476 / 529
第10章 国立学校 (後期)
『ブレイズ』へのダンジョン遠征 19
しおりを挟む俺が影移動で移動してくると、俺たちのテントの入り口近くで数人の獣人兵が立っていた。
その中の1人には見覚えがある。先ほどの獣人兵だ。
本当は顔を出して何を話しているのかを聞きたかったんだが、あいにく顔を出せる影がない。
しかも俺たちのテントには既に防音の効果を付与した結界も張ってあるので、テントの中に出たとしても何も聞こえないのだ。
とりあえずテントの中は真っ暗なので『寝ている』という体でやり過ごす事ができるので問題ないのだが……。
とりあえずは彼らが何をするのか見ていることにした。
彼らはどうやら中へと入ろうとしているようで、しきりにテントの外に張ってある結界を叩き続けている。
……そんなに叩いているとネシアの方には丸聞こえだよ?
それに今、中に入られると誰もいないことがバレてしまうので、テントの外に結界を張っておいて良かったと改めて思う。
もしかするとまたもやあの3人のように俺に結界を解けと言うつもりなのだろうか?
俺はなかなか帰らない彼らを地面の下から見ているわけだが……どうしたものかなぁ?
俺はう~んと悩んでいたが、ふと思い出す。
そういえばあの時もこんな事をした翌日にはあの3人は消えていた。
ならば今のうちに何かしらの『マーク』を彼らに取り付けられないものだろうか?
できれば音声を聞けたり、録音したりできる機能もあるとなお助かるんだけど。
俺はとりあえず小さな魔石を取り出し、魔力を流して捏ね始める。
それを小さな平たい物にし、それに俺の魔力を凝縮して入れつつ、録音機能のあるもの、音声を届けてくれるもの、そして居場所がすぐわかるものを作る。
さすがに2つの機能を付与することは無理だったので、それぞれ1つずつ作ってみた。
あ、音声を届けるものはペアて作ったよ!
それをどこに貼ろうかと考えたが、まずは居場所がわかる魔道具は靴底に。
録音機能や音声を届けてくれるものは、パンツの裾が折り返されているようなのでその内側にこっそりと手だけ出して素早く投げ込んだ。
どの魔道具も強度だけは強くしてあるので、まぁ踏んでも問題はない。
録音や音声を届ける魔道具はおまけのようなものなので、居場所が分かる魔道具さえしっかりくっついていれば良いのだ。
そして音声を届ける魔道具は、早速役目を果たしてくれていて、先ほどまで聞こえていなかった彼らの声が影移動の最中でも聞こえるようになった。
「……くそっ!こんだけ叩いているのにまだ起きやがらないのかっ!」
「……なぁ、あまり叩きすぎると俺たちの方にも音が聞こえるんじゃないか?」
「うるさいっ!元はといえば貴様たちが最初に失敗したのが悪いんじゃないかっ!周りの連中に悟られないように入り込んだまでは良かったが、このダンジョンに入ってこいつらと一緒に行動するようになってからが最悪だ!まさかこちらのやろうとしていることを先回りして潰されるとは何事だっ!一体、何をやればこうやって、全くこちらの作戦が遂行できなくなるのだ?」
「……そ、それは……」
「……それは、我々もよく分かりません。」
先ほどアンドリューに話しかけてきたへいしさんがイライラしながら周りの人に当たり散らしていると、1人の兵士さんがはっきりとした声でそう答えた。
「……わからない、だと?」
「はい。我々は全くそういう素振りをした覚えはございません。ですが、あの少年は何故か常に慎重な行動をするのです。我々は冒険者というものをあまり知りませんので、もしかするとこれが普通なのかもしれません。」
その兵士さんの言葉に、先ほどまで怒鳴っていた兵士さんは考え込んでしまう。
「……まぁ良いだろう。どうせ明日、20階層のボス部屋で行動を起こす予定だ。それまでは各自おとなしくしている事だ。」
怒っていた兵士さんはそう言うと、「これ以上ここにいてもしょうがない」と言って獣人兵たちのテントがある方へと歩いて行った。
結界から向こうへはすんなりと通れたので、もう俺たちに対する敵意は薄れているのだろう。
俺は彼らを見送ってから、テントの中へと入る。
そしてランプ代わりにライトの魔法を浮かべるとみんなを腕輪から出した。
「おぉ~、あっという間にお前のテントに到着だな!」
俺たちのテントに到着すると、セインは辺りをキョロキョロしながらそんな事を言った。
……そんなに変化ないよ?
「なぁ、あっちからこっちに来る間に何かあったのか?」
クロードが俺の顔を見てそんな事を言う。
すごいよね、クロード。
俺の顔見ただけでそんな事が分かるなんて。
俺がそんな事を考えながら頷くと、リーシェさんが「シエルくんは分かりやすいですからね」と苦笑いをする。
「それで……いったい何がありました?」
「実は……」
リーシェさんにそう聞かれて、俺は先ほどの獣人兵たちの会話を話す。
それを聞いていたアンドリューは複雑そうな顔をしている。
実はアンドリュー達王族にはこの話は一切していなかったのだ。
「奴らの目的は一体何なのであろうな……?」
アンドリューはポツリとそう呟く。
それを聞いた俺とリーシェさんは顔を見合わせ、この際だからとネシアの国王からの話も交えて、俺たちの予想を話す。
「……なるほど、奴らの目的は我の命…かもしれぬのだな?」
「ああ。今のネシア王族を排除するには、今の国王よりも弱い次代の王の存在を消し去るのが手っ取り早いからね。だから特にアンドリューを守ろうとしていたんだ。でも奴ら、結界を解除させるために関係のない者たちにまで手を出そうと考えていたから、問い詰めようと考えていたんだ。そしたら翌日にはあの3人がいなくなっていて……そして今日、また新たな兵士が現れた。これはチャンスだと思って、ある魔道具を取り付けてやったんだよね。」
俺はそう言って右手の掌の上にその魔道具をコロンと乗せた。
「なんだ、それ?」
「これはね、対となる魔道具で声を拾って、そしてこの魔道具から聞こえてくる様になっているんだ。」
「えっ!?そんな魔道具があるなんて、初めて聞いたぞ?」
「そりゃあそうだよ、これ、俺が作ったんだからね。」
俺がニカッと笑ってウインクをすると、呆れたセインが「お前、何でもありだな?」と笑った。
そうだよね、俺も魔法でいろんなことをしているけど、いつも『魔法ってすごいな!』と思っているよ。
150
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる