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第10章 国立学校 (後期)
『ブレイズ』へのダンジョン遠征 18
しおりを挟むそれから俺たちは後片付けを済ませると、それぞれのテントに戻る。
今日はもう早々に休み、明日に備えることになったのだ。
俺はとりあえずテントを張った時点でクレイン国側の
それぞれのテントに結界を張り、そして今、こちら側の方を包むように結界を張っておいた。
これで少なくてもクレイン側は安全だろう。
俺はホッとしてみんなのいるテントへと入った。
「……結界、張ってきたのか?」
スコットさんが俺に聞いてきた。
俺は「もちろん張ってきたよ」と言って頷く。
「まぁ一応、ってところだね。今、結界を張った時に中に入られていれば不審者は活動し放題だろうけど、どっちにしろ個別のテントには張り終わった所から結界を張っていっていたから安心だろうけどね。」
俺はそう言って肩を竦めると、リッキーは苦笑いをする。
実はこの早い段階からの結界はリッキーの提案なのだ。
誰とはわからなかったようだけど、リッキーは不審な事を考えている奴を感じたらしい。
その為、テントを張った所からすぐに結界を張って安全を確保したのだ。
「今回はネシア軍の方は結界を張らなかったのか?」
「そうだね。張っておこうかと思いはしたけど、誰があの3人の仲間か分からなかったから張らなかったんだよね。駄目だった?」
「いや、それで良いんじゃないか?ネシアの方で何かあってもそれはあちらの問題だ。こっちに何かなければそれで良い。」
スコットさんはそう言うと、真剣な表情で頷く。
「それにあの王子の所にはエミリーとリリー、リーシェさんがいるだろ?それだけいれば安全じゃないか?」
リッキーがそんな事を言ったが、アンドリューがあちらのテントに入ったのは皆が見ている。
狙われるとしたら真っ先にあちらのテントだ。
「そんなに気になるなら、お前が影移動であっちのテントにいる王子連中をこっちに連れてくれば良いんじゃないか?」
呆れた声でリッキーはそう言ったが……なるほど、その手があったか。
ちょうどテントの大きさはほぼ同じだし、こちらにいるリッキーとスコットさんがあっちに行って、あっちにいる王子達4人がこちらに来ても狭くは感じないだろう。
とりあえずそう話がまとまったので、2人には俺の腕輪に入ってもらう。
そして俺が影移動で向こうのテントに向かって歩いていると、人影が数人こちらに来ているのが見えた。
それもアンドリュー達のテントに、だ。
……何の用だろう?
俺は目的のテントまで到着したのだが、とりあえず成り行きを見守ることにした。
「……王子殿下。まだ起きておられますか?」
その獣人兵の1人がテントを開けずに外から声を掛ける。
それに対してアンドリュー達4人は目を合わせ、リーシェさん達3人は警戒をする。
「……君は誰だい?ここには『王子殿下』と呼ばれるのは3人いるのだが?」
慎重にクロードがそう返答すると、その兵士はハッとした顔で「申し訳ありませんでした。アンドリュー様にお話があります。」と答えた。
それを聞き、アンドリューは眉を顰めて「こんな時間に何用だ?」と聞くと、相手は「この場では何とも……。」と言った。
アンドリューは警戒しながらもテントの内側から入り口の布をまくると、「悪いがこれ以上外には出れないからな」と言う。
「テントの外に出ることもかないませんか?」
「そうだな。友からは『このテントから出るな』と言われているのだ。」
「……ならばしょうがありません。」
その兵士は残念そうな顔をしながらも話すことに決めたようだ。
「お話というのは、この先の階層のことでございます。一応今回の遠征で最深部まで進んでいるのは次の20階層で、フロアボスと呼ばれている存在に少々苦戦しているようなのです。もしでしたら王子殿下のご友人のお力をお借りできたら……と思うのですが、いかがでしょう?」
「……後で聞いておくとしよう。」
「はい。良い返事をお待ちしていますね。」
結局その兵士が言った事は別に聞かれてまずいものでもなんでもなく、一体何故あんなに『外に出てきて欲しい』と言ったのかが全く分からない。
……やはり最後の結界を張る前に、問題のある人物に入られていたのかもしれないな。
俺はその兵士達がその場を去ったあと、改めて2重にそのテントに結界を張った後に中に影移動で出る。
俺が影からにゅ~っと顔を出すと、たまたまそれを見てしまったセインがビクッとして「うわぁっ!」と叫んだ。……静かにね?
「一応防音も追加した結界をさらに張っておいたけど、静かに聞いてね?」
「……ああ、わかった。っていうか、お前なぁ。影から首だけ出してるのって『生首』の様で怖いんだぞ?」
セインが引き攣った顔で俺にそんな事を言いながら、自分の右手を首まで持ってきて水平にする。
……まぁ、客観的に考えても怖いわなぁ。
「ところで何の為にここに来たんだ?」
クロードがもっともな事を聞いてきた。
「ああ、それはね、セインやアンドリューたち4人を俺達のテントに連れてくる為にだよ。ちょうど皆の姿を獣人兵が確認したし、入れ替わっても分からないからね。」
「……それは『何かあった』と考えているのだな?」
俺がクロードに答えた返事で、アンドリューはすぐに気づいたらしい。
「……まぁね。俺達の『敵』の一部らしき人物がいるようなんだよね。だから安全をきして、みんなに移動してもらおうと思っているんだ。あ、ちなみにスコットさんとリッキーは連れてきているからね。」
俺はそう答えると、腕輪から2人を出す。
「おっ?みんな揃ってるな。ならシエルから聞いたと思うが、王族のみんなは移動して向こうのテントに行ってくれ。あと、リーシェさんも一緒についてやってくれないか?このテントには俺たちスノーホワイトの4人がいることにするからさ。」
「それでは君たちが『囮』になるようなものじゃないですか。」
「大丈夫。シエルの結界があるから安心だ。1重でも強固なのに、防音の結界も張ったんだろ?完璧じゃないか。」
「貴方達がそう言うなら、こちらは構わないのですが……。無茶はしないで下さいね?」
「分かっているって、リーシェさん。」
リッキーはリーシェさんにそう言って、ウインクをする。
それを見てリーシェさんは苦笑いだ。
それから俺はセイン達4人とリーシェさんを腕輪に入れて、また影移動で元のテントへと戻る。
……今夜はこのまま何もなく終わると良いんだけどなぁ。
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