異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
124 / 529
第3章 スノービーク〜

黒い球

しおりを挟む
私はテネブル様にもらった黒い球を握りしめる。

私たち親子がここまで追い詰められてしまったからには、領主である兄のウォール共々、もうこの街の住人も滅びてしまえば良いのだ。

心の中が黒い感情で満たされた時、手の中の黒い球が勝手に私の魔力を吸い始めた。

驚いて手から玉を落としそうになったが、そもそもが手にくっついて離れないので落とそうにも落とせなかった。

「勝手に魔力を吸い出しているだと?いったいどうしたというのだ!?」

私は焦って黒い球を手から離そうと躍起になるが、何をやっても手のひらからは離れない。
その間ずっと私の魔力を勝手に吸い上げている。

「……父さん?いったいどうしたんだ!?」

どうやら私の異変に、近くにいたミストが気づいたらしい。
倒れていく私を抱きかかえて、ゆっくり地面に座らせた。

その頃には、私の魔力はもうほとんど残っていなかった。
私は朦朧とした意識の中、ミストにこの街のことを頼んだ。

もちろん、街が滅んだ後のことだ。

ちゃんと神聖法国の為に自分が領主になったとこの国の国王に宣言して、その上でその土地を神聖法国に譲ると宣言するのだ。

そんな事を薄れゆく思考の中で考えていたが、急に掌ごと黒い球が黒く発光し、発熱をしだした。

私はミストに抱えられていたが、危険だから離れろと言って横たえてもらった。

その光は段々大きくなっていき、しまいに私の身長より大きくなった頃、光の拡大は止まり、発熱は治まった。

するとその光の中から何かの鳴き声や吠え声が聞こえだしたかと思うと、『それら』は一気に黒い光から飛び出してきた。

光の中から飛び出してきたのは、様々な巨大な魔物たちだった。

その巨大な魔物たちが横たわっている私の手のひらの上から出てくるのだが、その度に下にいる私の体を踏みつけていく。
その度に灼熱のような痛みと熱を体に感じるのだ。

もう私の体はあちこち骨が折れて内臓が潰れており、助かる見込みはないのが自分でも分かる。

遠くに避難してもらったミストが私を助けようと近寄ろうとしていたが、しかし弟のフォグに危険だからと羽交い締めにされているのが見える。

そうだ、お前たちは安全なその場所で、近寄らずに見ていなさい。

私は声に出して言えたかも分からないが、そう呟いた。

そして次第に痛みも感じることが無くなり、意識も朦朧とし、目を瞑る。

すると、私の中から何かが抜けていくのを感じた。

それと同時に、私の生命の灯りも……消えた。


- - - - - - - - - -

(ミスト視点)

俺は父が倒れたのを抱きかかえて助けたのだが、父は何かの異変を感じて俺に避難の為に離れろと言った。

俺が渋々父のそばから離れた途端、父の掌から黒い光が出てきて、だんだんと大きくなっていく。

その光は、あっという間に巨大な黒い球体になった。

そして俺が避難完了したのを待っていたかのように、さらなる異変が起こる。

その光から無数の巨大な魔物が飛び出してきたのだ。

それらが下にいる父を踏んでいくのを見て俺は叫んで飛び出そうとしたのだが、弟のフォグにすんでのところで羽交い締めにさ れた。

「離せ!父さんのところに行って助けなければ!」

「兄さん、もう、無理だよ!あれを見てよ、無数に出てくる魔物の群れ!あんなのとは戦えないよ!兄さんまで失うのは、僕には耐えられない!」

フォグはそう言うと、泣きながら俺に抱きついて離れない。

弟を見て、それから父の方を見た。

体はあちこちひしゃげて、ちぎれている部分も多数ある。

確かに、あれではもう……父は生きてはいないだろう……。

父の変わり果てた姿を見て、俺は胸が潰れそうな気持ちになった。

なんで……なんでこんな事になったんだ。

俺は崩れ落ちながら、考える。

「あいつらか…?あいつらが俺たちを追い詰めなければ、こんな事にならなかったのか?」

俺は思わずそう呟く。
リッキーたちが俺たちを追い詰めたと。

だが……本当にそうか?

俺たちがやりすぎたから、その報いが今、来ているのではなかろうか……?

脱力した俺を、弟が抱きしめて支えてくれている。

今のところ黒い光から溢れている魔物たちは、俺たちがいる森の浅い場所からスノービークの街へと向かっている。

俺が黒い光をボーッと見ていると、そこから出てきた巨大な斧を担いでいる馬の顔をした二足歩行の魔物と目が合った。

「こんな所にもニンゲンがいたのか。」

その魔物はそう言うと、俺達の方へとゆっくり歩いてくる。

「兄さんっ!早く立って!逃げなくちゃっ!!」

フォグはそう言って俺を立たせようとする。

「……お前は逃げろ。俺はここにいて足止めをしてやるから。いいから逃げるんだ!」

俺はもう、心が折れてしまっていて立ち上がるのも億劫になっている。

せめて弟が逃げられる時間を稼ごうと、自分が使える攻撃魔法を魔力が尽きるまで放ち続けることにした。

「なんだ、魔法が使えるのか?面倒なやつだな。」

そんな事を言いながら、持っている巨大な斧を払って俺の魔法をかき消していく。

あぁ……これは無理だ。

力にこんなにも差があるとは……。

せめてフォグは逃がせただろうか?

俺は後ろを振り向くと、弟は俺を見つめてそこに佇んでいた。

「兄さん、死ぬ時は一緒だよ?」

弟は俺を見つめながら、微かに微笑む。

「そうか、一緒……か。それも良いな。」

俺もフォグを見つめて微笑む。

話すことのできる魔物は、もう目前。

俺は魔法を放つことをやめ、まだ成人しきれていない弟の体をきつく抱きしめる。

「フォグ、次に生まれ変わった時にも、俺と兄弟になろうな。」

「うん、そうだね、兄さん。」


俺たちは互いを抱きしめながら、目を閉じた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~

fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。 しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。 気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。 裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。 無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...