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第10章 国立学校 (後期)
魔術トーナメント戦 1
しおりを挟むあれから数日が過ぎ、今日はリーシェさんの授業でやる魔術トーナメント戦当日だ。
現在、クラスメイト達と教室から移動して修練場に来ている。
とりあえず修練場の壁に少し大きくしたトーナメント表が貼ってあり、そこに結果を記入していくようだ。
そして床には何らかの方法で白線が引いてあり、その中で戦うらしい。
今回は魔法を使う戦いなので、周りに被害を出さないためにも特に念を入れて結界を張らなければならないらしく、俺はリーシェさんから結界を張るよう頼まれた。
ついでに2つ同時に試合ができるように、中央の白線の上も魔法は通さないが人は通れる結界を壁のように張っておいた。
全ての準備が整うと、みんなを整列させてリーシェさんが話し始める。
「え~、準備が整いましたので、これからトーナメント戦を行いたいと思います。みんなから見て左の方がAチーム、右のほうがBチームの試合を行いますので、それぞれのチームに行ってください。負けてしまった生徒はこの場所に来て残りの試合を観戦してくださいね。」
リーシェさんがそう言うと、みんなそれぞれ決まったチームの方へと歩いていく。
俺はAチームなので左の方へと向かう。
こっちのチームには、知り合いはせいぜいミストさんとローラくらいだ。
あとはほとんど話したことがない子ばかりで、そういう意味ではやりやすいかな?
「……手加減しろよ?」
俺に近づくとチラッと俺を見て、ミストさんがボソリと呟く。……わかってるって。
彼は、俺が本当は魔法がかなり得意だということを実体験で知っている。
だからこそ、俺と当たったやつには『手加減しろよ?』なのだろう。
ちなみに俺と1回戦で当たるのはローラだったりする。
ローラももちろん真面目に授業を受けて頑張ってはいるが、俺とは経験の差があるので、普通ならまず勝つのは無理だろう。
それは他のクラスメイトにもいえることだけどね。
だから多分、試合が始まる前に何らかのハンデが課せられるんじゃないかなとは思っている。
俺たちAチームが試合場で整列して待っていると、リーシェさんがグリーさんを伴ってやってきた。
「さて、まずは君たちの方から始めようと思う。そしてこの分だとまず間違いなくシエルくんが優勝するのは目に見えているので、彼には少し能力制限をかけさせてもらうことにしたよ。良いだろ、シエルくん?」
リーシェさんは俺の方を見てそう聞いてきた。
俺はもちろん予想通りだったので、肯定の意味で頷く。
するとそれを見てグリーさんが俺の方へとやって来て、「腕を出して」と言った。
俺は素直に腕を出すと、グリーさんは何らかの魔道具を手首にはめた。……何だ?
「これはね、シエルくん。君の魔力を一時的に百分の一ほどに抑える機能があるんだ。それでもまあ君の場合はかなりの魔力量があるからいろいろ魔法は使えると思う。だから君には更にもう1つ制限をかけさせてもらいたい。まぁ、そんなにおかしなものじゃないよ。『結界』と『回復』の魔法を試合中には使わないでもらいたいだけなんだ。ただ、これも命に関わるほどの万が一の場合は使ってもいいことにはする。これくらいやっても何てことはないだろう?」
リーシェさんは俺にそう言ってウインクをした。
……まぁ皆とやる時はそれくらいのハンデはあってもいいけど、少なくてもアンドリューとやる時はハンデなしでも良いと思うんだけど?
俺が少し不服そうな顔をすると、「ごめんね?」と謝られた。
「さて、それじゃあ試合頑張ろうか。第1試合からどんどん始めて行っていいよ。審判はグリー殿に頼めるかな?」
「はいな~。私がちゃ~んと見てますよって、あちらのBチームを宜しゅうな~。」
「ああ、分かったよ。」
リーシェさんとグリーさんはそんな会話をするとそれぞれの持ち場へと向かう。
「ほんなら試合、始めましょか~。」
グリーさんはそう言うと、第1試合の2人を試合場へと連れて行く。
それからは順調に試合が進んでいき、俺の番になった。
俺の対戦相手はローラで、彼女は俺との対戦で相当緊張しているようだ。
2人でグリーさんの前で構えると顔がよく見てるので、なおさら顔がこわばっているように見える。
「……大丈夫?」
俺が心配そうにそう聞くと、ハッとした顔でローラは俺を見た。
「……ええ、大丈夫よ。かなり緊張しているだけ。」
「大丈夫だよ。魔力量は少なくなっているし、そんな危険な魔法は使わないから。でも不安なら怪我をしないようにローラの身体に結界張ろうか?ねえ、グリーさん。それも駄目なの?」
ローラの返答に俺はそう答えると、グリーさんにチラッと聞いてみた。
するとグリーさんは少し考えて「ええんちゃう?相手の安全のためならええと思うで?」と答えた。
なので俺はローラの身体に魔法の影響が及ばない結界を張る。これなら大丈夫だと思う!
俺が結界を張ったことを伝えると、ローラは目に見えてホッとした顔をした。
それから改めて構えると、グリーさんが試合開始の合図を出した。
まずはあちらからの攻撃を待つ。
ローラはしばらくブツブツと呪文を唱えると、俺に向かって少し大きめのファイアーボールを飛ばしてきた。
俺はそれに対して相殺できるほどのウォーターボールを作り出し、ローラの攻撃にぶつけてみる。
すると何故かローラの攻撃を吹き飛ばした後、ローラの方へと飛んでいってしまった。
……あれ?そんな威力上げてないんだけど!?
俺は慌ててしまったが、ウォーターボールは勢いを失ってローラにパシャリと水がかかっただけで済んだ。
その水も結界のおかげで服も濡れずに済んだようで、俺はホッとした。
だがローラは自分の放った魔法が全く俺に通用しなかったことに呆然としてしまい、次の攻撃を放ってこない。
……グリーさん、この場合どうしたら良いの?
俺は困惑した顔でグリーさんを見ると、彼はケラケラと笑って俺に手を振る。……いや、違うから。
「ねぇ、ローラ。次の攻撃を打ってこないの?」
俺は戸惑った顔でローラにそう聞くと、彼女はしょんぼりした顔で「負けました……。」と答える。
「ハハハッ!シエル殿、彼女の『負け』宣言で、この試合君の勝ちや。おめでとうさん!」
グリーさんはそう言うと手をパンパンと叩き、「ほな、次の試合行こか~」と言う。
……えっ?
俺の第1試合、これで終わりなの!?
これじゃあ物足りないんだけど!?
どうしよう……このままではアンドリューと戦うまでこんな試合が続くのだろうか……?
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