異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
36 / 529
第1章 出会い〜旅の始まり

閑話 山田の使命?

しおりを挟む
紫惠琉から会社に退職願を提出してくれと言われた翌日、早速簡単に書いて経理課の課長に持っていってやった。

課長からは案の定「沖くんから直接渡してこないのはとういうことだ?」と聞かれたが、「急に実家に戻ってこいと言われたらしく、もうこちらへは戻ってこれないそうです。」と答えておいた。

あとはなんとかしろよ、紫惠琉!

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

紫惠琉の退職願を出した翌日の仕事帰り、俺はなんとなく紫惠琉のマンションに行ってみようかな?という気になり、そちらに向かって歩いていた。

辺りは街灯もまばらな暗い道を歩いていると、崖に嵌まっている『古めかしいドアの建物』がある付近に差し掛かった。

建物の前まで来るとなんとなく窓から中を見たくなり、そして中を覗いたらそのままドアから入りたい気分になった。

思い切って中に入ると、いろんなガラクタみたいなのが所狭しと置かれている。
そこまで見てから俺は思い出した、
紫惠琉の言っていた「怪しい店の婆さん」の話を。

「ヒッヒッヒッ、この店にお客さんとは珍しい。何かお探しかね?」

急にそんな婆さんの声が聞こえて飛び上がりそうなほど驚いた。
声のする方を振り向くと、カウンター越しにフードを被った婆さんがこちらを見ていた。

「お婆さんは以前、背の高い男性にダチョウほどの大きさの卵と肩掛け鞄などを売ったりしませんでしたか?」

俺は思わずそう聞いてしまっていた。
すると婆さんは頷いて答えてくれた。

「ああ、半月ほど前に卵とカバン、首輪、あとバングルを売ったねぇ。なんだい、それを知っているってことは彼の知り合いかい?」
「はい、俺は彼の会社の元同僚で親友です。」
「なるほどねぇ~、それで彼からは連絡はあったかい?」
「はい、ついこの前電話で話しました。あいつは元気そうでした。」
「なるほど、少しは能力を使いこなしているんだね。でも鞄の方はまだまだって感じかな?これは新たな機能を付けないと活用してくれなさそうだなぁ。」

最初は婆さんと話していたはずなんだが、突然婆さん口調から違う口調へと変わり、声はしわがれ声から低い男性の声へといつの間にか変わっていた。

俺はどういうことだ?と訝しんでいると、その人物はフードを取った。
中からは想像していた婆さんではなく、紫惠琉みたいに『神聖』をイメージするような見た目の、白い服を着た若い男性があらわれた。

「……あなたは一体誰なんですか?」

俺が訝しげにそう言うと、相手は穏やかな顔で答えた。

「私はね、彼が今いる世界の『神』と呼ばれている存在だよ。」

本当は顔を見た時点でなんとなくそんな気はしていた。

だが実際に『神だ』と言われるとどうも疑いの気持ちが湧いてしまって、さらに紫惠琉に対するこの人の理不尽への怒りが増してしまった。

だって、そうだろう?
いつも顔を合わせて食事や会話をしていた親友が急にこの世界からいなくなってしまって、もう二度と会うことは叶わないのだから。
神ならば、俺や彼の家族に紫惠琉を返してほしい。

心の内側では様々な気持ちが吹き荒れていて何も言えずにいると、さらに向こうから話しかけてきた。

「実は君に頼みたいことがあるんだけど、お願いできるかな?」
「……何でしょうか?」

俺が怒りを抑えてそう答えると『自称神様』は嬉しそうに頷いた。

「実はね、向こうに行った彼が不便などしないようにといろいろ配慮したはずなんだけど、鞄はあまりうまく活用してないようなんだよね。だからもっと活用できるように機能を追加しようと思ってね。それのテスター兼彼の協力者になって欲しいんだ。」

そんな怪しげな申し出をされたが、どう考えてもこいつは自分のしたい事を断るはずがないと考えている。

俺は渋々申し出を受けると言うと嬉しそうに頷いた。

「ありがとう!じゃあ君にもこの鞄をあげるよ。この鞄はね、彼の鞄とつながっているんだよ。この鞄、彼にあげた鞄の能力と彼が異世界に行った時に手に入れた能力の複合技術でできているんだ。ホントは彼が編み出してくれるのを待っていたけど、まだまだ自分の能力も使いこなせてないし、まぁ無理か。」

苦笑いを浮かべ、『自称神様』はそう言ってため息をつく。

「とにかくそういうことだから、彼が向こうで手に入らないものをその鞄に入れてあげてね。そうすると向こうで彼が鞄から出せるから。送れる品は『何でも』、だよ。」
「……そんな言い方をするってことは、生き物も…ってことか?」

俺がそう聞くと、彼はにやりと笑う。

「その通り!生き物も送れるよ?それは彼の鞄の能力なんだ。向こうに行った生き物は、向こうで彼に鞄を開いてもらってまた中に入ればこの鞄に戻ってくる。でもね、注意してほしいんだ。この鞄で生き物を送る時は必ず、君が鞄を開くこと。君は向こうには行ってはいけないよ?」

俺はそれを聞いて少しがっかりした。
だって『生き物』が送れるのなら、『人』だって送れるはずなのだから。
それなら俺も行ってみたい、あいつのいる世界に。
そしてあいつと一緒に異世界を冒険するんだ!

……なのに、こいつは俺には行くなと言う。

「…君は、彼と同じ世界に行ってみたかったのかい?」

『自称神様』が俺にそう聞く。
俺は正直に頷いた。
すると彼は俺に言う。

「大丈夫、彼は向こうでは相当長い間生きているから、いつか会わせてあげるよ。」
「……本当ですか?」
「ああ、約束しよう。信じられないなら、今のうちに『約束』だけはしておこう。」

彼はそう言って、俺の頭の上に手を翳した。
するとその手が光っているのか、薄暗かった店内が眩く光る。

その光が収まると、彼は手を頭から離した。

「これで良し。人の子は数が多いからね。『目印』をつけておいたよ。」

彼はそう言ってニッコリ笑う。

「じゃあその鞄のこと、頼むね。君から違う人に託す時が来たら、その時は君の血縁には受け渡せるようになっているから。じゃあ、またね。」

もらった鞄に注意を向けていた俺が彼の言葉に顔を上げると、そこには何の変哲もないコンクリートの壁が広がっていた。

「……夢ではない、よな?」

俺は手元の鞄を見ながら呟く。
この鞄があるってことは、そういうことなんだと思う。
なら、確かめる方法は一つだ。

俺は思わず笑顔になり、近くにあるスーパーへと歩き出した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

お人好し転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! ものづくりチートでらくらく転生ライフ

かむら
ファンタジー
旧題:生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜  剣持匠真は生来の不幸体質により、地球で命を落としてしまった。  その後、その不幸体質が神様によるミスだったことを告げられ、それの詫びも含めて匠真は異世界へと転生することとなった。  思ったよりも有能な能力ももらい、様々な人と出会い、匠真は今度こそ幸せになるために異世界での暮らしを始めるのであった。 ☆ゆるゆると話が進んでいきます。 主人公サイドの登場人物が死んだりなどの大きなシリアス展開はないのでご安心を。 ※感想などの応援はいつでもウェルカムです! いいねやエール機能での応援もめちゃくちゃ助かります! 逆に否定的な意見などはわざわざ送ったりするのは控えてください。 誤字報告もなるべくやさしーく教えてくださると助かります! #80くらいまでは執筆済みなので、その辺りまでは毎日投稿。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

処理中です...