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第5章 再度、スノービーク〜
気に入ってくれるかな?
しおりを挟む俺たちは揃ってリオンさんの家の中へ入り、リビングへと通された。
「で、どうしたんだ?急にまた来るなんて、なんかあったのか?」
みんなが椅子に座って落ち着いた頃、ヒューザが代表して俺に聞いてきた。
「実は俺、この前闘技場で降ってきた例の石を使ってアクセサリーを作ってきたんで、それを渡しに来たんですよ。」
「お前、戦えるだけじゃなくて魔導具師でもあるのか!?すげぇな、多才で!」
俺がテーブルの上にネシアで渡そうと思って作ってきたブレスレットを取り出しながらそう言うと、ヒューザはとても驚いたようだ。
……まぁ、大会で準優勝者が魔導具師、なんて確かに驚くよね?
とりあえず今ここにいる3人にたくさんあるブレスレットの中から気に入ったものを選んで取ってもらい、残りは避難民の中でも俺たちと関わりの深かった人達に渡してもらうよう頼んだ。
例えばパニアさんの仲間とかヒューザの弟、避難民の代表者とかね。
「良いのか、こんなすげぇのを貰っちゃって?」
ヒューズは早速腕を通してブレスレットが自分のサイズに縮んだのを見て「おぉっ!?」と驚きつつ、嬉しそうな顔でそう言った。
「良いんですよ、そのために作ったんですから。性能は今のようなサイズ調整機能と回復魔法の自動発動ですかね。瀕死の状態からすぐに回復するほどの回復魔法ではないので、そこは気をつけてくださいね。せいぜい骨折がすぐ治る程度ですので、過信しないようにお願いしますよ?」
「それでもすげぇよ!骨折がすぐ治るなんて、普通の回復術師より段違いでこっちのほうがすげぇよ!」
「……こんな性能の良い魔導具、貰っちゃっていいのか?」
ヒューザは手放しで喜んでくれたが、パニアさんはなんだか申し訳なさそうな顔でそう聞いてきた。
「良いんですよ。みんなが無事に過ごせるように、と思いながら作ったんです。もったいなくて着けられないなんて言わないで、ヒューザさんのように着けちゃってくださいね!」
「そうだぞ、それが作ったやつに対する俺たちができる最高のお礼だ!」
ヒューザはそう言ってニカッ!と良い笑顔でポーズを決めた。
……清々しいほどの態度だね!歯磨き粉のCMが来そうだ。
「ところで……これはクーガーの分はないんだろう?」
パニアさんが苦笑いをしながら俺に聞いてくる。
あの時リッキーを瀕死に追いやり、俺が激怒したのを知っているから、そう聞いてきたんだろう。
それに、リッキーの身内が来ているから『何で』の部分は口には出さなかった。
出したらウォールさんも相当怒って、ネシア国に対して嫌なイメージを持ってしまうというのが分かっていたからだろう。
「……そうですね、彼には正直あげたくはないです。」
「だろうな。俺でもあげたくないって思うだろうさ。」
「ちなみに今も彼は失恋を引きずっています?」
俺がクーガーの近況を聞くと、パニアさんは肩を竦めて苦笑いをした。
「あいつ、長年の恋心を忘れるために、最近は体を今まで以上に鍛えだしてな。やばいぐらいのストイックさだ。獣人は筋肉がつきやすい種族だから、今のアイツに会うと驚くぞ?前の体型からさらにゴツくなってゴリラ獣人みたいになっちまった。あれで素早さが上がれば良いんだろうが……筋肉って重いから速さは落ちたんじゃねぇかな?」
「えっ、そんなについたんですか!?まだ一週間経ってないですよ?獣人って、そんなに筋肉つきやすいんですか!?」
俺はあまりの衝撃に、開いた口が塞がらなかった。
だって以前見た時には引き締まった身体で、かなりの素早さがあったんだよ?
それがゴリラみたいな身体になったって……顔はピューマで身体がゴリラって、ちょっと違和感あるねぇ。
「ああ、面が人型じゃないやつほど筋肉がつきやすいから、俺よりパニアやクーガーのほうが筋肉がつきやすいんだ。でもだからって、無闇につけたって意味ねぇんだよ。要は自分の戦闘スタイルに合わせた筋肉のつけ方をしなければ大会では負ける。……あいつ、大丈夫かねぇ?」
「……まぁ、もしかするとモテるために筋肉つけてるんじゃないか?獣人の女にはゴツいほどモテるからな。あいつもラブがこの国にいた時は今と同じく鍛えていたし。……大会、出るのかねぇ?」
そんな事をヒューザとパニアさんが話している。
リオンさんは話に加わらず、苦笑いをするだけだ。
……なるほど、クーガーのそれは、新しい恋を探すため……なのかな?大会で勝つためではなく。
あそこまでラブさんが酷く言うとは思わなかったから、連れてきた俺たちにも少しは責任あるとは思うが、「運命の番」っていうのを甘く見ていたクーガーにも問題があったと思うんだ。
でもあの時の事は申し訳ないとは思ってはいる。
……だからといって、ブレスレットはあげないよ?
俺はあえてパニアさんに「クーガーにはあげないで」と改めて伝えておく。
もちろんパニアさんは了承してくれたよ。
「そういえばこのブレスレット、大会では身につけてはダメな装備ですか?」
「ああ、それがあったな。う~ん……多分怪我を治すだけなら問題はないと思うが、一応聞いておく。本来の大会は、いかに相手をあまり怪我させずに勝利するかが重要視される。お前達が出た大会は異例中の異例だったから特別ルールもあったしな。……そうだな、もしこのブレスレットがあれば大会中の怪我もすぐに治せるからとても役に立ちそうだ。もし闘技場の大会本部から注文が入ったら同じものを作るのは可能か?」
大会について話していたヒューザが俺にそんな事を聞いてきた。
確かにこんなアイテムがあるって分かったらどこで買えるんだってきかれちゃうよね。
でもあの石がたくさんあるって言っても、大会に出るのは30人以上でしょ?足りなくなるんじゃないかな?
その事をヒューザに伝えると、「魔石で変わりに作ることは可能か?」と聞かれたが、まだ魔石で作ったことないから分からないんだよね。今度試してみようかな?
その後ウォールさんたちから気になった獣人についての質問があり、それを丁寧にリオンさんやパニアさんが答えてくれた。
3人ともだいぶ勉強になったみたいで、ホクホク顔だったよ。
ヒューザは結局最後までブレスレットに夢中で、全く3人の話を聞いてなかったんだよ?
どんだけ気に入ったのか、って感じだよね!
それからしばらく雑談した後に3人とは玄関でお別れをし、街の中を観光して回った。
もちろん闘技場やその周りの屋台なんかも楽しんで、シェリーさんへのお土産も買ったよ!
そしてたっぷり楽しんだあと、ネシアからの帰りは入国と同じく門から出国し、門番の目の前でスノービークへと転移して戻ってきた。
3人からは「真夏から真冬へと一気に戻った」と笑いながら言われ、とても貴重な体験をさせてもらったと喜んでもらえたよ。
他にも見たことある街とかにも、向こうの許可がもらえたら連れていきたいな!
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