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第6章 王都近くのダンジョン編
『変換期』はまだまだこれからなんだね
しおりを挟む俺はちょっと気になったのでこの場にいる人たちに聞いてみた。
「ちょっと聞きたいんですが、『変換期』ってあとどれくらい続きそうですか?」
「そうですねぇ……一概に言えないんですが、大体2週間位と言われています。ですがこのダンジョンの場合はまだまだ始まったばかりという感じなので、本格的に始まってから2週間ですかね。多分君たちがこのダンジョンを出る頃からが本格的な『変換期』に入ると思います。」
俺の質問に答えてくれたのはルークさんだ。
そっかぁ……まだこれでも本格的じゃないんだね。
「本格的に『変換期』に入るとここまで余裕は無くなるだろう。だから今のうちに数が増えないようにしていかないと後がきついんだ。」
そのグラスさんの言葉になんとなく引っかかった。
まるで『経験者』のような口ぶりだったからね。
「もしかしてグラスさんは『変換期』を経験したことあります?」
俺の言葉にグラスさんは苦い顔をしながら「あるぞ」と答える。
「前回の『変換期』に駆り出されたんだが、その時の俺はまだ駆け出しの兵士でな。危険だからと低階層を任されたんだが……弱い魔物でも量がいるとあんなに危険なんだと、身を持って感じたよ。あの時一緒の階層にいた同期の中でも何人かは腕を持っていかれたり、足を持っていかれた奴はいたが、幸いにして命を持っていかれた奴はいなかったよ。だがそれで軍を辞めざるをえない奴やその時の事が忘れられないほどの恐怖だった奴が辞めていっていたな。」
グラスさんは遠い目をしながら、その当時のことを話してくれた。
「そうですねぇ……私もあの時は中堅の魔法師だったので、もう少し低階層でしたが参加したんですよ。私たちのいた階層では怪我をしても回復魔法が使える魔法師が何人もいたので手足を持っていかれた人はいなかったですね。そういう意味では低階層は危険が伴うんですよね。一緒にいる魔法師も回復魔法が使えるものは僅かですし。」
なるほど……低階層では能力の低い人達が集められるんだね……。
俺はそれを聞いた後で少し考えて、また元の場所に戻ったら作ろうと心に決める。
そうなると……魔石が足りないかな?
やっぱりこのフロアのボスは何回か倒さないとならないね。
それから俺たちのチームはまたボス部屋の近くへと転移で戻る。
するとボス部屋を見て首を傾げたルークさんが俺の方を振り向いた。
「どうやらもうボスが復活したようですよ?すごく早い復活ですが、これも『変換期』の影響ですかねぇ?」
なるほど、もう復活したんだ。
でも好都合だね!
俺は先ほどと同じ様に右手に超圧縮した火魔法を用意してからボス部屋へと入る。
すると中央でまたもや光が生じ、大きくなって先ほどと同じボスへと変わった。
それが俺を認識したとたんにこちらへと猛スピードでやってくる。……いつ見ても恐怖を感じるよね。
間近まで来たところで結界を張り、その中から用意していた魔法を放つ。
すると先ほどと同じ様にぶつかった所から弾け飛んでしまった。
次の瞬間、ボスは巨大な魔石1つと毛皮、そして小さな人形?がドロップされた。……なんだ、これ?
俺はそれらを拾い集めると部屋を出て、ルークさん達にドロップ品を見せる。
「魔石と毛皮は先ほども出ましたが……この人形は何でしょう?」
人形を手に取りながらルークさんはそう言った。
おや、ルークさんでも見たことなかったんだね。
とりあえず後で鑑定してみよっかな。
俺は手に入れた魔石を早速加工し始める。
あとは魔法を入れるだけ、という状態までもっていったところでそれを5分割して丸める。
しっかりとヒビが入らないように、滑らかな表面になるようにと綺麗に作る。
5個とも出来上がると、今度は魔法を入れる。
「5個も作ってどうするんですか?」
俺が魔法を入れようと魔石を1つ手に取ると、そばで見ていたルークさんが声をかけてきた。
「さっき聞いた話で思いついたことがありまして。」
「何でしょうかな?」
「それは出来上がってからのお楽しみ?です。」
俺はルークさんにそう言うと、早速魔石に魔法を込めた。……どうせなら強めに入れるかな!
魔石に1つ、2つ、3つ……と魔法を込めていくと、隣で見ているルークさんが徐々にうずうずしていくのが分かる。もう少しだから待ってね?
5個全部終わると、ルークさんに「触って良いですよ」とOKを出した。
すると早速その中の一つを手に乗せ、あちこちの角度から魔石を眺めている。
「これは……もしかして?」
ルークさんは魔石を握りしめたまま、俺の方を見た。
どうやら中に込めた魔法がどんな種類なのか分かったんだろう。
俺はにっこりと微笑み、ルークさんに答えを教える。
「そうです。もう分かっていると思いますが、この中には神聖魔法での回復魔法が込められています。」
するとルークさんは「やっぱり!」と言ってまた魔石を観察し始めた。
「この中の魔法はただの回復魔法じゃないですね?もしや……?」
ルークさんは期待した目をキラキラと輝かせて俺を見た。
「そうですね……たとえ手足を無くしたとしても全回復できますよ。」
俺は苦笑いをしながらそう答える。
するとルークさんはとっても嬉しそうにはしゃぎだした。
近くにいなかった3人もその様子から近寄ってこようとしたので、「大丈夫だから」と言って離れてもらった。
そう、この5個の魔石には俺たちスノーホワイト用に作ったネックレスと同等の魔法が入っている。
ただ違うのは自動的に回復をしてくれるものではない、というだけだ。
この魔石にはかなりの魔力を込めてあるので、2週間ほどは魔力を充填しなくても使えるようになっている。
グラスさんの話を聞いて、できることならまだ若者なのに絶望の人生を歩むしかなくなる事だけは避けてあげられたら……と思ったのだ。
まだ入り口に近いところならば1つの階層の面積がそんなに広くないので、この魔石1つでも十分だと思う。
俺はルークさんにこの魔石を作った経緯と配布先を伝え、もちろんのことだが、この魔石の作成者を他の人には内緒にしてもらうことも頼んでおいた。
そうじゃないと変な争いが起きるのも嫌だったからね。
これでこのダンジョンの中を命がけで戦っている軍人さんが、無事に帰還できるようになると良いな!
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