異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第4章 ネシア国〜

大会最終日 2

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俺達2人は会場の盛大な拍手や歓声の中、舞台中央へと向かう。

ふと視線を感じて出口の方を見ると、仲間みんなが俺たちを応援してくれていた。

……なんて心強いんだろう。

俺はスコットさんと一緒に歩きながら、一息吐くと気合を入れるために両頬を叩いた。

「……シエル、叩き過ぎじゃないか?真っ赤だぞ?」

……おっと、気合を入れるだけのつもりが、力を入れすぎたようだ。通りで痛いわけだね。


俺たちが舞台中央に来ると大歓声が鳴り止み、静寂が訪れる。

「会場の皆さんもこの2人の試合に期待しているようです!私も、この試合は目を離さず見ていたいと思うくらいですので、皆さんの心も同じでしょう!どうやら両選手共に同じ武器を手にしているようです!この国では珍しい、細身で僅かに曲線を描いた片手剣ですね!2人共に同じ武器ということは、両者の能力そのものが結果に現れると思います!……それでは、準備が整ったようです!よろしいですか?………試合、開始!」


俺達2人は合図と同時に互いに斬りかかる。
幾度も切り結んでは相手の剣を避けて離れ、また斬りかかる。

そうやって互いの隙を探しているんだけど、流石に兄さんには隙がない。

スピードでは俺が勝つんだけど、最小の動きで俺の剣を受け止めるのだ。

そうやって何度目かに離れた時、スコットさんから声がかけられた。

「流石にこれだけ打ち合うと、基礎能力の差が凄いのがよく分かるな。そんなお前とまだ対等にやれているのは、俺の長年の、それも『前』からの鍛錬の賜物なんだろう。」

俺はその言葉に頷いた。

確かにそうだと、俺も思う。

斬りかかるのは俺の方が何倍もしているが、そのスピードについていけているのは兄さんの努力の賜物だ。

「確かに兄さんの反応は凄いよ、ねっ!」

俺はそう言いながらまた斬りかかっていく。

それも兄さんは難なく受け止め、薙ぎ払ってきた。

俺は力があるからそれでバランスを崩すことはなく、その刀を受け流して力の向きを変えつつ、再度斬りつける。

だがあまり力を込めすぎると、万が一受け流された場合に対処が遅れるので、ここぞという隙ができるまでは全力斬りはできそうにない。



さらに暫く斬り合いが続いていると、流石の俺たちも息が切れてきた。

「ハァ、ハァッ……兄さんも、もうそろそろ限界が近いんじゃないの?」

「……お前こそなっ!」

俺達は鍔迫り合いをしながら会話した。

互いに肩で息をして、疲弊しているのは明白だ。

「……次で最後、かな。受けてみるか、一子相伝の技の1つを。」

そう言うと、兄さんは力を込めて俺の刀を押し返す。

俺との距離を少し空けると、刀を上段に構えた。

俺はそれを受けるため、刀を中段に構える。



実は俺、実家で刀の扱いなどを習いはしたが、『技』と言われるものは一度も習ったことはなかった。

どうやらそれは後継者と認められた者のみが教えてもらえる、『一子相伝』というやつらしい。

結局俺はその存在を知ってはいたが、教えてもらうことはなかった。

今回兄さんから、その『技』というものを体験させてもらえるようだ。

お互い、もうこちらの世界に来ているのだから、教えてもいいだろうとの考えなのかな?


俺が真剣な面持ちで兄さんを見ていると、急に兄さんが消えたように見えた。

いや……正確には『俺の目は追えるのだが、体が動けない』ほどのスピードで一気にこちらに肉薄してきたのだ。

そしてその上段に構えた刀を残像が残るほどの速さで振り下ろす。

俺は辛うじて刀の腹を使って兄さんの刀を防いだ……はずだったのだが、どうやらそれは囮だったらしい。


本命としては、俺が受け止めるように刀を構えだした時点で、兄さんの刀は方向を変えて弧を描きながら俺の横っ腹に当たる位置に一瞬で移動したのだ。

そのまま横薙ぎの状態で振り切れば、俺の腹は刀で容易く切り開かれていたことだろう。

スコットさんは俺の横っ腹に寸止めをして、それでも惰性でコツンと当たりはしたが、俺がけがをするような事はなかった。

それを見て審判は駆け寄り、声高らかに宣言する。

「この勝負、横腹への寸止めにより、スコット選手の勝利です!」

その瞬間、固唾を呑んで静まり返っていた会場が、割れんばかりの大歓声に包まれた。

「凄いですね!本当に、凄い試合でした!途中、あまりの速さの剣の打ち合いにより見えない時もありましたが、それよりも先ほどの一撃は凄かったと思います!この1戦は、大会の歴史に残る名勝負となることでしょう!この試合を見られた会場の皆さんはとても幸運でしたね!」

アナウンスもそう言って讃えてくれた。

俺とスコットさんは目を合わせて頷くと、出口で待っている皆を手招きして呼ぶ。

皆はそんな俺たちを見て不思議そうにしていたが、リッキーだけはニヤニヤとしてから皆に声をかけ、俺達の方へと連れてきてくれた。

「優勝おめでとう、スコット!それにシエルくんも頑張ったね!とても素晴らしい試合だったよ!ギルドをサボ……んっん!!午前中で済ませて来たかいがあったね!」

こちらに来てすぐにルーシェさんがお祝いの言葉をスコットさんに言うと、みんなも口々に祝ってくれた。

「おっとぉ~、舞台上では両選手の仲間らしき人族達が勢揃いしたようです!仲間からのお祝いの言葉を嬉しそうに受け取っていますね!……あれ!?急にスコット選手が膝立ちになりました!目の前には……女性がいますね!これから何が始まるのか!?」

そう、アナウンスの人が言ったように、スコットさんはエミリーさんの手を引くと舞台中央の開けている場所へと連れて行った。

そして中央に彼女を立たせると、自らは片膝をついて彼女を見上げる。

エミリーさんは何が何だか分からず、驚いていた。

そんな彼女の手を取ると、スコットさんは真剣な顔で見つめた。

「エミリー、この大会で優勝できたら言おうと思っていたんだ。……今まで、本当にいろいろあったが……俺と、また結婚してくれないか?」

「……っ!」

そしてスコットさんはマジックバッグから小さな箱を取り出した。

そして開くと、彼女の方へと向けた。

中にはまるでブラックオパールのような石がはめられている指輪があった。


「……受けとってくれないか?」

「……はい。」

エミリーさんは指輪の入った箱を受け取って、大粒の涙を流しながら立ち上がったスコットさんに抱きついた。

スコットさんはエミリーさんから指輪の箱を受け取ると、その指輪を取り出してエミリーさんの左の薬指にはめてあげる。

どうやら魔道具らしく、指を通すと指にフィットするように縮まった。

「おおっと!舞台上に両選手の仲間が上がったと思ったら、スコット選手の突然のプロポーズが始まりました!その結果はご覧のとおり、成功した模様です!おめでとうございます、スコット選手!」

どうやら観客たちも帰らずに、黙って2人の成り行きを見守っていたようだ。

プロポーズが成功したと分かると、会場は盛大な拍手に包まれた。


おめでとう、2人とも!

前世から引き続き、今世も幸せになってね!
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