たでしょう?」と答えた。
「ユーリがシェルを独占したくてゼフィアを自分の部下みたいに扱って、シエルにあまり甘えるな!と言っていたんですよ。それで彼女が喜んでゼフィアのお世話をしてくれていたんです。」
「なるほど……それはしょうがないでしょうな。竜の子というものは母親を独占したがりますからな。」
ブリーズさんはラッキーの返答を聞いてホッとしたらしく、苦笑いをしながら頷いてそう言った。
……そうなんだ。それは別に良いんだ?
まぁ、その代わりリリーさんがたっぷりと愛情を注いでいたからこそ、ゼフィアは彼女を一生守っていくと決めたのだから、何がどう転ぶのか分からないものだ。
そして今回はこの子達の誰かを譲ってもらうとかいう話はなかったことにし、それは将来的に必要だと感じたらお願いすることで話はまとまった。
だって子供の一生の運命を、産まれたばかりで決めるのは可哀想だからね。
それから俺たちはその場でブリーズさん達とお別れして、転移で一気に宿へと戻ることに。
俺たちがいない間にパニアさんに頼んだらしく、明日は例の報告のためにまた王宮へ向かうことになっている。
それによって、将来的に両国の国王の望んだ通りの未来になっていけばいいね。
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