異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

大会1日目 2

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クーガーは部屋の中に入ると、室内をぐるっと見渡した。

そして室内に俺たちがいるのを見つけると、急に表情を変えて睨みつけてきた。

でもただそれだけで、いちゃもんをつけにこちらに来ることはなかったんだが……彼のその表情を見たその場にいた他の選手達は気まずい表情をして彼を見た後、俺達を睨みだした。

……あれ?

もしかして、ホントはそんなに俺達『人族』は獣人から嫌われていない?

昨日前大会優勝者のヒューザが俺たちにフレンドリーだった時、それまで睨んでいた獣人たちが驚いて彼に詰め寄って行ったのを見たが、もしかするとヒューザみたいにクーガーさえ認識を変えれば、今大会は無事に終われるんだろうか?

そっか、確かヒューザの弟は例の国で奴隷にされている可能性があるとみんな知っていたもんな。実際そうだったし。

もしかするとクーガーも兄がそうなんじゃ……と本人以外も思っているから、あの態度なのかもしれないね。

でも……どこにいるんだろうな、クーガーのお兄さん。

彼がこの国に戻ってきてクーガーに会えば、この状況は好転するんやじゃないか?って思うんだけど……。

誰か詳しいこと知っている人、いないかな?

……あ、そうだ!

例の国に捕まっていた人達、確か冒険者がいたよね!

かなり強い獣人だったって聞いてるから、もしかしたら噂とか聞いてないだろうか?


俺がそうつらつらと考えていると、頭をポン!とされた。

驚いて横を見ると、苦笑いしたリッキーが俺を見ていた。

「1人で考えすぎるなよ?あと、後で皆にも話を聞いてもらって、それから行動しような。」

「……わかってるよ。安心しろよ、1人では行動しない。」

「分かってるなら良いんだ、分かってるなら。」

リッキーがそんな事を言ってさらに頭をポンポンと叩いた。

……俺、そんな年じゃないんだけど!


そんなやり取りをしている間にかなり時間が過ぎていたようで、先ほどの案内係の人がやってきていた。

「それではお時間になりましたので、第1戦に出場される方は私についてきてください。あ、あと16番の方もご一緒に来てくださいね。」

そう言って係の人は部屋の外へと出ていった。

俺達の他にもう1人が一緒に部屋の外へと出る。

その人は身体がとても大きい熊の獣人らしき人で、ただ体がでかいだけではなく、かなり体を鍛えているマッチョさんだった。

うぅ……俺、どんなに鍛えてもこんな体にならなかったんだよなぁ。

せいぜいが細マッチョって感じだった。

せっかく異世界に来てまた子供に戻ったんだから、今度こそもっとガッチリした体型になりたいな。前世の兄さんみたいに!

部屋の外に出ると係の人が待っていて、3人揃うとまた先を歩き出す。

しばらく歩いて真っ直ぐ進むと、左の通路に曲がってさらにそのまま進む。

するとかなり先の方にでかい扉が見えてきた。

もしかして、あれが戦う場所に繋がっているのかな?



扉の前まで来ると、闘技場内のアナウンスが聞こえてくる。

「それではそろそろ第1戦目の試合が始まりますので、観客の皆様はそろそろ座席の方にお戻りください。」

……おぉ、もう始まるんだな!

自分が出るわけじゃないけど、ちょっとドキドキする!

「なぁ~に、お前のほうが緊張してんだよ!」

リッキーはそう言って肘で俺の横腹を突いた。

……そういうお前は全然緊張してないな。

「とりあえず頑張れ、リッキー。俺は試合後の出口で待ってるからな。」

「おう、頑張ってくるわ。」

その時外でまたもやアナウンスがあった。

「それではこれより今大会の第1戦目の試合を始めさせていただきます。まずは選手、入~~~場っ!!」

そう言われた後、目の前の扉が横にスライドして開いた。……押すタイプじゃないんだ。

「では試合に出られる方は中には入ってください。16番の選手はこちらへどうぞ。」

リッキー達は俺に手を降って扉の先へと向かった。

俺はそれを見送った後に係の人についていく。

どうやら退場はこちらから見えた反対側の扉の先になるみたい。

今通っている通路は観客席の下を通っているらしく、たまに頭上から音が聞こえる。

舞台をぐるっと囲うように通路があるようで、結構長いこと歩いてもう一方の扉のところに着いた。

……試合、どうなっているんだろう?


俺はドキドキしながら開いていた扉の中から舞台の方を覗く。

するとまだ舞台の上では2人は戦っている真っ最中のようだ。

俺が見たところ、相手の大剣とのリーチの差のせいでリッキーは相手の間合いの内側に入りきれていない感じだった。

そりゃそうか、相手は腕の長さも武器の長さもリッキーよりも長いもんね。

しかもなんでか素手で戦っている。……ゴツゴツの手袋みたいなのはめてるけどね!

でもリッキーは相手よりも素早さは上のようで、斬りかかられても軽くひょいと避け、たまに懐に入っては胴を殴り、また離れるを繰り返しているようだ。

それでもリッキーの一撃は意外と効いているらしく、 少しずつ相手の動きが鈍っている。

そして俺と目が合うと、ニッ!と笑った。

それを合図に、リッキーは一気に攻勢を強める。

大振りをした大剣を避けてまたもや懐に入ると、今度は一撃ではなくボクシングでいうところのジャブを連続でかなりの回数入れた後、とどめとばかりに強烈な右ストレートを鳩尾らしき所に決めた。

対戦相手はそれを受けると、立っていることは出来なかったらしく、そのまま後ろに倒れていった。

「あっ、そのままだと頭打っちゃう!」と俺が思った時、リッキーが対戦相手を支えて、ゆっくりと横たえてやった。……あ~、良かった!

それを暫くボーッと見ていた審判の人はハッとして、横たわっている選手に近寄り確認をする。

「ただいまの試合、1番の選手が気絶をしてしまったので、2番のリッキー選手の勝ちとなります!」

審判はそう宣言をすると、リッキーの手首をつかんで腕を持ち上げた。

その瞬間、観客席は歓声に沸いた。


「え~、先ほどの試合、リッキー選手の勝ちとなりましたが……彼はすごいですね!普通だと対戦相手が倒れて頭を打とうともそのまま見ていることがほとんどですか、彼は相手が倒れる前に支えてやり、ゆっくりと横たえました。彼はなんて優しい選手なんでしょうか!それにとても体格に差があるのにもかかわらず、圧勝したその強さ!彼はこの1戦で注目を浴びる選手の1人になることでしょう!」

場内に響く、このアナウンス。

俺はなんだか誇らしい気持ちで、こちらへとゆっくり歩いてくるリッキーを見た。

「どうだ、俺の試合ちゃんと見てたか?」

「ああ、途中からだけどな!最後、相手が倒れた時はヒヤヒヤしたよ。あのまま倒れたら頭打つのは必至だったからな。リッキーがちゃんと支えてくれて良かったよ。」

「まぁな。俺も『あの時』でかなりレベルが上がったから全体的に能力がアップしているらしく、素手じゃないと相手を傷つけてしまうからな。これでもかなり気を使っているんだぞ?」

俺とリッキーのやり取りを聞いていた案内係の人は感心した顔をしている。

「なるほど、リッキーさんはまだまだ力が出せるんですね?では明日の試合はその力を全て出して戦ったほうが良いと思います。明日の対戦相手はクーガー選手ですから。」


なるほど……明日はクーガーなんだもんな。手加減なんて言ってられないかもしれない。

明日も頑張れ、リッキー!!
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