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第10章 国立学校 (後期)
アンドリューは大丈夫か?
しおりを挟む夏休み後の登校初日は、どの授業も次回以降の授業の進め方やどんな事をこの学期でやるのかの説明で終わった。
それを聞くと、やはり後期にもダンジョンへ行くことは決定しているようで、マール先生は皆に心の準備だけはしておいてくれと言っていた。
そのダンジョンの場所は前回と同じなのかという質問には「まだ何も決まっていない」と答えていて、「だけどシエルくんがいるから、遠くのダンジョンでも行けるんだよ」とだけ付け加えていた。
……それって、『ブレイズ』に行くかもしれないって事だよね?
他にもマール先生は自分の授業とリーシェさんの授業に共通の特別講師が付くことも話していた。
それってスコットさん達以外に、って事なのかな?
そうなってくると何だかグリーさんの言葉が怪しいんだけど……でもその場合、グリーさんだけですむのかがなんともいえない。
みんな来ちゃったらどうしよう!?
そんな事を悶々と考えながら学校から帰ってきた。
……みんなに聞いたら答えてくれるかな?
とりあえず俺は部屋に戻るとユーリとセバスを出してやる。
セバスは今日のところは腕輪に入っていてもらったけど、明日からはとりあえず自由行動をとってもらう事になっている。
もう第一王妃のそばで見ている必要もないからね。
そうそう、その第一王妃とその子供なんだけど、現在はミラー騎士団長の実家で一緒に暮らしているそうだ。
結局ミラー騎士団長の弟さんはそのまま家督を継いだので、ミラー騎士団長は貴族ではなくなった……と思っていたら、第一王妃の実家では家督を継ぐ後継者がおらず、2人の婚姻と同時にミラー騎士団長が第一王妃の実家の家督を継ぐことになったのだ。
そもそもが一人娘を国王に差し出すあたり、第一王妃の父親は目先の利益しか考えてなかったのだろう。
あるいは自分の娘が男の子を2人産んだら、そのどちらかを国王に、もう1人を自分の家の家督を継がせる気だったのかもしれない。
とりあえず夕飯の時にグリーさんが特別講師になったのかを聞いてみることにして、精神的に疲れた俺はちょっと仮眠することにした。
「ユーリ、ちょっと仮眠するから夕飯に呼ばれたら起こしてくれる?」
「うん、わかった!おやすみ、にぃに!」
俺はユーリに頼むと、少しベッドに横になる。
するとすごく疲れていたのか、すぐに夢の国に旅立ってしまった。
『リッキー視点』
俺はメイドから夕飯の支度ができたと声をかけられたので、シエルの部屋へと向かっている。
その間、今日知らされたことを頭の中で思い出しているが、どうにも不安しかない。
実は今朝俺達4人が教務員室へと入ると、教頭先生のクロニカ先生が「こっちに来てくれないか」と言って個室へと入っていった。
俺達4人も彼に続いてその部屋に入ると、先生は中にあったソファーに座っていて、目の前のソファーに座れと言ってくる。
その時点で先生の考えていることはなんとなく読めたが、なんだか先生もよく分かってないような感じだったから、とにかく話を聞くことにした。
「……実は今朝早くにリーシェさんから言われたことがあってね。私自身も一体どういうことなのか全く分からないんだが……君たちなら分かるだろうか?」
クロニカ先生はなんとも不安そうな顔で俺たちを見ている。
一体どんな事を言われたのか聞いてみると、自分の講義の時に特別講師を呼んでもいいか?という話だった。
誰が来るのかは教えてもらえなかったらしい。
……そりゃあ不安になるわな。
どんな奴かも分からないのOKなんて言えないよな、普通。
でもそれが『リーシェさん個人』からだけなら駄目だと言えたのかもしれないが、『国王も同意している』と言われれば『了解した』としか言えないだろう。
そんな話をされた後、教務員室で会ったマール先生からも似たようなことを言われて首を傾げてしまった。
どうやら彼もリーシェさんから頼まれて、自分の講義に共通の特別講師を呼ぶことになったらしい。
俺達は一体誰が『特別講師』としてくるのかを移動途中で話していた時、突如として突風が廊下に吹き、思わず目を瞑る。
すると目を閉じて開いた一瞬で、目の前にグリーが立っていた。
「おはようさん、4人とも!これから授業でっか?」
グリーは良い笑顔でそう聞いてくる。
ん?こいつ……朝早くからシエルと一緒にいたな?
あいつ、今日は例の件で朝からバタバタしていたはずだから、こいつはネシアの王族も関わっているからって一緒にいたみたいだ。
「そういえば4人とも聞きました~?」
「……何をだ?」
グリーが思い出したように聞いてきたので、スコットが聞き返した。
「何をって、特別講師のことですがな。」
「それは先ほど聞いたばかりだが……それがどうした?」
スコットが訝しそうにそう聞くと、グリーはもったいつけるような感じに「分からへん?」と首を傾げる。
……嫌な予感しかしない。
「実は私、この学校の『特別講師』にさせてくれと直訴しましたんや。」
……あぁ~、やっぱり?
そんな気がしたんだ。
だってこいつの頭の中、あのバカ王子のに対しての怒りしかない。
いったい何やらかしたんだ、あの王子?
「とりあえず私、風魔法担当で講師をすることになってます~。」
「……風魔法担当?」
その言い方、なんか嫌な感じがする。
俺は思わずといった感じにそう呟いてしまった。
するとグリーは「そうやねん」と肯定する。
「私は風魔法しかできまへん。他の魔法は他の属性がやればよろし。」
……あぁ~、そんな気がした。
結局4属性全部をそれぞれの長が教えるのか?
グリーの話だと、まだ他の3人には打診はしてないそうだが……そのまま打診なんてしなければいい。
人間相手にそんな強い魔法を教えようとしても、俺たちと違って素地がないから厳しいんじゃないか?
更に突っ込んで聞いてみると、例のバカ王子のお守りも兼ねているから、そこまで授業にはがっつり参加はしないそうだ。
学校にいる『理由』が欲しかったんだとさ。
まぁ『特別講師』なんて肩書があれば、廊下に突如現れたとしてもあまり問題はないかもしれない。
その後グリーとはすぐに別れて授業に向かったが……あいつ、大丈夫なんかね?
そんな事を考えながらシエルの部屋に着いた。
ドアをノックすると、中からユーリが出てくる。
シエルはどうしたのか聞くと、寝ているんだそうだ。
そりゃあ精神的に疲れるよな。
俺はユーリにそのまま寝かせておいてやれと伝え、2人で食事をしに向かう。
部屋には食事を取らなくてもいいセバスが残り、もし起きたら食堂に来るよう伝えてもらうことになった。
はぁ……。
明日からのあいつ、大丈夫かねぇ……?
俺はあいつの神経がすり減らないことを祈っておいた。
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