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第11章 冬休み編
さあ、これから新しい年が始まるよ!
しおりを挟む翌日、俺たちは国王を連れてクレイン国の王宮へと皆で戻る。ネシアの国王も一緒だ。
ユーリとセバスは俺の腕輪に入ってもらい、一緒に転移する人員を減らした。
国王まで一緒に来るのは、ローラとアンドリューの婚約話をまとめるためで、どうやらこれが彼の中での再優先事項だとの事。
元々『番』であることもあり、100パーセントに近い確率で成立することは分かってはいるが、それでもしっかりと『話を通す』のは国家間での取り決めやその他諸々のことがあるので必要なことなのである。
一瞬でネシアからクレインへと転移すると、そこは王都にある王宮の入り口だった。
……俺、やっぱりここに転移しちゃうんだね。
入り口にいる門番さん達は、急に俺たちが現れたことでびっくりした顔をしていたが、そこはもう慣れたのかすぐにぴしっと敬礼をして迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、皆様方。」
「リーシェ様からお話は伺っておりますので、国王の所までご案内致します。」
そう告げると、門番さんの内の1人が俺たちを先導して城内を案内してくれた。
しばらく歩いて到着したのはプライベートで使う応接室で、門番さんはノックをすると「皆様方がお帰りになりました」と中へ伝える。
中からリーシェさんの声で「入っておいで」と言われた。
中へと入ると、そこにはクレイン国の国王夫妻とリーシェさんがいて、みんなにこやかに俺達を迎えてくれた。
「ようこそ、ネシア国の国王よ。この度、何か話し合いたいことがあると連絡をもらっているのだが、相違無いか?」
クレイン国の国王のロイさんは、ネシアの国王のアジュゴールさんにそう聞いた。
アジュゴール国王は頷くと早速話をきり出そうとする。
「……父上、まずは座りませぬか?緊張しすぎてそこまで気が回らないのは分かりますが、立ち話でする内容ではございませぬ。」
アンドリューが冷静に自分の父親に向かってそう言った。
……アンドリューって『番』の側にいても結構理性的なんだね?
アンドリューにそう言われてハッとしたアジュゴール国王に、ロイ国王は席に座るよう言った。
「ところで先ほどの話なのだが、一体どんな内容を話し合いたいのだろうか?」
みんなが席に着くと、おもむろにロイ国王は切り出す。
「……実はですな……うちの息子のアンドリューとそちらの娘のローラさんを婚約させたいのだが、どうであろうか?」
アジュゴール国王はとても緊張した面持ちでそう切り出し、それを聞いたロイ国王は驚いた顔をする。
「……一体、何があったらそんな話になるのですかな?」
「実は一昨日アンドリューの誕生日で、獣人特有の『成人の儀式』というものを行ったのだ。それを行うと『獣人の本能』が目覚めるのだが、うちのアンドリューが『獣人の本能』に目覚めた時、そちらの娘であるローラさんを『番』と認識したらしい。」
「何とっ!?うちのローラがアンドリューくんの『番』であったというのか!?」
アジュゴール国王の話にロイ国王はものすごく驚いたようで、思わず立ち上がってしまった。
「……ロイ、座りなさい。まだ話が途中ですよ?」
全く動揺していないリーシェさんにそう言われると、ロイ国王は驚いた顔のままゆっくりと腰を下ろした。
「いや~……かなり驚いてしまいました。まさかうちのローラがねぇ……。それで、2人を早急に婚約させようと話し合いに来たのですね?」
「はい。獣人にとって『番』というものは稀にしか会えないもので、一旦出会ってしまうと2度と離れたくないと感じるものらしいのですよ。なので他の者に奪われる前に『確約』しておかないと、というわけなのです。」
アジュゴール国王の話に、少し考えたロイ国王は頷き、「分かりました」と答える。
「それでは2人には両国の友好の証として婚約をしてもらい、近いうちにある年始のお披露目の時に大々的に発表を致しましょう。それでよろしいかな?」
それを聞いたアジュゴール国王はとても嬉しそうに「それでお願い致します」と答えた。
この話を聞いていた俺たちも、アンドリューたちの婚約を喜ぶ。
それからはとんとん拍子に婚約証明書を交わし、正式に2人は婚約を結ぶ。
互いを見つめ合って喜び合う2人とそれを見守る6人を見て、俺も安堵する。
良かった、無事に婚約が整って。
「じゃあ俺はスノービークへ戻っても良いですか?」
俺が喜び合っているみんなにそう声をかけると、リーシェさんが「うん、了解。ネシアの国王は私が責任を持って送り届けるね。」と言ってくれた。
「じゃあ、またね!」
俺がそう言って転移しようとすると、アンドリュー達が「年始のお披露目の時には皆と一緒に王城へ来てくれよ」と言ったので、それは約束をして転移をした。
スノービークにあるリッキーの屋敷の俺の部屋に転移し、ユーリとセバスを腕輪から出す。
「にぃに、2人が無事に婚約できてよかったね!」
腕輪からユーリを出した瞬間にそんな事を言われたが、ユーリは一体それをどうやって知ったんだろう?
俺が訝しそうにユーリを見ていると、ユーリは「鞄の中にいても外が見えたり、外の音が聞こえるから分かるよ!」と答えた。……『見える』の?
「なぁユーリ。お前はどうやって見てるんだ?」
するとユーリは首を傾げ、「そこから見てるよ?」と腕輪についている目玉のような模様を指さす。
だが、そこには目玉のような模様はなく、ただの透明な石があるだけだった。
……。
そこ、もしかして模様じゃなかったのか?
俺は少しショックを受けつつ、この腕輪の秘密を1つ知ったのだった。
それから何日か経ち、年始のお披露目の日を迎えた。
この日は、王都民やこの日のためにやってきた国民の前に、王城のテラスから王族が顔を出して声明を発表するらしい。
俺は去年スノービークにいたから分からなかったけど、その時は「我々王族のうち、2人の王子と1人の王女が国立学校に入学をする」と発表したんだそうな。
だから学校の先生方は3人が入ってくる前に知っていたんだってさ。
そして今年はその王女とネシア国の第1王子であるアンドリューが両国の友好の証として婚約したという発表をした。
国民たちはどよめきながらも、2人の挨拶によって盛大な歓声が上がる。
俺たちスノーホワイトは王族の後ろでそれを眺めていた。
「……なあ、あの王女や王子、本当に変わったな。」
リッキーはそう言ってニヤリと笑う。
俺もニヤリとして頷いた。
そうだね、彼女達はいろいろな出来事があったけど、それを乗り越えて幸せを捕まえた。
まだすぐには結婚はできないが、それでも学校を卒業するまではずっと一緒だし、2人の心は傷つくことはないだろう。
俺はそんな2人を見て、国民と同じく盛大な拍手を送った。
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