異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
519 / 529
第11章 冬休み編

ベビーダンジョン攻略 7

しおりを挟む

現在、俺たちは2階層の休憩所へとやってきている。


本来の『休憩所』は5階層ごとのフィールドフロアにあるのだが、このダンジョンは1つの階層がめちゃくちゃ広い。

だから2階層毎に魔物が入ってこれない部屋を用意したのだ。

そこには自分自身が光る苔が天井から壁へとびっしりと生えているので、ダンジョン内では唯一ここだけ照明がいらない。

他の場所も光らせれば良いと思うだろうが、照明代わりの魔法を使っても結構な暗さの通路に煌々と光る入り口が見えれば、そこが安全な場所だとわかりやすいと考えたのだ。

ただ、この部屋にはそれしかないので、各自で水を用意しなければならない。


「なぁ、このダンジョンに来た冒険者達のためにも自動で水を湧かせる水飲み場を作るのはどうかな?」

俺はこの部屋に入って真っ先にそれを思いついた。

通常の休憩所にはその設備があるからだ。

「そうだな。さすがに水の供給元は必要だろう。でもそれってお前の魔力が切れたらどうするんだ?水の供給も止まるのか?」

リッキーが俺の隣で手早くテントを張りながらそんな事を聞いてくる。

「いや、とりあえずは何年か分の魔力供給を魔石で賄おうかと思ったんだけど……でも考えてみれば、ダンジョンマスターにもっと魔力を譲渡して、そういう設備を作ってもらえば良いんじゃないか?」

「あ、それもそうか。でも、どうやって頼むんだ?」

リッキーは困ったような顔で俺を見てそう言う。

「大丈夫、まずは魔力譲渡をしてっと……」

俺はそう言うと地面に両手をつき、今回は俺が魔力を地面に浸透させるように放出した。


しばらくそうやって魔力を放出したら、立ち上がって大きな声で「ユヴェール~!」と叫ぶ。

そんな俺を、隣にいるリッキーは困惑した顔で「何、叫んてるんだ?」と言った。

「なんだ、その『ユヴェール』ってのは?」

「それは僕の名前です!」

リッキーの言葉に答えたのはユヴェール本人だった。

リッキーは急に出現したユヴェールに相当驚いたらしく、飛び上がって距離を取った。

「……なんだ、お前か。それにしてもその『ユヴェール』ってのはいつづけてもらったんだ?」

「そっか!ダンジョンマスターの部屋でつけてもらったから、皆さん知らないんですね!僕の名前は『ユヴェール』っていいます。これからもよろしくお願いします!」

ユヴェールはリッキーにそう言ってから俺の方に向き直る。

「ところでシエルさん。魔力供給をした上で僕を呼んだってことは、何か頼みごとがあるんですね?」

ユヴェールは首を傾げて微笑む。

「そうなんだ。俺達で2階層毎に休憩所を……って話していたけど、こうやって実際に来てみて分かったことがあったんだよ。ユヴェールはまだここの管理を始めたばかりだから気づかなかったんだろうけど、実は他のダンジョンの5階層毎の休憩所には、魔物が入ってこない為の柵と結界の他に、ある物があってね。」

俺がそう言うと、ユヴェールは驚いた顔をした。

「そうなんですね!それは何ですか?」

「それはね……これなんだよ。」

俺はユヴェールに、水が滾々と湧き出る『水飲み場』を作って見せた。

「これは……ずっと水が流れていますね。」

「そう、これはずっと水が出続ける水場だ。人っていうのは食事を作るのにも、喉を潤すにもこの水が必要なんだよ。だからユヴェールにはダンジョンマスターの部屋に戻ったら、この水飲み場を各休憩所に創って欲しいんだ。」

俺がそう伝えると、ユヴェールは真剣な顔で「分かりました!」と頷く。

「もしさっき譲渡した魔力が足りなくなったら言ってね。また回復した分あげるからさ。」

「分かりました!足りなくなったらまた来ますね!」

ユヴェールはそう言うと笑顔で手を振って戻って行った。


「……お前、まるで『あいつ』みたいだな。」

「……ん?」

俺がリッキーの方を振り向くと、リッキーは苦笑いをして「何でもない」と言った。

その後、俺たちは作り置きや買い置きした食べ物を出して食べ、ユヴェールが「魔力が欲しい」と言ってこなかったので明日のために早々に休んだ。



そして順調に進み、5階層へ。

5階層はユヴェールも一緒に皆で話し合って『森のある草原』をテーマにフィールドフロアを作ってみた。

その時は大まかなことしか決めていなかったのだが、案外ユヴェールはセンスが良かったようで、とてもいい感じに森が配置されている。

そして、ダンジョンに潜って2日目の夜には5階層の休憩所に到着した。

どうもユヴェールは『休憩所』イコール『光り輝いている』と思ったらしく、フィールドフロアにあるこの休憩所も周りから分かりやすいように自己主張をしていた。

それと途中の4階層の休憩所には、俺がユヴェールに頼んだ水飲み場がきちんと作られており、ちゃんとユヴェールが約束を守ってくれた事にホッとした。


ちなみにここに至るまでに出た魔物は少数で、俺たちが先にどんどん進めるように、ユヴェールが戦闘を少なめにしているのは明らかだった。

あるいは、もしかしたら改装する事によって俺のあげた魔力が減りすぎるために、あえて今は魔物を出さないようにしているのかもしれない。


ともかく明日はこの5階層のボスと戦うのだが……ユヴェールはちゃんと俺たちのためにフロアボスを作ってくれているのだろうか?

そんな不安が少しよぎったのだった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...