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第11章 冬休み編
ベビーダンジョン攻略 7
しおりを挟む現在、俺たちは2階層の休憩所へとやってきている。
本来の『休憩所』は5階層ごとのフィールドフロアにあるのだが、このダンジョンは1つの階層がめちゃくちゃ広い。
だから2階層毎に魔物が入ってこれない部屋を用意したのだ。
そこには自分自身が光る苔が天井から壁へとびっしりと生えているので、ダンジョン内では唯一ここだけ照明がいらない。
他の場所も光らせれば良いと思うだろうが、照明代わりの魔法を使っても結構な暗さの通路に煌々と光る入り口が見えれば、そこが安全な場所だとわかりやすいと考えたのだ。
ただ、この部屋にはそれしかないので、各自で水を用意しなければならない。
「なぁ、このダンジョンに来た冒険者達のためにも自動で水を湧かせる水飲み場を作るのはどうかな?」
俺はこの部屋に入って真っ先にそれを思いついた。
通常の休憩所にはその設備があるからだ。
「そうだな。さすがに水の供給元は必要だろう。でもそれってお前の魔力が切れたらどうするんだ?水の供給も止まるのか?」
リッキーが俺の隣で手早くテントを張りながらそんな事を聞いてくる。
「いや、とりあえずは何年か分の魔力供給を魔石で賄おうかと思ったんだけど……でも考えてみれば、ダンジョンマスターにもっと魔力を譲渡して、そういう設備を作ってもらえば良いんじゃないか?」
「あ、それもそうか。でも、どうやって頼むんだ?」
リッキーは困ったような顔で俺を見てそう言う。
「大丈夫、まずは魔力譲渡をしてっと……」
俺はそう言うと地面に両手をつき、今回は俺が魔力を地面に浸透させるように放出した。
しばらくそうやって魔力を放出したら、立ち上がって大きな声で「ユヴェール~!」と叫ぶ。
そんな俺を、隣にいるリッキーは困惑した顔で「何、叫んてるんだ?」と言った。
「なんだ、その『ユヴェール』ってのは?」
「それは僕の名前です!」
リッキーの言葉に答えたのはユヴェール本人だった。
リッキーは急に出現したユヴェールに相当驚いたらしく、飛び上がって距離を取った。
「……なんだ、お前か。それにしてもその『ユヴェール』ってのはいつづけてもらったんだ?」
「そっか!ダンジョンマスターの部屋でつけてもらったから、皆さん知らないんですね!僕の名前は『ユヴェール』っていいます。これからもよろしくお願いします!」
ユヴェールはリッキーにそう言ってから俺の方に向き直る。
「ところでシエルさん。魔力供給をした上で僕を呼んだってことは、何か頼みごとがあるんですね?」
ユヴェールは首を傾げて微笑む。
「そうなんだ。俺達で2階層毎に休憩所を……って話していたけど、こうやって実際に来てみて分かったことがあったんだよ。ユヴェールはまだここの管理を始めたばかりだから気づかなかったんだろうけど、実は他のダンジョンの5階層毎の休憩所には、魔物が入ってこない為の柵と結界の他に、ある物があってね。」
俺がそう言うと、ユヴェールは驚いた顔をした。
「そうなんですね!それは何ですか?」
「それはね……これなんだよ。」
俺はユヴェールに、水が滾々と湧き出る『水飲み場』を作って見せた。
「これは……ずっと水が流れていますね。」
「そう、これはずっと水が出続ける水場だ。人っていうのは食事を作るのにも、喉を潤すにもこの水が必要なんだよ。だからユヴェールにはダンジョンマスターの部屋に戻ったら、この水飲み場を各休憩所に創って欲しいんだ。」
俺がそう伝えると、ユヴェールは真剣な顔で「分かりました!」と頷く。
「もしさっき譲渡した魔力が足りなくなったら言ってね。また回復した分あげるからさ。」
「分かりました!足りなくなったらまた来ますね!」
ユヴェールはそう言うと笑顔で手を振って戻って行った。
「……お前、まるで『あいつ』みたいだな。」
「……ん?」
俺がリッキーの方を振り向くと、リッキーは苦笑いをして「何でもない」と言った。
その後、俺たちは作り置きや買い置きした食べ物を出して食べ、ユヴェールが「魔力が欲しい」と言ってこなかったので明日のために早々に休んだ。
そして順調に進み、5階層へ。
5階層はユヴェールも一緒に皆で話し合って『森のある草原』をテーマにフィールドフロアを作ってみた。
その時は大まかなことしか決めていなかったのだが、案外ユヴェールはセンスが良かったようで、とてもいい感じに森が配置されている。
そして、ダンジョンに潜って2日目の夜には5階層の休憩所に到着した。
どうもユヴェールは『休憩所』イコール『光り輝いている』と思ったらしく、フィールドフロアにあるこの休憩所も周りから分かりやすいように自己主張をしていた。
それと途中の4階層の休憩所には、俺がユヴェールに頼んだ水飲み場がきちんと作られており、ちゃんとユヴェールが約束を守ってくれた事にホッとした。
ちなみにここに至るまでに出た魔物は少数で、俺たちが先にどんどん進めるように、ユヴェールが戦闘を少なめにしているのは明らかだった。
あるいは、もしかしたら改装する事によって俺のあげた魔力が減りすぎるために、あえて今は魔物を出さないようにしているのかもしれない。
ともかく明日はこの5階層のボスと戦うのだが……ユヴェールはちゃんと俺たちのためにフロアボスを作ってくれているのだろうか?
そんな不安が少しよぎったのだった。
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