異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第10章 国立学校 (後期)

『ブレイズ』へのダンジョン遠征 24

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目の前には先が見えないほど広い海があり、そこを進む為の移動手段が3隻浮かんでいる。

多分獣人兵達は不安だと思うので、先に俺達クレイン国の者が1つの船に乗り込むことになった。

俺たち王族とスノーホワイトは、あえて2隻目の船に獣人兵達と混じって乗ることにした。

狙われているらしいアンドリューがいるので本当は皆と一緒が良かったのだが、少し人数が多くて乗れなさそうなのと風魔法を使える人を分散させる必要もあったので、彼らは俺と離れる訳にもいかずにこうするしかなかったのだ。

ちなみにグリーさんは、全く風魔法が使えない獣人兵達ばかりが乗る3隻目の船に乗ることになったよ!


「じゃあ皆はその船に乗り込んでね!1人ずつ乗り込んで、目一杯だと傍から見ている俺が判断したら、残りは俺たちと同じく2隻目の船に乗るよ!」

俺の言葉にみんなは素直に従ってくれた。

乗り込む時は俺が土魔法で船までの橋を作って安全は確保しているのだが、さすがに目に見えづらい船だから怖々ゆっくりと乗っている。

どうやらかなり魔力があれば結界が薄っすらと見えるらしく、スタスタと歩いて渡る生徒や魔法師がいると思えば、ゆっくりと慎重に進む生徒や騎士がいるのが面白い。

なるほど、これは魔力がどのくらいあるのかの目安にできるんだね!


そしてやはり懸念していた通りに予定より人数が乗れなかったので、そこからは2隻目の船に乗ってもらう。大体3分の2は乗れた感じだ。

そしてクレイン国側がみんな乗り込んだ後で、今度は獣人兵達が乗り込む。

俺たちの乗っている2隻目には、ずっと一緒にいた兵士長さんたちの他に副将軍さんも乗ってこようとした。

「すみませんが副将軍さんは3隻目の船に乗ってもらえますか?」

俺のその言葉に、カイヤさんは明らかに苛ついた顔をして睨みつけてきた。

「……王子殿下がいるのですから、私がこの船に乗らなくてどうするのですか?」

カイヤさんは、まるで「そんな事もわからないのか?」と言いたげな顔で俺にそう言った。

「それも分かるのですが……3隻目の船は明らかに戦力不足ですよね。多分これから先には海で魔物に襲われる事になると思いますので、出来るだけ強者は分散させたいのです。……協力していただけますか?」

「……。」

俺がいかにも申し訳なさそうな顔でそう言うと、チラッと3隻目に乗り込むメンバーを見てため息をつくと「……わかった」と言ってそちらの方に移動してくれた。


みんなが乗り込んだ後に、船に乗り込むために作った橋を解除して、いざ大海原へ!

俺たち強力な風魔法を使える3人はそれぞれの乗る船の帆に風魔法で風を作って前に進ませる。

一応行先は何処なのかを事前に話し合って、まずは休憩所へと向かうことにしてある。

詳しい場所は……索敵魔法を見ながら、かな?



そんな感じで、みんなを乗せた透明な船はスイスイと広い海を風を拾って進んでいく。

なんか体に当たる風がサラッとしていない感じがするので、やはりこの海も舐めるとしょっぱいのかもしれない。

「おい、シエル。海の底の方から何かが来てる気がしねぇか?」

リッキーが足元の透明な床から見える真っ暗な海底をジッと見つめながら、そんな事を言う。

確かに俺の索敵魔法にも赤マークがあるので、敵なのは間違いない。

間違いないのだが……その位置はこの船の真下をキープしているのだ。

つまり、現在姿が見えないのにこの真下に敵がいるということは、『海底の方にいる』ということで間違いないだろう。

「単に海底にいるってだけじゃなくて、上がってきてるのか?」

俺は少し首を傾げながら、訝しそうにリッキーを見る。

俺の視線を受け止めたリッキーは、真剣な顔で頷く。

「間違いないんじゃないかと思っている。もしだったら、3隻を囲むようにさらに結界を張れないか?」

リッキーはそう言うと、また海底を見つめている。

……こんな時の山田は、意外とその読みが当たるんだよな。


俺はそんなリッキーの言う通り、3隻それぞれをさらに結界で覆った。

これならば例え海底に引きずり込まれたとしても、結界に守られて助かるだろう。


俺が結界を張り終わった瞬間に、急に周囲が海底から吹き出してきた細かい泡で包まれ、3隻それぞれ錐揉み状態でグルングルンと回転している。

みんなは悲鳴をあげたり雄叫びをあげたりとめちゃくちゃではあるが、船の天井を覆っている結界のおかげで外には投げ出されずに済んでいる。

しばらくすると船の回転は止まり、ゆっくりと海面へと浮かんで行く。結界の中にある空気のおかげなのだろう。

皆もようやく船が安定したので、床にへたり込んで呆然としていた。

……ヤバかったなぁ。もう少し遅かったら皆、海の中に投げ出されて溺死してしまうところだった。

俺がそう思ってひやりと冷や汗を流していると、リーシェさんから『魔法連絡』が届いた。

『シエルくん!君たちのところは大丈夫かい!?こちらはなんとか落ち着きを取り戻したよ!それにしてもいったい何だったんだろうねぇ……?』

どうやらあちらもなんとか落ち着いたようだ。

グリーさんの方も見たが、特に問題は起きて……あれ?

俺は1度目を擦ると、もう一度グリーさんのいた船を見る。

するとそこには、結界の外から何やら細長いロープのようなものが何本もウニョウニョと動きながら這いずっている光景が目に入った。

……何だあれ!?気持ち悪いんだけど!

俺は思わず呆然と見ていたが、直ぐに気を取り戻してその変な物体を風魔法で切っていく。

もちろんグリーさんも内側から切り刻んでいるのだろうが、あまりの数に斬り刻むことが再生する力に追いついていないようだ。

そのうちにゆっくりとだが、グリーさんの乗った船が海底に引きずり込まれているようで、俺はすごい焦った。

どうしたら良い!?風魔法じゃ埒が明かない。

火魔法は水の中ではもちろん使えない。同じく水魔法もだ。

土魔法は発射しても海水で阻まれてなんともならない。

……考えろ、シエル!考えるんだっ!

俺は焦りながらもなんとか考える。

徐々にだが、確実に沈んでいっているグリーさん達の船を見ながら…焦りで時間だけが過ぎていっている。

「シエルっ!あれ何とかしないと駄目なんじゃないか!?」

「分かっているよっ!でも、風魔法で切り刻んでもすぐ再生するんだよ!一体、どうすれば……!」

俺とリッキーは少しパニックになりかけていたが、そんな俺たちにアンドリューが冷静に声をかけてきた。

「シエルよ、そなたは我よりも風魔法が得意であろう?この結界に守られておるなら安全であろうに。どうせなら遠慮せずに強力な魔法を使えば良いのではないか?」

……なるほど。それは一理あるか。

このままでは海底に引きずり込まれてしまうのなら、中の人が錐揉み状態なる方がまだましだろう。



俺はかなりの集中力で海の中に巨大な竜巻を創り出す。

作っている最中に俺の魔力が半分持っていかれるのを感じたが、回復はまた後だ。

俺はその竜巻をグリーさんが乗る船へと近づける。

するとそのロープみたいな触手が船を引きずり込むスピードが上がったようだ。

「……逃がすかっ!」

俺は更なる集中力で竜巻を、水の抵抗がある海の中を移動させる。

なんとかギリギリだったが、逃げられる前に竜巻を船の下へと移動させることに成功したようだ。

その竜巻の風が鋭利な刃となり、ロープみたいな触手の束を細かくバラバラに切り刻んでいく。

しばらくすると、その中から結界に守られた『結界の船』が現れた。

……かなり何重にも触手が絡まっていたんだね。


そしてとうとう触手の中から船がポロリと零れ落ちてきて、触手はさらに竜巻の刃で細切れになっていく。

そして竜巻の影響でできた上昇水流のおかげで、一気に水面まで持ち上がってきた。

こちらから見た中の様子は、グリーさん以外は床にのびているようでまったく立ち上がる様子もない。

「おいっ!早くこの場から逃げるぞ!」

リッキーは1人立っていたグリーさんに向かってそう叫ぶと、俺達はかなりのスピードでその場から立ち去る。



その現場から、かなり遠くへと避難できた俺たち。

ここまで離れれば、さすがにもう追ってはこないだろう。

それにしても……さっきのは一体何だったんだろうね?

突然の触手の襲来は、とても衝撃的だった。

この海……何が待ち構えているのだろうね……?
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