514 / 529
第11章 冬休み編
ベビーダンジョン攻略 2
しおりを挟むとりあえず角に来た俺たちはそこで休憩を取ることにする。
俺はどうせ敵はこないと分かってはいても、先ほどのリッキーの話の通りに無駄に厳重に結界を何枚も張っておく。
そしてその中でテーブルを出して料理を始めた。
とにかく魔力をいっぱい消費できるように、水球を浮かべてその中でサラダ用のレタスなどを洗ったり、唐揚げを作るのにいつものIHコンロではなく土魔法を利用して作った竈に薪をくべて火魔法で火をつけたりなど、そこかしこで魔法を使ってみた。
お昼ご飯が出来上がって、皆に唐揚げ定食を作って出してやる。
リッキーは俺が作っている最中につまみ食いをしたようで、気づいた時には別のテーブルの上に置いた唐揚げの数が目に見えて数が減っていた。
……そんなにお腹空いていたのか?
とりあえずあんなに食べたのだからそこまでいらないか?とリッキーの皿には少しだけみんなより減らして盛り付けて出してみた。
「……シエルさんや。なんか俺の皿の唐揚げの数が少ない気がするんだけど、見間違いかな?」
渋い顔をしてリッキーが俺を見てそう言った。
おかしいなぁ……あんなに食べたのにそんなにお腹入るのか?
「いや、見間違いじゃないよ。だってリッキー、俺がまだ唐揚げを作っている最中に結構な数を食べたでしょ?だから少し減らしてみたんだけど……まだ食べられるようなら盛ってあげるよ?」
俺はリッキーに「でもあんなに食べてお腹入るのか?」と言うと、リッキーは眉間に皺を寄せてよく分からないといった顔で俺を見る。
「なぁ、俺はつまみ食いなんてしてないぞ?ずっとスコット達といたんだからな。」
「……えっ?」
「だから、俺はつまみ食いなんてしてないって言ってるんだよ。」
リッキーはそう言って真剣な顔で俺を見る。
でも……じゃあ誰があんなにたくさん食べたんだ?
ユーリもスコットさん達と常にいたのは話し声で分かったから違うだろ?
セバスはそもそもほとんど食事を取らずに俺の魔力だけで過ごしている。
だがリッキーは後ろにいるのを『見た』んだけどなぁ……?見間違いだったのか?
少し釈然としないが、とりあえず俺は唐揚げをたくさん揚げていたのでリッキーにも同数に盛り付けし直す。
「……なぁシエル。その『俺』、本当に俺だったのか?」
リッキーがおかしな事を俺に聞いてきた。
……どういう事?
「俺がお前の方を見た時にはお前しかいなかったぞ?なぁ、スコット?」
「確かにシエルしかいなかったな。実はみんなでお前がいつ『できたよ』と言うのかって話していたんだ。それに唐揚げのいい匂いがしていたしな。みんなで話しながらずっと見ていたんだ。」
リッキーとスコットさんがそんな事を言っているが……でも俺も見たんだよなぁ……。
とりあえず食事が冷めないうちに、と食べ始める。
あまりに美味しかったので、おかわりはみんなに何個ずつ行き渡るかと唐揚げの乗っている皿に目をやったのだが、そこには空の皿が。
「はぁ~!?どういう事っ!?」
俺は驚きのあまり、思わず叫んでしまう。
だって最後にリッキーの皿に盛った時はまだ山盛りの唐揚げがあったのだ。
それはみんなも見ていたのか、俺の声で視線の先にある空の皿を見て驚きの声を上げた。
「どういう事だ?いつの間にか皿が空になっているなんて。」
「……だな。俺もあの皿に唐揚げが山盛りになっていたのは見たから、すげえ驚いたんだけど?さっきから皆自分の皿の唐揚げを食べるのに夢中で見ていなかったけど、それでも誰も席を立ってないのは分かるだろ?」
リッキーは真剣な表情でみんなを見回す。
……そうだよね、確かに誰も席は立ってない。それは間違いない。
何だかこうも不思議な事が続くと、少し不気味なんだけど?
その時、ユーリが天井を見上げて首を傾げた。
「……そうなの?それは酷くない?だって僕たちの食事だよ?勝手に食べるのは盗っ人と同じだよ。欲しかったらきちんと言えばいいのに。」
ユーリは何やらそんな事を言いながら顔を顰めている。
……どういう事?
もしかして『あの人』が食べたがったのか?
俺はユーリにそう聞くと、「違うよ」と言われた。
「じゃあ、誰が食べたんだ?」
「それはね、このダンジョンのダンジョンマスターが食べちゃったんだってさ。それは見ていたから間違いがないらしいよ。」
「……。」
ユーリの話で、食べていたのがこのダンジョンのマスターだというのは分かったが、一体どうやって食べたんだろう?
すると突然ユーリが何もない空間に向かって「ねぇ、出てきなよ」と声をかける。
するとその何もない空間に、突如10歳くらいの小柄な子供が現れた。
その子はユーリの方を見てビクビクと怯えながら震えている。
「君、何か言うことない?」
ユーリは冷ややかな目でその子を見ると突き放すように言う。
……ユーリってたまにとても冷たい言い方するよね?
するとその子は怯えながらも「ごめんなさい、勝手に食べてしまって」と言って、ペコリと頭を下げた。
その子を見ていたリッキーが「こいつが犯人で間違いなさそうだ」と言った。
「こいつ、ずっと心の中で謝罪をしてるんだ。」
リッキーの言葉に、その子は恐怖の表情でリッキーを見た。
それを見てリッキーは「怯えさせるつもりはなかったんだがな」と苦笑いをする。
「っ!本当に、ごめんなさいっ!!あまりに美味しそうだったので1つだけ……と食べてしまったのですが、止まらなくなってしまって。申し訳なかったです……。」
その子は涙目になりながら、俺たち全員を見渡して謝ってきた。
「まぁ……悪い事をしたってちゃんと理解しているなら、もうやらないんだぞ?」
スコットさんは苦笑いをしながらそんな事を言う。
それを聞いたその子は「はいっ!もうしませんっ!」と言って、涙をぬぐった。
まだまだ子供のダンジョンマスターだ。
素直に反省もしているようだし、今後はちゃんとやれるよね!
155
あなたにおすすめの小説
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる