異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

夏休み明けの学校 1

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あれから数日が過ぎ、現在はネシアからクレイン国のリッキーの屋敷へと帰ってきている。


あの後翌日にはリーシェさんに連絡を取り、ネシアの国王とクレイン国の国王が会うのは学校が始まる当日にすることになった。

もちろん移動する手段は俺の転移魔法なので一瞬で済む。

実はその時、例の王子も連れて行くことになっているのだ。……うぅ、胃が痛い……。


さらに翌日には悠馬が腕輪を通って日本へ帰国し、無事に向こうの家に到着したことを兄さんが教えてくれた。

無事に帰れてホッとしたよ!

悠馬は家に帰ったらこっちでの出来事をたっぷりと皆に話して聞かせたらしく、「楽しく聞いたぞ」ということも言っていた。

そして悠馬が帰ったことで4属性竜の長達もユーリにお別れの挨拶をし、名残惜しげではあったが、自分達の山へと戻って行った。


それからすぐに俺達も宿をチェックアウトしてクレイン国へと戻ってきた。

戻る時は一瞬だから、「旅の疲れなんてものはなくてとても楽だ」と皆から言われたが、その分俺が疲れていることは考慮に入れられていないようだ。


そして現在。

先ほども言ったが、クレイン国のリッキーの屋敷に帰ってきている。

明日は夏休み明けの学校初日なので、朝早くに俺はネシアの王宮へと転移し、国王と王子の2人を連れてクレイン国の国王の元へと送り届けなくてはならない。

その時の為にとネシアの国王は俺の転移部屋として自分の執務室を指定した。

俺は転移失敗をしないためにも、ネシアにいる時には何度もその場所を目がけて転移を繰り返し、今ではしっかりと行けるようになっている。


「明日はネシアの国王と王子をこの国の王宮に送り届けなきゃならないのかぁ……。」

俺が思わず自分の部屋のテーブルに突っ伏してそう呟くと、ユーリが「にぃに、大丈夫?」と背中を撫でてきた。……良い子だねぇ、ユーリは……。

俺が半分魂が抜けかけていると、セバスが冷え切った紅茶を新しいものに取り替えてくれた。

「シエル様、もし送り届けるのがお嫌なら、グリーにでも頼めば良いのです。あれはあやつの身内ですので、それで良いと思いますよ?」

セバスはしれっとそんな事を言うが、さすがにそれではネシアの国王はグリーさんに対して恐縮してしまうだろう。……王子はどうかわからないけどね。

それに……自分たちの祖先と同じドラゴンの背に乗るのはどう思うんだろうな?

「いや、それはなんかグリーさんが嫌がるんじゃないかな。国王はまぁ良いとしても、王子の方を嫌がるかも。」

「そうですねぇ……確かに王子を背に乗せるのは嫌がりそうですな。まぁその場合は手に握って行けばよろしいのですよ。本物のドラゴンと自分達の違いをしっかりと分からせるためには、恐怖と畏怖を植え付けるのが一番ですからね。」

「……。」

……俺の何気ない一言に対してのセバスの返答が酷いと思う。

だか確かにあの王子には、本物のドラゴンに対しての敬う気持ちは欠片もないような気がする……。

「でも俺が連れて行くって約束したんだから、約束は守らないと。……でも、一緒にはついてきてくれないかな?」

俺のその弱気な言葉に、セバスは笑って「聞いておきましょう」と答えた。……どうやって聞くの?

とりあえず今日は明日の用意で忙しかったりする。

なにせ明日は朝からネシアに行って2人と王宮に転移し、クレイン国の国王と会合が終わったらネシアの国王だけ連れてネシアの王宮に転移してとんぼ返りで学校に向かうのだ。

どうやって学校に向かうのかはまだ考え中だったりするが……絶対にネシアの王子とは一緒に行きたくないぞ!

俺はその日、悶々としながら過ごし、翌日を迎えた。



「シエルくん、目ぇ覚めたかいな?」

俺はその声に飛び起きるように目を覚ました。

だって本来いるはずのない人の声だったからだ。

「グリーさん!どうして来たの!?」

俺の驚いた声に、首を傾げたグリーさん。

「何でって……シエルさんから呼ばれたんやけど?私はそう聞いてますがな、セバスから。」

グリーさんのその言葉から、昨日俺がなんとなく言った言葉を思い出した。

そっか、あれからセバスは何らかの方法で伝えたんだね!


その後さっさと朝食を済ませると、ユーリに腕輪に入ってもらい、制服を着るとグリーさんと一緒にネシアの王宮に転移した。



転移先はネシアの国王の執務室。

そこに転移すると、ソファーに国王といつぞや見たことのある男の子が座っていた。

その子も制服を着ていたが、表情はとても不機嫌そのものだった。

「シエル殿、何故にグリー殿が一緒にいるのだろうか?」

訝しそうな顔で、ネシアの国王はそう言う。

俺は「1人だとなんとなく不安だったので」と答え、本当のことは言わなかった。

「まぁ、そんなんどうでもええやろ。さっさと行きまっせ?」

グリーさんはそう言うとドアの外へと向かった。

えっ、どこに行くの!?

俺は慌ててグリーさんにそう聞くと、「私が運ぶんならここじゃあ狭すぎますがな」と返答が。

えっ、もしや……?

俺がまさかな……と思っていると、ネシアの国王は少し嬉しそうに「もしかして?」とグリーさんに聞いた。

聞かれたグリーさんは顔だけで俺達を振り向く。

「そうや。私の背中に乗って行くんや。」

「本当ですか!それはとても楽しみです!」

グリーさんの返答に、ネシアの国王はとても嬉しそうな顔になる。

そんな2人を見比べている王子は、これから何が起こるのか全く分からないのかもしれない。

これはもしかして、国王は彼に何も話してないのでは?


とりあえず俺達はグリーさんについて歩き、広い敷地の場所へと到着した。

「じゃあ3人とも少し離れてな~。近くにいると危険やで?」

グリーさんにそう言われて俺達は距離を取る。

ある程度離れると、グリーさんは一瞬で元の姿に戻った。

それを見た国王は頬を紅潮させて目を輝かせ、まるで恋する乙女のような顔をしている。

対する王子は驚きの表情で固まり、声すら出ないようだ。

「ぷはぁ~。久しぶりの竜化やから、なんやスッキリしまんなぁ~。」

竜化したグリーさんはそう言って羽を大きく開いて伸びをすると、軽く伏せるようにして「はよ乗ってや~」と声をかけてきた。

そこでまずは国王が自らの羽を出して飛んでその背中へ乗る。

なるほど、確かに国王は体の一部を竜の姿に変えられるんだね!

次に俺は転移で移動した。

「2人とも乗ったんやね?ほな行こか~。」

グリーさんはそう言うと、まだ驚いて固まっていた王子を鋭い爪のある右手で掴み、羽ばたく。

掴まれた王子は驚いて暴れまくっているが、グリーさんには全く抵抗にはならないらしく、そのままどんどん上空へと上がっていった。

えっ!?本気でそのまま行くの!?

昨日、セバスが言っていたことを実行するわけ!?

俺が内心そう思って慌てていると、国王は苦笑いをしただけでその行動に何も言わない。


俺は今までいた場所を見下ろすと、そこにはネシアの兵士と思われる人達がたくさん集まっていて、大騒ぎになっていた。

……そりゃあ、そうなるよね~。

そんな彼らに向かって国王は「大丈夫だ。安心せよ!」と叫ぶ。

俺は「そんなんじゃ安心しないのでは?」と思ったが、下で敬礼をしているのを見ると案外納得したのかもしれない。


そのままネシアから一気にクレインの王都まで飛んで行くと、そのままの姿で王宮の広い敷地に降り立った。

右手に持っていた王子は途中で気を失ったらしく、ぐったりとしている。

俺たちを降ろしたグリーさんは、右手に持っている王子を目の前に持ってくると「なんや、全く度胸が無いなぁ~?」と言って肩を竦める。

……いや、怖いと思うよ?

ものすごいスピードだったしね?

でもどうするのさ?

彼、気絶してるでしょ?

俺が困惑した顔でグリーさんを見上げると、グリーさんは開いている左手の指1本で王子をツンツンと突いて起こそうとしだした。

「グリーさん!それ危ないだろうから、その子降ろしてよ!」

俺は慌ててグリーさんにそう言うと、グリーさんは素直に地面へと王子を下ろした。

俺はすぐに彼に近寄るとどこも怪我とかしてないかを確認し、すぐに目を覚ますように回復魔法をかける。

するとすぐに王子は目を覚まし、目をパチクリとさせた。

どうやら今の状況が飲み込めてないようだ。

「アンドリューよ。我の叔父上の飛行は楽しめたか?」

国王はそう言って息子を見下ろす。

ボーっとしていた王子はその言葉にハッ!とし、辺りを見渡す。

そして恐る恐る後ろを振り向くと、目を見開いて悲鳴を上げた。

「なんや、自分も竜の血を引いてるんやろ?驚く必要あれへんがな。」

グリーさんはそう言うと、1つため息をついて人化する。

それを見た王子はまだ驚いたようで、口を開いたまま固まった。

「まぁ……アンドリューも固まっていないで、クレインの国王へと挨拶に向かうぞ。シエル殿、案内を頼む。」

グリーさんと同じくため息をついたネシアの国王は、俺に向かってそう頼んできた。

俺は頷くと3人に「俺につかまってください」と告げて、俺自身は王子の手首を軽く握った。


俺は2人がつかまったのを確認すると、すぐに国王の待つ謁見の間へと転移した。
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