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第10章 国立学校 (後期)
『ブレイズ』へのダンジョン遠征 32
しおりを挟む「フッ……フハハハッ!まさかとは思うが、お前達、私が貴様らと同じ獣人だと思っていたのか?」
「っ!ち、違うのかっ!?」
ここまで彼に付き従っていた獣人兵の1人がカイヤさん……いや、もう呼び捨てでいいだろう。
カイヤに問う。
「あぁ~、そうか、お前達は『見た目』しか分からないものなぁ?フフッ、これなら分かるだろう?」
カイヤは笑うと、何かブツブツと唱え出す。
すると彼を真っ黒な球体……多分結界だと思うが、それが全身を包んで隠した。
そしてすぐにそれは解除され、以前見たことのある『馬の頭の魔物』と似たような雰囲気の、鋭い大きな角を頭に生やした牛の頭の魔物が出現した。
『それ』がカイヤなのだろう。
「ふぅ~……やっと元の姿に戻れたわ。貴様らの国を乗っ取るためにこっそりと忍び込み、長い年月をかけて用意周到にしてきた計画だからからなぁ。やっとその任務が終わるかと思うと、せいせいするぞ。」
そのカイヤはニヤニヤ笑い、右手の掌に自身の漆黒の魔力を集めると、どんどん圧縮していく。
その大きさは最初ビー玉ほどの大きさだったのが徐々に大きくなり、今は野球のボールほどだ。
「ネシアの王は高齢だからもう世継ぎは望めないかもしれないから放置で良いだろうし、世継ぎのあの馬鹿王子は先ほど魔界のドラゴンに食わせた。これで貴様らが消え去れば、ネシア側にばれる心配がない。……あぁ、そうそう。上の階層にいる奴らはお前達を始末した後に入り口に向かって進みながら処理をしていくつもりだから安心しろ。誰一人として、このダンジョンから逃がす気はないからな?」
カイヤはそう言うと、右手に創り出している魔力弾を見て「まだ足りぬな」と呟く。
今の大きさでバレーボールまでいかない大きさだ。
「フフッ、それにしても本当にここまでうまくいくとはなぁ?クレイン国側に潜入している奴らの悔しがる顔が目に浮かぶぞ。あいつらも運が悪かったものよな?ここに標的の3人がいるのだから。それはさておき……これでこの大陸はほぼ我々の国になる。あとはヒュサカのみだ。あそこにいる奴は非常に用心深いから我々も簡単には潜めんから、やはり数による正攻法でいかねばならんだろう。」
そこまで話すと、右手の魔力弾を見た。
その大きさはバスケットボールほどで、それは相当な圧縮らしく、魔力弾の周りでスパークが起きている。
「……さて、私の準備は出来たようだ。お前達は死ぬ覚悟などする必要はないぞ?一瞬で消え去るのだから。フフッ……フハハハハッ!さあ、食らうが良いっ!」
カイヤはその漆黒の魔力弾を俺たちに向かって高速で撃ち出す。
俺達はもちろん避けるわけにはいかない。
かなり後方ではあるが、俺の結界で守られている仲間がいるからだ。
俺はその魔力弾が着弾する前に角度をつけて結界を張る。
すると俺の結界に接触した魔力弾は、結界を滑って斜め上の空へと曲がっていった。
「何ぃっ!?私のあの威力の魔力弾を弾いただとっ!?」
カイヤはそれを目で追い、思わずそう叫んだ。
「……ははははっ!残念だったなぁ?シエルの結界は最強なんだよっ!お前の攻撃なんて全く通らなねぇんだよっ!」
セインはそう言って大笑いをする。
……セイン、そうやって彼を挑発するのは良いんだけど、顔……引き攣ってるよ?
「ちくしょうっ!!!」
カイヤはものすごい形相で俺たちを睨むと、次々と魔力弾を撃っていく。
俺たちの結界に着弾してどんどん煙が上がり、辺り一面が全く見えなくなると、カイヤは荒い息をつきながら魔力弾を撃つのを止めた。
その煙が風によって晴れると、全く無傷の俺たちが現れ、それを見たカイヤは唖然とした顔をする。
「き…貴様、一体……何者だ?」
カイヤは掠れた声でそう呟く。
「さ~てねぇ?何なんだろうね?」
俺はとぼけた調子でそう言ったが……正直、俺もよく分からん。
ユーリの相棒なのは間違いないけどね!
それを聞いたカイヤは苦々しげに俺を見て、舌打ちをする。
「チッ!こんな奴らがクレイン国にいるとはっ!すぐにこの場を離脱して奴らに知らせねば……」
「悪いけど……そいつら、もうこの世にいないんじゃね?」
カイヤの言葉に、リッキーが被せ気味にそう言う。
そうだよね?
俺も多分あの神父たちのことだと思うんだよね。
「神父として潜入してる仲間なら、もう俺たちが倒したからこの世には存在してないよ。」
「……何だと?」
俺の言葉にカイヤは訝しげな顔をする。
「だから、彼らはもう存在しないんだ。それに……さっきからずっと『女神』って言ってるけど、彼女ももうこの世にはいないんだけど?……知らなかったの?」
「そんな馬鹿なことがあるかっ!テネブル様は創造神がこの世に遣わせた4人の女神の内の1人なんだぞ!?この世から消えるわけがないじゃないかっ!」
カイヤは血走った目でそう叫ぶ。
その目は、『信じられない』ではなく『信じたくない』と訴えていた。
「残念だけど、これは本当だ。俺の目の前で創造神がその力で『消した』からね。その行動が目に余ったんじゃないの?」
「……。」
カイヤは呆然とした顔でこちらを見ると、膝から崩れ落ちた。
その時、カイヤの後方で何かが爆発するような音が聞こえた。
皆がそちらを見やると、もうもうと煙が上がっていた。
それが晴れると……そこには無傷のアンドリューが両手を天に向かって広げて立っていた。
俺たちの視線に気がついたアンドリューは、ニヤリと笑う。
「……待たせたであろうか?ここからは我らの反撃である!」
アンドリューはそう言うと、カイヤに向かって指をさしてそう宣言する。
……やっぱりね!
アンドリューは俺の結界に守られているから、少なくても噛み潰されたりはしないと思っていたんだ!
もし自力で出てこなければ助けようと思っていたけど、その心配は要らなかったね!
さあ、ここからはアンドリューの言うように、俺達の反撃た!
……カイヤ、覚悟しろよっ!
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