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第1章 出会い〜旅の始まり
出発当日 1
しおりを挟むなんだかよく寝たはずなのに、体が怠くて疲れが取れてない感じがするなぁ。
それが、朝起きて最初に感じたことだった。
それはまるでここしばらくなかった、日本での会社員時代の寝起きのようだ。
昨日は山田に連絡を入れた後から記憶がなく、どうやらスマホを手に持ったまま寝落ちしたらしい。
それだけ体が疲れているってことなんだろう。
そういえば昨日はみんな、どのくらいの時間まで飲んでいたんだろうなあ?
俺は元々酒には強くないので、日本にいた時は山田とたまに飲みに行くくらいで、ほとんど飲まなかった。
だから昨日も……まぁ、こっちでは子供に戻ってしまったからなのもあるが、飲みたいとも思わなかったので皆とは一緒にはいなかったのだ。
俺が朝起きてベッドの縁に座りぼんやりとしていると、掛け布団の中からユーリがもぞもぞと出てきた。
『ママ、おはよう!……あれぇ、なんか疲れてるぅ?』
首を傾げながらユーリがそう言うと、いきなりなんかの魔法を使った。
魔法の光は俺を包み、しばらくすると消えた。
するとあんなに怠かった体がスッキリとしている。
「もしかして今のユーリの魔法、俺の体の不調を治してくれたのか?」
『うん、なんかすごく辛そうに見えたからね!』
「……その魔法、俺も使える?」
『うん、ママも使えるよぉ!えっとねぇ、神聖魔法で「リカバリー」っていうんだよぉ!多分ママなら唱えるだけで使えるんじゃないかなぁ?』
「なるほど、リカバリー、ねぇ……今度みんなが体調悪そうなら使ってみようかな!ちなみに効果はどんな範囲?」
『えっとぉ……周囲の人みんなぁ?ちなみにこれは体の不調に効くからねぇ!』
なるほど……じゃあもし二日酔いに皆がなっていたら、ちょっと試しにやってみようか?
あ、神聖魔法って言っていたから、他の人がいないところ限定だね!
そんな事を話しているとドアがノックされた.
ドアに声をかけると外からリッキーさんの声で「朝飯食いに食堂行こう」と誘われ、俺は慌ててユーリに鞄に入ってもらい、外に出た。
するとそこにはリッキーさんの他に、二日酔いでグロッキーな姿の3人もいた。
そこで俺は皆に一旦俺の部屋に入ってもらい、先程ユーリが使ってくれたように「リカバリー」と唱えてみた。
すると俺の時と同じように皆の体を光が包み込み、すぐに消えた。
「あれ?なんだか二日酔いの気持ち悪さがなくなったような……?」
「ホントねぇ、あんなに辛かった頭痛もなくなっているわ?」
「シエル、何の魔法を使ったの?」
二日酔いだったスコットさん、エミリーさん、リリーさんが口々に言い、俺の方を見る。
「さっき俺もなんだか体調悪かったんですけど、急にユーリが魔法を使って治してくれたんで、何の魔法を使ったのか聞いたら神聖魔法の『リカバリー』とかいう魔法だったそうです。」
それを聞いて俺が部屋に戻って魔法をかけた理由に気づいてくれたようだ。
「そうか、なるほどな。俺達の二日酔いを治してくれてありがとうな!」
そう言ってスコットさんに頭をぐりぐりされた。力が強いよ、スコットさん!
それから俺たちは改めて食堂に向かったが、その途中でリリーさんが、目の前を歩いていたリッキーさんの髪を見て叫んだ。
「リッキー!?その髪の毛はいったいどうしたの!?」
すると前を歩いていたスコットさんとエミリーさんもリッキーさんを振り返った。
「なによ、リリー。いったいどうかしたの?」
「リッキーが……リッキーの髪が、ものすごくサラサラになって……とてもツヤツヤな髪になって……!」
なんだかよくわからない事を口走っているリリーさんは、相当混乱しているようだ。
「……落ち着け、リリー。これはシエルが使っていた液体石鹸のおかげなんだ。」
そう言って、まるでシャンプーのCMのように、髪の指通りを見せるかのごとく『サラ~ンッ!』と擬音が入りそうな仕草をした。
それを見て、リリーさんだけじゃなくエミリーさんとスコットさんも目を見開いて驚いた。
「す、凄いな、その髪。全然キシキシしてないじゃないか!?」
「そうよ!何、その指通り!」
「でしょ、でしょっ!!驚くわよね!?」
そんなリッキーさんを見て、昨日「明日は大変だな。」って言った意味がわかったよ……。
俺は3人に次お風呂に入るタイミングで使えるようにすると約束をして、なんとか予定通り食堂に向かった。
そして席に着き、みんなはカッツリ、俺は軽めに朝食をとった。
その際、頼んていた料理を受け取り、俺の鞄に入れる。
とても大きな寸胴鍋は使っているけど、それより一回り小さな鍋を1つと俺が日本て使っていた大きな鍋を1つ、タッパーをたくさん渡してあったから、かなりの量を作ってもらえたらしい。ありがとう、女将さん!
俺達は女将さんにお礼を良い、一旦部屋に戻り身支度や忘れ物がないかチェックをしてから受付に戻ってきた。
俺たちは料理と宿代を全て精算し、女将さんに今までありがとうという事とまた街に来たらよろしくという事を伝えた。、
「……少し、寂しくなるねぇ。いいかい、また元気に誰も欠けることなく、この宿に来るんだよ?それだけは約束しておくれ?」
女将さんは寂しそうだが、俺達の旅が無事にいられるよう願ってくれた。
やはり冒険者というものは危険な職業なんだろう。
「……わかりました、約束します。また、5人でこの宿に、料理がなくなった頃に戻ってきますよ。」
代表してスコットさんが女将さんにそう言ってくれた。
俺たちはみんな頷き、女将さんに「行ってきます!」と言い、宿を出た。
「さて、このままルーシェの所に行っても良いんだが、何か買うものとかあるか?」
俺はそう聞かれて、もう大きめの鍋が無い事を思い出した。
「じゃあ、もしだったらゴーダさんの所に行って鍋を買っても良いですか?宿の料理でほとんどなくなっちゃったので、旅の間の料理がなかなか作れなくなりそうなんで。」
「なるほど、確かに鍋は買い足したほうが良いかもな。じゃあゴーダおじさんの所に行こうか。」
それから俺達はゴーダさんの所に向かった。
ほどなくしてゴーダさんの店に着くとリッキーさんを先頭に店に入る。
「おっちゃ~ん!いるかぁ?」
またもやリッキーさんは大声でゴーダさんを呼ぶ。
ゴーダさんは奥の方から出てきて「どうした?」と声をかけてきた。
「いやね、鍋がちょっと足りなくなったから買いに来たんだよ。」
「なんだなんだ、あんなに鍋買ったのに足りないってぇのか?」
「宿の料理を鍋で作ってもらったから、普段遣いの鍋がなくなったんだよ。」
リッキーさんは苦笑いをしながらそうゴーダさんに答えた。
「なるほどな!」と手をポンと叩く、ゴーダさん。
俺たちは1番でかい寸胴鍋を2つ、それより少し小さい鍋を4つ改めて購入した。
流石にこれだけあれば十分……かな?
「でもまぁ、ギルマスの所に行く前にうちに寄ってくれて嬉しいよ。またこの街に来たら武器の手入れに顔を出せよ?……いいか、また5人無事に、ここに顔を出せよ?良いな?」
「ああ、絶対にまた5人で、無事にここへ顔を出すさ!安心してくれ。」
「……気をつけて行ってこいよ!」
ゴーダさんも寂しそうな顔をしていたが、リッキーさんの言葉を聞いて笑顔で俺たちを送り出してくれた。
……また、5人で元気に戻ってきます!
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