481 / 529
第10章 国立学校 (後期)
『ブレイズ』へのダンジョン遠征 24
しおりを挟む目の前には先が見えないほど広い海があり、そこを進む為の移動手段が3隻浮かんでいる。
多分獣人兵達は不安だと思うので、先に俺達クレイン国の者が1つの船に乗り込むことになった。
俺たち王族とスノーホワイトは、あえて2隻目の船に獣人兵達と混じって乗ることにした。
狙われているらしいアンドリューがいるので本当は皆と一緒が良かったのだが、少し人数が多くて乗れなさそうなのと風魔法を使える人を分散させる必要もあったので、彼らは俺と離れる訳にもいかずにこうするしかなかったのだ。
ちなみにグリーさんは、全く風魔法が使えない獣人兵達ばかりが乗る3隻目の船に乗ることになったよ!
「じゃあ皆はその船に乗り込んでね!1人ずつ乗り込んで、目一杯だと傍から見ている俺が判断したら、残りは俺たちと同じく2隻目の船に乗るよ!」
俺の言葉にみんなは素直に従ってくれた。
乗り込む時は俺が土魔法で船までの橋を作って安全は確保しているのだが、さすがに目に見えづらい船だから怖々ゆっくりと乗っている。
どうやらかなり魔力があれば結界が薄っすらと見えるらしく、スタスタと歩いて渡る生徒や魔法師がいると思えば、ゆっくりと慎重に進む生徒や騎士がいるのが面白い。
なるほど、これは魔力がどのくらいあるのかの目安にできるんだね!
そしてやはり懸念していた通りに予定より人数が乗れなかったので、そこからは2隻目の船に乗ってもらう。大体3分の2は乗れた感じだ。
そしてクレイン国側がみんな乗り込んだ後で、今度は獣人兵達が乗り込む。
俺たちの乗っている2隻目には、ずっと一緒にいた兵士長さんたちの他に副将軍さんも乗ってこようとした。
「すみませんが副将軍さんは3隻目の船に乗ってもらえますか?」
俺のその言葉に、カイヤさんは明らかに苛ついた顔をして睨みつけてきた。
「……王子殿下がいるのですから、私がこの船に乗らなくてどうするのですか?」
カイヤさんは、まるで「そんな事もわからないのか?」と言いたげな顔で俺にそう言った。
「それも分かるのですが……3隻目の船は明らかに戦力不足ですよね。多分これから先には海で魔物に襲われる事になると思いますので、出来るだけ強者は分散させたいのです。……協力していただけますか?」
「……。」
俺がいかにも申し訳なさそうな顔でそう言うと、チラッと3隻目に乗り込むメンバーを見てため息をつくと「……わかった」と言ってそちらの方に移動してくれた。
みんなが乗り込んだ後に、船に乗り込むために作った橋を解除して、いざ大海原へ!
俺たち強力な風魔法を使える3人はそれぞれの乗る船の帆に風魔法で風を作って前に進ませる。
一応行先は何処なのかを事前に話し合って、まずは休憩所へと向かうことにしてある。
詳しい場所は……索敵魔法を見ながら、かな?
そんな感じで、みんなを乗せた透明な船はスイスイと広い海を風を拾って進んでいく。
なんか体に当たる風がサラッとしていない感じがするので、やはりこの海も舐めるとしょっぱいのかもしれない。
「おい、シエル。海の底の方から何かが来てる気がしねぇか?」
リッキーが足元の透明な床から見える真っ暗な海底をジッと見つめながら、そんな事を言う。
確かに俺の索敵魔法にも赤マークがあるので、敵なのは間違いない。
間違いないのだが……その位置はこの船の真下をキープしているのだ。
つまり、現在姿が見えないのにこの真下に敵がいるということは、『海底の方にいる』ということで間違いないだろう。
「単に海底にいるってだけじゃなくて、上がってきてるのか?」
俺は少し首を傾げながら、訝しそうにリッキーを見る。
俺の視線を受け止めたリッキーは、真剣な顔で頷く。
「間違いないんじゃないかと思っている。もしだったら、3隻を囲むようにさらに結界を張れないか?」
リッキーはそう言うと、また海底を見つめている。
……こんな時の山田は、意外とその読みが当たるんだよな。
俺はそんなリッキーの言う通り、3隻それぞれをさらに結界で覆った。
これならば例え海底に引きずり込まれたとしても、結界に守られて助かるだろう。
俺が結界を張り終わった瞬間に、急に周囲が海底から吹き出してきた細かい泡で包まれ、3隻それぞれ錐揉み状態でグルングルンと回転している。
みんなは悲鳴をあげたり雄叫びをあげたりとめちゃくちゃではあるが、船の天井を覆っている結界のおかげで外には投げ出されずに済んでいる。
しばらくすると船の回転は止まり、ゆっくりと海面へと浮かんで行く。結界の中にある空気のおかげなのだろう。
皆もようやく船が安定したので、床にへたり込んで呆然としていた。
……ヤバかったなぁ。もう少し遅かったら皆、海の中に投げ出されて溺死してしまうところだった。
俺がそう思ってひやりと冷や汗を流していると、リーシェさんから『魔法連絡』が届いた。
『シエルくん!君たちのところは大丈夫かい!?こちらはなんとか落ち着きを取り戻したよ!それにしてもいったい何だったんだろうねぇ……?』
どうやらあちらもなんとか落ち着いたようだ。
グリーさんの方も見たが、特に問題は起きて……あれ?
俺は1度目を擦ると、もう一度グリーさんのいた船を見る。
するとそこには、結界の外から何やら細長いロープのようなものが何本もウニョウニョと動きながら這いずっている光景が目に入った。
……何だあれ!?気持ち悪いんだけど!
俺は思わず呆然と見ていたが、直ぐに気を取り戻してその変な物体を風魔法で切っていく。
もちろんグリーさんも内側から切り刻んでいるのだろうが、あまりの数に斬り刻むことが再生する力に追いついていないようだ。
そのうちにゆっくりとだが、グリーさんの乗った船が海底に引きずり込まれているようで、俺はすごい焦った。
どうしたら良い!?風魔法じゃ埒が明かない。
火魔法は水の中ではもちろん使えない。同じく水魔法もだ。
土魔法は発射しても海水で阻まれてなんともならない。
……考えろ、シエル!考えるんだっ!
俺は焦りながらもなんとか考える。
徐々にだが、確実に沈んでいっているグリーさん達の船を見ながら…焦りで時間だけが過ぎていっている。
「シエルっ!あれ何とかしないと駄目なんじゃないか!?」
「分かっているよっ!でも、風魔法で切り刻んでもすぐ再生するんだよ!一体、どうすれば……!」
俺とリッキーは少しパニックになりかけていたが、そんな俺たちにアンドリューが冷静に声をかけてきた。
「シエルよ、そなたは我よりも風魔法が得意であろう?この結界に守られておるなら安全であろうに。どうせなら遠慮せずに強力な魔法を使えば良いのではないか?」
……なるほど。それは一理あるか。
このままでは海底に引きずり込まれてしまうのなら、中の人が錐揉み状態なる方がまだましだろう。
俺はかなりの集中力で海の中に巨大な竜巻を創り出す。
作っている最中に俺の魔力が半分持っていかれるのを感じたが、回復はまた後だ。
俺はその竜巻をグリーさんが乗る船へと近づける。
するとそのロープみたいな触手が船を引きずり込むスピードが上がったようだ。
「……逃がすかっ!」
俺は更なる集中力で竜巻を、水の抵抗がある海の中を移動させる。
なんとかギリギリだったが、逃げられる前に竜巻を船の下へと移動させることに成功したようだ。
その竜巻の風が鋭利な刃となり、ロープみたいな触手の束を細かくバラバラに切り刻んでいく。
しばらくすると、その中から結界に守られた『結界の船』が現れた。
……かなり何重にも触手が絡まっていたんだね。
そしてとうとう触手の中から船がポロリと零れ落ちてきて、触手はさらに竜巻の刃で細切れになっていく。
そして竜巻の影響でできた上昇水流のおかげで、一気に水面まで持ち上がってきた。
こちらから見た中の様子は、グリーさん以外は床にのびているようでまったく立ち上がる様子もない。
「おいっ!早くこの場から逃げるぞ!」
リッキーは1人立っていたグリーさんに向かってそう叫ぶと、俺達はかなりのスピードでその場から立ち去る。
その現場から、かなり遠くへと避難できた俺たち。
ここまで離れれば、さすがにもう追ってはこないだろう。
それにしても……さっきのは一体何だったんだろうね?
突然の触手の襲来は、とても衝撃的だった。
この海……何が待ち構えているのだろうね……?
155
あなたにおすすめの小説
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~
島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!!
神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!?
これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる