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第10章 国立学校 (後期)
トーナメント決定!
しおりを挟む学校が始まってから2週間が経った。
アンドリューの事だが、あいつが初日の挨拶で「王族以外は話しかけるな」的な事を言ってしまったせいか、クラスのほとんどの生徒が彼を遠巻きにして近寄りもしなくなってしまった。
自業自得だからしょうがないんだけど、見ているこっちとしてはため息をつきたくなるよね。
そして王族3人からは「嫌な奴」認定されてしまっているから、向こうから話しかけられても事務的な話には答えるが、積極的には仲良くなろうとはしていない。
つまり、アンドリューは完璧にクラスから浮いた存在になってしまったのだ。
そしてこの数日で鬱憤の溜まったアンドリューが俺にちょっかいをかけようとすると王族3人が守ってくれようとしてくれるので、尚更彼はストレスが溜まっているんじゃないかと思う。
そんな鬱憤を晴らせる唯一の場が実技の授業のようで、持ち前の血筋からくる能力の高さで好成績を出している。
だが、俺も好成績なのを見ているからよく「手合わせをさせろ!」とマール先生やリーシェ先生に突っかかっているのを見かける。
たが2人の先生曰く「2人がやったとしても結果は見えている」と言っていまだに実現できてはいない。
2人とも間違いなく俺が勝つと思っているから、アンドリューが負けてとんでもないことをしでかすのではないかと危惧しているのが分かる。
でもリーシェさんの口ぶりから考えると、近々トーナメント式の模擬試合がありそうだから、その時には当たるかもしれないね。
そしてもう1週間するとテスト期間がやってくるので、先生方もテストに向けての授業に切り替えて教えてくれている。
マール先生とリーシェ先生の場合、実技の方ではまだ特別講師は姿を現していないが、講義の方ではもう授業に参加している。
なんと謎の特別講師っていうのは4属性竜の長達だったのだ。
リッキーからはグリーさんのことしか聞いてなかったが、その内レッカさんがやって来てからはアクアさん、アースさんとどんどんやってくるようになった。
それを見て盛大に溜息をつくリッキー。
どうやらこうなることはなんとなく分かっていたようだ。
だがこの4人のそれぞれの属性の魔法の教え方はリーシェさんから頼まれているのかとても丁寧で分かりやすく、初歩的な所からしっかりと教えてくれている。
しかも皆が魔力が少ない事を知ると、魔力の底上げをするための特訓もしてくれたりしていた。
4人がいなくてもできるようなメニューもあるので、みんなも自分の能力がどんどん上がるのを楽しく感じながらやっているみたい。
そんなこんなでいろいろあったある日、リーシェさんが講義の授業で「皆さんにお知らせがあります」と話しだした。
「お話というのは、後期授業でのダンジョン遠征のことです。いつもならばこの王都の近くの『ロック』へと向かうのですが、今回はネシアの王子であるアンドリューくんや転移魔法が使えるシエルくんがいるので少し遠出をすることになりました。場所はこの王都からかなり南下したネシアとの国境にあたる森の中、そこにある『ブレイズ』というダンジョンに決定しました。そこはこの後期が始まる頃にクレインとネシアが両国で管理をしていくと決定したばかりのダンジョンで、この世界に現存するダンジョンの中で一番古いダンジョンになります。もし気になるようでしたら図書室や冒険者ギルドなどにもダンジョンに関する資料が置かれていますので、前もって勉強しておくといいでしょう。」
リーシェさんは授業の冒頭からそんな事を言った。
そっか、『ブレイズ』に決定したんだね。
じゃあ俺も何回も往復することを考えて……いや、収納があるからそれでも……?
後でリーシェさんに相談してみるか。
そんな事に意識を回している間に、いつの間にか講義から実技の授業の話へと変わったらしく、クロードに「お前の番だぞ?」と声をかけられた。
なんの事かと黒板を見ると、次の実技の授業でのトーナメント表が貼られていて、そこに名前が書かれている。
どうやら次にくじを引くのは俺らしい。
前に行ってくじを引くと、俺の番号は13だった。
だから俺はAチームの最後の方の組み合わせだ。
このクラスは人数が30人ほどだから、授業の時間を考えて2チームに分かれたらしい。
そして最後にその優勝者同士で決定戦をする……という感じなんだって!
アンドリューはもうすでに引いてあり、うまい具合にあいつはBチームだったから対戦するのは決定戦だ。
どうやらこのトーナメント形式の試合はアンドリューも楽しみらしく、とてもワクワクした顔をしている。
やはりそこは獣人の血が騒ぐのかな?
とりあえず全ての組み合わせが決まり、授業の終わり頃に次回の授業で行うことをリーシェさんから伝えられた。
授業が終わってリーシェさんがいなくなると、突然俺の目の前にアンドリューがやってきた。
それで俺を見下ろし、ニヤニヤ笑っている。
「次の授業が楽しみだなぁ?」
「……そうなの?」
「あぁ!なぜなら『俺がお前より強い』という事を皆に見せつけられるからだ!」
人を蔑むような顔でアンドリューが俺を見ながらそう言う。
そんなアンドリューを見て、クラスメイトは眉を顰めてこちらの様子を伺っている。
アンドリューは俺に向かって指を突きつけ、「それまで楽しみに待っていることだ!フハハハハッ!」と言って自分の席へと戻って行った。
俺はそんなアンドリューをチラリと横目で見ると、軽くため息をつく。
馬鹿だなぁ、あいつ。
もし俺があいつに勝ったらどうするつもりだ?
俺が負けると信じて疑わない顔だったよね。
かといって、俺はわざと負けてやるつもりはない。
どうしたものか……?と思っていたら、隣にいたクロードが「あんな奴に負けてやることはない」と言った。
……良いの?
まぁ、勝たせたら勝たせたで更に偉そうな態度を助長させるだけか?
俺がそう思っていると、クロードは首を振る。
あれ……?口に出してた?
「そうだぞ、シエル。お前はこの国の聖剣……元か?とにかくそれの所有者なんだから、わざと負けるのはやめろよ?『なんだ、勇者っていってもこんなものか?』なんて言われるのはなんかイラッとするからさ!」
セインまで身を乗り出して、こっそりと俺に耳打ちをする。
そうか……それなら本気…まてはいかなくても、チームメンバーに対するほどには実力を出しても大丈夫かな?
そう考えると、近々あるトーナメント戦が少し楽しみになってきたよ!
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