異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

『ブレイズ』へのダンジョン遠征 19

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俺が影移動で移動してくると、俺たちのテントの入り口近くで数人の獣人兵が立っていた。

その中の1人には見覚えがある。先ほどの獣人兵だ。

本当は顔を出して何を話しているのかを聞きたかったんだが、あいにく顔を出せる影がない。

しかも俺たちのテントには既に防音の効果を付与した結界も張ってあるので、テントの中に出たとしても何も聞こえないのだ。

とりあえずテントの中は真っ暗なので『寝ている』という体でやり過ごす事ができるので問題ないのだが……。

とりあえずは彼らが何をするのか見ていることにした。


彼らはどうやら中へと入ろうとしているようで、しきりにテントの外に張ってある結界を叩き続けている。

……そんなに叩いているとネシアの方には丸聞こえだよ?

それに今、中に入られると誰もいないことがバレてしまうので、テントの外に結界を張っておいて良かったと改めて思う。

もしかするとまたもやあの3人のように俺に結界を解けと言うつもりなのだろうか?

俺はなかなか帰らない彼らを地面の下から見ているわけだが……どうしたものかなぁ?

俺はう~んと悩んでいたが、ふと思い出す。

そういえばあの時もこんな事をした翌日にはあの3人は消えていた。

ならば今のうちに何かしらの『マーク』を彼らに取り付けられないものだろうか?

できれば音声を聞けたり、録音したりできる機能もあるとなお助かるんだけど。

俺はとりあえず小さな魔石を取り出し、魔力を流して捏ね始める。

それを小さな平たい物にし、それに俺の魔力を凝縮して入れつつ、録音機能のあるもの、音声を届けてくれるもの、そして居場所がすぐわかるものを作る。

さすがに2つの機能を付与することは無理だったので、それぞれ1つずつ作ってみた。

あ、音声を届けるものはペアて作ったよ!


それをどこに貼ろうかと考えたが、まずは居場所がわかる魔道具は靴底に。

録音機能や音声を届けてくれるものは、パンツの裾が折り返されているようなのでその内側にこっそりと手だけ出して素早く投げ込んだ。

どの魔道具も強度だけは強くしてあるので、まぁ踏んでも問題はない。

録音や音声を届ける魔道具はおまけのようなものなので、居場所が分かる魔道具さえしっかりくっついていれば良いのだ。


そして音声を届ける魔道具は、早速役目を果たしてくれていて、先ほどまで聞こえていなかった彼らの声が影移動の最中でも聞こえるようになった。

「……くそっ!こんだけ叩いているのにまだ起きやがらないのかっ!」

「……なぁ、あまり叩きすぎると俺たちの方にも音が聞こえるんじゃないか?」

「うるさいっ!元はといえば貴様たちが最初に失敗したのが悪いんじゃないかっ!周りの連中に悟られないように入り込んだまでは良かったが、このダンジョンに入ってこいつらと一緒に行動するようになってからが最悪だ!まさかこちらのやろうとしていることを先回りして潰されるとは何事だっ!一体、何をやればこうやって、全くこちらの作戦が遂行できなくなるのだ?」

「……そ、それは……」

「……それは、我々もよく分かりません。」

先ほどアンドリューに話しかけてきたへいしさんがイライラしながら周りの人に当たり散らしていると、1人の兵士さんがはっきりとした声でそう答えた。

「……わからない、だと?」

「はい。我々は全くそういう素振りをした覚えはございません。ですが、あの少年は何故か常に慎重な行動をするのです。我々は冒険者というものをあまり知りませんので、もしかするとこれが普通なのかもしれません。」

その兵士さんの言葉に、先ほどまで怒鳴っていた兵士さんは考え込んでしまう。

「……まぁ良いだろう。どうせ明日、20階層のボス部屋で行動を起こす予定だ。それまでは各自おとなしくしている事だ。」

怒っていた兵士さんはそう言うと、「これ以上ここにいてもしょうがない」と言って獣人兵たちのテントがある方へと歩いて行った。

結界から向こうへはすんなりと通れたので、もう俺たちに対する敵意は薄れているのだろう。


俺は彼らを見送ってから、テントの中へと入る。

そしてランプ代わりにライトの魔法を浮かべるとみんなを腕輪から出した。

「おぉ~、あっという間にお前のテントに到着だな!」

俺たちのテントに到着すると、セインは辺りをキョロキョロしながらそんな事を言った。

……そんなに変化ないよ?

「なぁ、あっちからこっちに来る間に何かあったのか?」

クロードが俺の顔を見てそんな事を言う。

すごいよね、クロード。

俺の顔見ただけでそんな事が分かるなんて。

俺がそんな事を考えながら頷くと、リーシェさんが「シエルくんは分かりやすいですからね」と苦笑いをする。

「それで……いったい何がありました?」

「実は……」

リーシェさんにそう聞かれて、俺は先ほどの獣人兵たちの会話を話す。

それを聞いていたアンドリューは複雑そうな顔をしている。

実はアンドリュー達王族にはこの話は一切していなかったのだ。

「奴らの目的は一体何なのであろうな……?」

アンドリューはポツリとそう呟く。

それを聞いた俺とリーシェさんは顔を見合わせ、この際だからとネシアの国王からの話も交えて、俺たちの予想を話す。

「……なるほど、奴らの目的は我の命…かもしれぬのだな?」

「ああ。今のネシア王族を排除するには、今の国王よりも弱い次代の王の存在を消し去るのが手っ取り早いからね。だから特にアンドリューを守ろうとしていたんだ。でも奴ら、結界を解除させるために関係のない者たちにまで手を出そうと考えていたから、問い詰めようと考えていたんだ。そしたら翌日にはあの3人がいなくなっていて……そして今日、また新たな兵士が現れた。これはチャンスだと思って、ある魔道具を取り付けてやったんだよね。」

俺はそう言って右手の掌の上にその魔道具をコロンと乗せた。

「なんだ、それ?」

「これはね、対となる魔道具で声を拾って、そしてこの魔道具から聞こえてくる様になっているんだ。」

「えっ!?そんな魔道具があるなんて、初めて聞いたぞ?」

「そりゃあそうだよ、これ、俺が作ったんだからね。」

俺がニカッと笑ってウインクをすると、呆れたセインが「お前、何でもありだな?」と笑った。

そうだよね、俺も魔法でいろんなことをしているけど、いつも『魔法ってすごいな!』と思っているよ。
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