異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

大会6日目 2

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闘技場の舞台入り口に到着すると、中からはいつもの様に席に着くようアナウンスが流れている。

そして暫くしてほぼ観客席が埋まると、再度アナウンスがあった。

「皆さ~ん!今日はお待ちかねの大会6日目です!ここからは本当の実力者だけが残れる領域ですので、試合も見ものだと思います!特に今大会は稀に見る試合が期待されていますので、これを聞いている選手の方たちも頑張ってくださ~い!ではでは、まずは今日の第1試合です!第1試合はAグループの優勝決定戦となります!こちらは前大会のグループ優勝者のクーガー選手と、期待の超新星シエル選手との試合です!お2人はある意味因縁の対決となりますが……この試合、どちらが勝利を掴み取るのか!まずはクーガー選手の入場です!」

それを聞いたクーガーは何も言わずに舞台中央へと向かう。

今までのように観客席に向かってにこやかな笑顔や手を振るようなことはせず、前方を睨みつけるような目で歩いて行った。

クーガーが中央まで着くと、またアナウンスが流れる。

「それでは、挑戦者、シエル選手の入場です!」

それを聞いて一歩踏み出そうとした時、背中に向かってスコットさんから「緊張しすぎるなよ!」と声がかけられた。……分かっているよ、兄さん!

そして、歩いている間にもアナウンスが流れる。

「今、歩いて中央に向かっているシエル選手は、大会始まって以来の最年少出場者となります!ですが、その実力はまだ未知数!今までの対戦相手では本気を出せなかったようですので、今回のクーガー選手との戦いで本気を見せてもらえるのかも楽しみですねぇ!」

ちょうどアナウンスが終わった頃に中央に着いたが、その時クーガーが「……本気なんて出させる前に倒してしまうがな。」なんて呟いた。

……まるで、俺に聞かせるかのようだな、こいつ。

俺はそれを聞いてイラッとはしたが、無視を決め込んだ。

こんな時に力加減を間違うわけにはいかないからね。

クーガーは武器を所持していないので、どうやらリッキーの時と同じく素手のようだ。

……しょうがない、さすがに゙素手相手に武器使用はあまりにも見た感じ悪印象なので、俺も素手で戦うことにする。

どうするかな……多分クーガーはリッキーと同じ技を使ってくる気がする。
それに対抗して俺も使うとして……胴体に使うのは無しだな。

「さて、舞台上に第1試合の主役が揃いました!見た目からして大人と子供という感じですが、両者ともに実力は確かです!さあ、両者のどちらに勝利の女神は微笑むのか!それでは……試合開始!」

アナウンスの合図により、俺とクーガーは互いに肉薄する。

先にこちらに仕掛けてきたのはクーガーだ。

まずは軽いパンチを素早い動きであちこちに打ち込んでくる。

俺はそれを受け流したり避けたりしてまともにパンチを受けないようにした。

そんな俺にだんだん苛立ちを募らせていくクーガー。

「てめぇは避けるだけしか能が無いのか!?」

クーガーは俺に挑発をかけるが、そんな誘いにはのらない。

だが奴のパンチが俺に効かないことをわからせる為にも一度くらいは受けたほうがいいのか?

そう考えた俺は、あえて相手のパンチに拳を打ち込んだ。

確かに奴のパンチには魔力が込められていて、俺の拳に当たると同時に魔力が腕に入ってきた。

だがやはりというか、全く俺に効果はない。……少し痛いけど。

そんな俺を見て、クーガーは目を見開く。

慌てて後ろに飛び退って、少し距離を取られた。

「そんな馬鹿な!何だか魔力の入り方がおかしかったぞ!?お前は一体何者なんだ!?」

「何者って言われてもなぁ。素直に答えるわけないじゃん。」

俺はスコットさんを真似て飄々と答えてみた。

するとクーガーは苦虫を噛み潰したような顔で俺を睨む。

「そっちから来ないなら、俺から行くよ?」

俺はそう言うと床を蹴って、一瞬でクーガーの側に行って回し蹴りを繰り出す。

クーガーは慌ててガードをするが、少しタイミングが遅かったらしく、横に軽く吹っ飛んで床に転がった。

だがダメージはそこまでなかったらしく、すぐに立ち上がりこちらに走ってくる。

それから互いにまたパンチの応酬をし、パンチを打ち当てる時に今度は俺のほうがクーガーの技を使ってみた。……もちろん、ごく少量の魔力だけど!

どうやら奴も魔力を流したらしく、相殺されて少量の魔力が流れただけのようでそこまでダメージはなかったようだが、その分、ものすごく驚いた顔をしている。

「なっ……!?貴様、一体どこでその技を!?」

「あんたのお兄さんに教わったんだよ!」

俺はそう言うと近距離での力を込めた回し蹴りを繰り出し、クーガーを吹き飛ばす。

クーガーが態勢を整える前に素早く向かった。
クーガーは慌てていたのか、それとも条件反射なのか、そばまで来た俺に向かってパンチを繰り出した。

今度はもう少し魔力を込めて拳にパンチをすると、しっかり効いたのか手首から肩までの骨が砕ける感触があった。

「ヤバい、魔力込めすぎた!」と思いはしたが、今は試合中なので治せない。

俺はクーガーの意識を刈り取るために、砕けていない方の腕を素早く掴んで思い切り床へと背負い投げを決める。

叩きつけた床にクーガーが少しめり込んで、床を壊してしまったようだ。

その代わり、その一撃でクーガーの意識を刈り取ることに成功した。

審判がすぐにやってきて、クーガーの状態を確認する。

「クーガー選手が意識喪失の為、シエル選手の勝利です!」

するとそれまで静まり返っていた闘技場内がもの凄い大歓声に包まれた。

「凄い試合でしたね!あまりの速さによく動きが見えない時もありましたが……本当に、凄いとしか言えません!……おっと、シエル選手、倒れて意識のないクーガー選手に近寄って治療を始めました!」

そう、アナウンスが流れている間に俺はクーガーの治療を開始したのだ。

まずは砕いてしまった腕の治療から。

意識がない時なら痛みは感じられないだろうから、意識を取り戻す前にとにかく全身の治療を完了しなければ!



意識を刈り取るために全力で背負い投げをしたので、どうやら背骨や肋骨も折れているようだ。

心の中でクーガーに謝りつつ、外傷や骨の治療だけではなく内臓の損傷も素早く治療する。

本当は全力でやれば一瞬なんだが、それをするのは何だか危険な気がしたのであえてしなかった。

全身の治療が完了すると、クーガーから穏やかな寝息が聞こえてきた。よしよし、これで安心だ!

それから俺は意識の無いクーガーを背負い、出口へと向かう。

そんな俺を見て審判は心配そうな顔をしている。

どうやらあまりの体格差で俺が潰れないか心配らしい。

審判には「力持ちですから安心してください。」と伝えて、歩き出す。

俺は入り口にいるスコットさんを見て目線を合わせると、とても良い笑顔で「よくやった!」と口パクで祝ってくれた。

ヒューザは少し驚いた顔で俺を見ていたが、すぐに隣のスコットさんをチラッと見て考え込んだ……ように見えた。


それから俺が出口まで向かうと、そこには闘技場の係の人が待っていて、クーガーを休ませる部屋に連れていくとのことだった。

俺はそのままクーガーをおんぶしながら係について行き、部屋に着くとベッドにゆっくりと寝かせてやった。

「シエル選手は出口の所で観戦するんですよね?クーガー選手の事は私たちに任せて行っていいですよ。」

係の人からOKが出たので、俺は出口の所に引き返した。
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