異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

夏休み明けの学校 4

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リーシェさんの転移魔法で着いた先は教務員室前だった。

「ちょっと待ってなさい。今担任を呼んでくるからね?君達は同じクラスになるから、担任と一緒にクラスへ行きなさい。」

リーシェさんはそう言うと教務員室へと入り、担任のマール先生に声をかけてくれた。

まだ始業の時間まで時間あるからそのまま行っても良いんだけど、少なくてもこの転校生は先生と一緒じゃないとまずいだろう。

……俺だけでも先に行っちゃ駄目かな?


俺がそう考えて一歩踏み出そうとした時、隣に立っていたアンドリューがジロリと俺を見た。

そして胸の前で腕を組むと少し胸を反らし、居丈高に見下ろしてくる。

「……お前、この学校での俺の下僕に任命してやるからしっかりと働けよ?」

「……。」

アンドリューのその言葉に、俺は以前のあの2人を思い出す。……言う事、ほぼ同じなんだけど?

「……悪いけど、この学校はそういうのはないからね。学校内では身分の上下関係はないんだ。だから俺はそんなものになる気はない。」

俺のその言葉に、またもやイラッとしたアンドリューは俺の服の襟を掴もうとしてきた……が、俺はスルリと避ける。

避けられたアンドリューは少し体勢を崩し、転びかけた。

「貴様っ!なぜ避けるっ!」

「なぜ避けるって……避けない理由、ある?」

「あるに決まってるだろっ!俺は王族だぞっ!?一番偉いんだっ!平民のお前なんか、こうやって話すこともできやしない存在なんだぞっ!そんな奴が俺のする事を妨げるなんて、死罪だ、死罪っ!」

怒り出したアンドリューが大声でそう喚く。

周りにいた人達は何事かと俺達を遠目で見ている。

……ごめん、うるさいよね?

俺はこっそりとアンドリューに結界を張る。

これはアンドリューの声を閉じ込め、俺に手出しできないように内側から出れないようにした結界だ。

アンドリューはそんなことには気付かずに何かをまくし立てている。

ふぅ……静かになった。

先生まだかな?やっぱり先に行こうかな?

俺がそんな事を考えていると、どうやらアンドリューは自分に何らかの魔法がかけられていることに気づいたようだ。

結界の中で大声で何かをわめきながら結界を叩いているのが目に入る。


ちょうどそんな時に担任のマール先生が教務員室から出てきて、結界を叩きまくっているアンドリューに気付いた。

「シエルくん、彼……転校生の子かな?」

マール先生は戸惑った顔で俺の方を見る。

どうやらアンドリューが先生を見つけて、俺にしたのと同じような仕草をしたのだ。

……声は聞こえないけど。

「はい。彼はネシアの王子で、アンドリューっていいます。歳は俺と同じだと聞いてます。」

「なるほど……ところで彼、いつまでこのままなのかな?」

マール先生はアンドリューを見てそう聞いてきた。

俺は「できればずっとこのままでいた方が平和ですよ~」と伝えておいた。

「な、なるほど……君がそう言うってことは、結構な性格なんだね?でもこのままではクラスに行けないから、何とかしてもらえるかい?」

マール先生は苦笑いをしてアンドリューを見るとそう言った。

確かにこのままでは移動できないよね。

そこで俺は結界を一旦解除し、彼の周囲に声を漏らさないだけの結界を張り直す。

これなら動けるけどうるさくなくて良いよね!

アンドリューは無くなった結界に気づかないまま手を振り下ろしてきたが何も無かったことで予定が外れ、勢いのまま床に転んでしまった。

すると凄い目つきで俺を睨んでくる。

……それ、俺じゃなくて、結界があると思って手を振り下ろしてきた君が悪いんじゃないかな?


俺は内心そう思いながらも口には出さず、歩けるようになったアンドリューを連れて教室へ。

彼にはこちらの声が聞こえるようにしてあるので、マール先生のことも紹介しておいた。


教室に着くと俺はアンドリューの結界を全て解除する。

これから彼は自己紹介とかをしなきゃならないだろうから、声が周りに聞こえないのはまずいからね。

「……貴様、後で覚えてろよ?」

俺が結界を解除したことをアンドリューに伝えると、彼は教室に入る前に俺にそう捨て台詞を吐く。

……それ、悪役が言う言葉じゃない?


教室に入ると、皆が驚いた顔で俺を見る。

驚いてないのは、俺が学校にまだ通学することを知っているセインたち3人とミストさん達2人だ。

そうだよね、もう卒業?したと思っている人がほとんどだろうからね。

あっ、だから俺もこっち側なのか。

「みんな、今日から新学期だぞ!夏休みの間は楽しく過ごせたかな?まずは今日から新しく皆の仲間になった生徒を紹介する。彼は森を挟んだ隣国のネシアからの留学生だ。……自己紹介をしてもらえるかな?」

そう言ったマール先生はアンドリューの方を見て、自己紹介をするよう促す。

アンドリューはそれを受け、1つ咳払いをすると挨拶を始めた。

「我はネシアの国王アジュゴールの一人息子のアンドリューだ。不本意だが、今日からこの学校に通うことになった。あらかじめ言っておくが、俺は身分の低い者とは付き合いたくない。自分でそうかもしれないと思う奴は迷惑だから最初から話しかけるな。」

アンドリューがふんぞり返った姿勢でそう言うと、ざわざわしていた教室の中は一瞬で静まり返る。

……そうだよね、あんまりな言いようだよねぇ。

「なんだよ、まるでこの学校に入ったばかりの俺たちみたいじゃねぇか……。」

アンドリューの自己紹介を聞いて盛大にため息をついたセイン。

それに同意をして頷くローラの姿も見えた。

2人の後ろには苦笑いをしているクロードの姿もある。

アンドリューは3人の方を見ると訝しげな顔をする。

すると先生が「彼らはこの国の王族なんですよ」と教えてやった。

「……なるほど、我とまともに付き合えるのはあやつらだけなのだな?良かろう、我の友人として付き合ってやろうではないか。」

アンドリューが偉そうな口調でそう言うと、明らかに嫌そうな顔をした2人。

……クロードは全くの無表情になってしまった。

「じゃあ席は決まってないから、好きな場所に座ってもらえるかな?そうそう、みんなに報告があるんだけど、シエルくんとスコットたち4人はもう少しこの学校にいることになった。いる間にしっかりと彼らの能力とかを学ぶんだぞ?」

マール先生はそう言って俺達2人に席に着くよう促す。


俺は3人の近くの席に行こうとすると、そんな俺にぶつかって退かすと、先に俺が座ろうと思っていた席に座った。

それを見て3人はムッとした顔になり、「そこはシエルの席だぞ!」とセインが言う。

「先ほど先生は『席は決まっていない』と言ったではないか。我がここの席を使っても問題はあるまい?」

「お前なぁ……。そんなんじゃ友達なんてできないぞ?」

「……我は次期国王である。そんなものは必要ないのだ。」

ツーンとした表情で答えたアンドリューにセインがそう言うと、アンドリューはそんな言葉を返す。

君……『確実に国王になれる』と思っているからそんな態度なの?

でも一国の王になれば他の国とも付き合っていかなければならない。

『友人はいらない』なんて言っていたら、君がもし国王になった時には孤立してしまうよ?


俺は1つため息をつくと、セインの前の席が2つ空いているので、そのうちの1つに座る。

するとクロードはアンドリューの隣の席から俺の隣へと移動した。

それを見てアンドリューはムッとした顔になったが、これから授業が始まると分かっているので何も言わなかった。

……そこら辺の分別はあるんだね?



「それじゃあ授業を始めようか。」

マール先生はそう言うと今後の自分の授業の予定の話や、配らなければならないプリントなどを配りだす。

はぁ~……何だかこれからの学園生活が思いやられるよ……。
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