異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

魔術トーナメント戦 2

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俺が呆然としている間にもどんどん試合が進んでいるらしく、あちこちで歓声が上がっている。

急に隣の試合場でひときわ大きな歓声が上がったことで意識が戻り、声のした方をを見る。

すると現在セインとアンドリューの試合をやっているようだ。

俺の出番はまだ先なので、少しそちらの方を見ることにして歩いていく。

「ねぇ、さっきなんで歓声が上がったの?」

俺はクロードの隣りに座るとそう聞いた。

「なんだ、見に来たのか?試合はどうした?」

「試合は第1試合勝ち進んで、次の第2試合まで時間あるから見に来たんだ。それで、何で歓声が上がったの?」

俺が改めてそう聞くと、「あのアンドリューっていう王子、なかなかやるな」と言った。

「あいつ、風魔法が得意らしいんだが、リーシェさんから『君にも能力制限をかけないと周りと釣り合わないから』と言われて風魔法を使えなくなったんだ。まぁおかげで皆といい勝負になってるがな。」

クロードのその言葉に、目をパチクリした俺。

そうなの?アンドリューにも制限かけたんだ?

あ~……でもそっか、獣人と普通の人間とでは元々の能力に差があるもんね。

さらに彼の場合は血は薄まっているとはいっても風属性の長の血が入っているから、やはり風魔法に適性があるので威力も段違いなのだろう。

そんな魔法を放てば相手は怪我をするのは当然だ。

そりゃあ能力制限をかけるのは当たり前か。

俺が納得してうんうんと頷くと、クロードが先ほどの歓声の話をしてくれた。

どうやらアンドリューの放った水魔法に対してセインの土魔法が勝ったらしく、競り勝ってアンドリューの方に飛んでいったらしい。

「それは凄いね。ドラゴンの血を引いている彼の魔法に競り勝つなんて。それがたとえ得意な魔法ではなかったとしても、元々能力の高い種族だから威力は高かったんじゃないかな。やっぱりセインは戦闘能力は高いのかもね。」

「あぁ、それは俺も思う。だがあいつはどちらかというと剣術の方が得意だから、マール先生のトーナメントを楽しみにしているようだったよ。」

「えっ、セインは剣術の方が得意なの?」

俺は思わずクロードにそう聞いてしまったが、考えてみれば体格的にも剣術の方が得意そうか。

それでいうなら魔法は苦手に見える。

「そうなんだ。あいつ、あの体格だろ?夏休みに入ってからはミラー相手に相当鍛えたらしくてな。更に一回り大きくなったと思わないか?」

俺の言葉に苦笑いをしたクロードは、1つ頷くとそう言った。

……そうだね、考えてみれば少し体格良くなったかも……?

……ごめん、正直に言うと体格はあまり良く見てなかった。

そっか、ミラー騎士団長相手に特訓をしていたんだね。

彼となら相当鍛えられたと思う。


俺がそんな事を考えながら試合を見ていると、互いに拮抗しているように見えた試合だが、魔力切れでセインが降参を宣言する。

ん?あいつ大の字になったまま動けてないな?

俺は思わずセインに駆け寄り、腕を掴むと俺の魔力を譲渡してやる。

少しすると動けるまでに回復したらしく、セインは「もう大丈夫だ」と言って起き上がった。

「クロードの隣まで肩を貸してくれるか?」

セインはそう言うと、俺と肩を組む。

そしてそのままクロードの方へと連れて行くと、俺はグリーさんから「次、試合でっせ~」と声をかけられた。

「ごめん、どうやら試合みたいだから行くね。」

「ああ、頑張れよ?」

俺が歩き出すと、クロードが俺にそう声をかける。

俺が苦笑いをして振り返ると、訝しそうな顔をした。

「……まぁ、(手加減を)頑張るよ。」

「……?」

俺の言葉に首を傾げるクロード。

なんか普通の「頑張る」じゃなかったことに気づいたようだ。



俺は手を降ってAチームの試合場へと戻り、試合をするために中へと入る。

対戦相手は俺が来たのを見ると、覚悟をした顔をして試合開始を待っていた。

「君も結界張っておく?」

俺は対戦相手の子にそう聞いたのだが、彼は横に首を振る。……ホントに良いの?

「君~、シエルさんの提案断ったんか?それでええなら……ほな、始めよか~。」

「はいっ!降参しますっ!!」

「……えっ?」

グリーさんがそう宣言すると、対戦相手はいきなりそう宣言し、俺とグリーさんは唖然とする。

「どっ、どういう事……?」

俺がなんとか声を振り絞って聞くと、彼は真面目な顔で「勝てるわけがない!」と言い切った。

「君のローラさんとの試合を見ていて思ったんだ。君は俺たち学生と比べて魔力や技術なんかが桁違いに凄い。君がそうやって能力制限をかけて、さらに手加減をしてくれていたとしても全く相手にならないほどに。ならば無駄に戦わずに棄権したほうが良いと皆で話し合ったんだ。」

「……。」

対戦相手はそんな事を俺に向かって言ってきたが……それって、何をどうしても俺の優勝は変わらないから戦うことを拒否したって事だよね?

……じゃあ、このトーナメントって意味なくない?

俺はその結論に達すると、ガックリと肩を落とした。

すると対戦相手から「すまないな」と申し訳なさそうに声がかけられる。

「なぁ、そないな事言わんと~、シエルさんとも戦ぉてやってえな。な?」

グリーさんがそうやって言ってくれたが、クラスメイト達は拒否を決めたようだ。

「……こら、埒が明かんわ。ちょい待っとき~。」

グリーさんはそう言うと、一瞬でリーシェさんの所へと現れる。

みんなはもう見慣れた光景なのか、別に驚きもしていないが、たぶん転移魔法の一種だろうと思っているに違いない。


それからすぐに2人で転移してくると、「こっちのチームではシエルくんと戦うのを拒否してるんだって?」とリーシェさんは聞いてきた。

「そうなんや。どうも力の差があり過ぎて心が折れてしまったんやろねぇ。どないします~?」

グリーさんのその言葉に、リーシェさんはため息を1つつくと周りを見渡した。

Aチームの生徒はみんな気まずそうに下を向く。

……ごめん、俺がいなければみんな楽しかったかもね……。

俺がまたもやしょんぼりとしていると、リーシェさんがパンパンと手を鳴らす。

「しょうがない。じゃあAチームではシエルくんは最終戦だけ戦うことにして、とりあえずトーナメント表通りに戦ってもらえるかな?そしてシエルくんには後でグリー殿と思う存分戦って気分をスカッとさせるといいよ。それならみんなも楽しく観戦できるからちょうど良いと思うよ。」

リーシェさんはみんなにそう提案すると、最後に俺に向かってウインクした。

……そうだよね、それが1番良い対応策だよね……。

でもね、俺も生徒の一人として皆と戦いたかったな。

俺がそんな事を思っていると、リーシェさんが「じゃあ時間もできたわけだし、Bチームの観戦でもするかい?」と言って俺を連れて転移した。
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