異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

魔術トーナメント戦 5

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俺が試合場に戻ってくると、グリーさんから「すぐに試合始めるで~」と声をかけられたので、そのまま中央に向かう。

対戦相手はもう立っていて、その相手は予想外のミストさんだった。

「えっ、ミストさんが決勝戦の相手なの?」

俺は驚いて、思わずそう言ってしまった。

するとミストさんはむっとした顔で「悪かったな、俺で」と言った。

……ごめん、意外すぎて思わず言っちゃった。

「シエルさん、この坊主、意外と強い魔法を使いよるんやで?適性魔法が闇魔法なんはなかなかおらんしなぁ。あ、あと火魔法も使えるよって、案外強いで?」

グリーさんがそんな事を言ったが、『闇魔法』と聞いてなんとなく俺は納得してしまった。

あのお父さん、性格的にそっち方面に適性ありそうだったもんね。

それにあの女神の加護を貰っていたとしたら尚更なのかもしれない。


俺がそんな事を考えているとグリーさんから「始めるで?」と言われ、俺は慌ててミストさんの方に向き直る。

その直後に開始の合図が出された。


俺はとりあえずミストさんの出方を見るために様子見をしていたが、どうやらミストさんは前もって準備をしていたようで、急に目の前から居なくなった。

俺は慌ててキョロキョロしたのだが、やはりどこにもいない。一体どこへ?

するとその背後になんとなく気配がしたので振り向こうとしたところへ、小さなファイアーボールが叩きつけられた。

その気配に反射的に身体が反応し、ファイアーボールへ拳を叩きつけて霧散させる。

だがファイアーボールが打たれただろう場所には誰もいない。


そんな事が何度もあったことで、俺もようやく気がついた。

そっか、これが闇魔法の影移動なんだね!

ならばこれの対処は……これだっ!

俺は試合場全体に巨大で薄く平たいライトボール?を作り出した。

もうすでに『ボール』ではないが、これなら影は足元に映らない。

「シエルさん、それは確かに有効やけど、あの坊主が出てこられへんがな。一旦しまおうか~?」

呆れた顔でグリーさんがそう言うので、一旦しまう。

すると俺の足元にある影からミストさんが出てきて、「何してくれるんだ?」的な苦い顔で俺を見る。

「……お前なぁ。あれでは俺が出てこれないじゃないか。」

「だって影から出てくるなら影を消せばいいって思うじゃない。でもまぁ……全く影が無くなるようにしたのはごめんね?」

「それに、なんだあの対処法?普通、拳でなんて魔法は消えないんだぞ?」

まだ苦い顔をしているミストさんに、俺は素直に謝る。



「んじゃあ改めて試合始めてや~」

グリーさんのその言葉に、構える俺たち。

ミストさんはもう影移動は使わないことにしたようで、姿を消すことはなかった。

その代わり、闇魔法の1つらしき真っ黒な球体を空中に作り出す。

それは周りの光を吸い込むようなブラックホールみたいな見た目をしている。

俺が「なんだ、あれ?」と見ていると、ミストさんはそれを俺の方にものすごいスピードで飛ばしてきた。


あれは……どう対処する?

なんとはなしにあれに触るのは危険だと本能が告げている。

ならば……色からして闇魔法ぽいので、光魔法か神聖魔法で無効化できないだろうか?

俺は必死に考えて、光魔法で柔らかな壁みたいなものを作り、勢いよく飛んでくるそのブラックホールみたいな球体を包んでしまう。

それならば魔法同士がぶつかっても内部に閉じ込められて安全だろう。


案の定2つの魔法は中でぶつかって結構な音の爆発をしたらしいが、俺の魔法の方が魔力が強かったらしくて周囲には問題なかった。

「あっぶないなぁ!あれって何だったんだ?」

俺はミストさんにそう言うと、彼は肩をすくめて「闇魔法で作ったボールだ。ぶつかると爆発はするが、まだ習いたてだからそれほど威力はないぞ」と言った。

「でも俺の魔法の中で爆発したのは結構な音がしてたよ?」

「そりゃあ、そうだろう。お前の魔法の威力も合わさるから、爆発の威力も倍になったんじゃないか?」

……まぁ、確かに2つの魔法の威力が合わされば倍になるか。

俺はなんとなく釈然としなかったが、試合に戻ろうとした。

「いや、俺の降参で良い。どうやっても勝てないだろうからな。それに……ほら、あっちの方も優勝者が決まったようだぞ。」

ミストさんのその言葉に、俺は先ほどまでいたBチームの試合場を見る。

するとリーシェさんが中央に立っているアンドリューの方へと、拍手をしながら向かっているのが見えた。

なるほど、あっちはやはりアンドリューが優勝したんだね。



「なんや、坊主はもうええんか?まだ出すもんあるんやったら、シエルさんにぶつけてみればええのに。ほんまに負けでええんか?」

グリーさんがミストさんに確認を取ると、ミストさんは頷き「ああ、それで良い」と答えた。

「ならAチームの優勝者はシエルさんで決まりやな。みんな、お疲れさんやったな。」

グリーさんはそう言うと、拍手をしながら俺のもとへとやってきた。


するとBチームの方から「そっちも決まったかい?」と叫ぶリーシェさんの声が聞こえた。

「はいな~。やっぱりシエルさんで決まりやったで~。」

「そうか、やっぱりね。さてシエルくん、最後の試合をするからこの白線の上にある結界を解除してくれるかい?」

リーシェさんは白線の所まで歩いてくると、立ち止まって俺にそう頼んできた。

俺はすぐにその結界を取り除く。

これで試合場は倍の広さになったわけだ。


「さて……シエルくんもずっと魔力制限をかけていて疲れただろう?アンドリューくんとなら思う存分戦えるし、その後にはグリー殿との戦いもあるからその魔道具は取り除くよ。」

リーシェさんはそう言うと俺の手首にはめている魔道具を取り除いた。

……おぉ~、なんか身体が軽くなった気がする!


俺がにこにこ顔で2人を見ると、リーシェさんは苦笑いをしていた。……ん?とうした?

「今までシエルくんがはめていた魔道具なんだけど、実はそれ、犯罪を犯した魔法師用の拘束具なんだよ。本来はそれをはめると全く魔法が使えなくなるから安全に魔法師を無力化できる魔道具なんだけど……君の場合はあまり意味を成していなかったよね。それに結局はみんな、君との力の差を見て試合放棄しちゃっていたし、あまり意味なかったようだし。ごめんね、結構疲れたでしょ?」

リーシェさんはそう言うと、俺に謝ってきた。

……なるほど、でもなんとなくそんな使い方をする魔道具だろうとは思っていたよ。

だって普通に過ごしていれば、魔力制限をかけるような場面って無いもんね。

俺は苦笑いをしながらリーシェさんに「気にしてないから大丈夫ですよ」と伝える。


でもまぁ、これで能力は戻ったし、アンドリューとグリーさんとはしっかり戦えるね!

アンドリューも得意な風魔法が使えるし……どんな試合になるのかワクワクするよ!
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