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第7章 新しい出来事
今夜は七夕だね?
しおりを挟む「……シエル様、到着しましたよ。」
俺はそう声をかけてきたセバスの声でハッとして目が覚めた。
目を開いて辺りを見渡すと、馬車の中でまだ眠っている5人の姿があった。
……良かった、何事もなかったんだね。
俺はホッとしてセバスを見る。
「いやぁ~、俺もかなり疲れていたのか眠ってしまっていたようだよ。」
俺は照れたようにそう言う。
するとセバスは首を振り「いえ、しょうがないと思います」と真剣な顔で言った。……どういう事だろう?
「実はシエル様が眠ってしばらくすると馬車も停まったのですよ。何事か?と思ったら御者まで眠っていました。多分何かしらの魔法が使われていたのではないかと推測されます。その直後、正体不明の黒い服を着た者が近づいてきたのですが、シエル様が眠られる直前に張られた結界のおかげでこちらへは何もできなかったようです。暫くはねばったようですが、諦めて去っていきました。本当にあの眠る直前のシエル様の判断は流石ですね。」
なるほど……そんな事があったんだね。
っていうか、セバスは何ともなかったの?
「今は人型をとってはいますが、私の本来の姿は聖獣ですので精神に作用する魔法は効かないんですよ。それに元々睡眠はあまり必要ありませんので、なおさら眠気は訪れません。……ちなみにユーリ様は魔法ではなく、疲れて眠っているだけですよ。」
そっか、セバスはこういうのは効かないんだね。
それは頼もしい限りだ。
「とりあえず黒服の人物が去ってから私は御者を起こし、屋敷まで戻ってきました。……ただ、もしかするとこの馬車をつけられていたとすれば、我々の滞在先や誰なのかが相手側にばれてしまったでしょう。何か対策を取らないいけないと思われますが、どういたします?」
「なるほど、その可能性はあるね。」
俺達が学校に行っている間に何かあったら困るし、結界でも張っておくか?
……一応、リッキーに断りを入れてからにしよう。
それから俺達は眠っていた皆を次々起こす。
ユーリは俺がおんぶする事にした。
疲れて寝てるって言ってたしね。
屋敷の中に入って執事さんに帰宅を告げる。
夜も遅いのですぐにそれぞれの部屋へと向かう。
その途中でリッキーにリーシェさん宅からここに着くまでの話をすると、「屋敷の者とミスト達と俺達だけ入れる結界を張れるか?」と聞いてきた。それだけでいいの?
「でもそれだと荷物を持ってきた人とか困るんじゃない?」
「それは門番が受け取れば良い。まずはこの屋敷とそこに働いている者の安全が第一だ。」
「了解。じゃあ部屋に行ったら早速張るよ。」
「……その前に怪しい奴がいないかだけは調べておけよ?お前なら索敵魔法の応用でなんとかできるんじゃないか?」
「……善処する。」
俺はそう言ってリッキー達と別れて、3人で自分の部屋へと戻る。
俺はおんぶしていたユーリをそっとベッドへと寝かせる。
「しっかりと眠って回復しろよ?」
俺はそう言ってユーリの頭を撫でてやる。
するとくすぐったそうにしながらも少し微笑んだ。
すると突然スマホから着信の音がする。
俺は慌ててユーリを見たが、起きる素振りはないようだ。
ホッと胸を撫で下ろしてスマホを見ると、日本にいる兄さんからの着信だった。
もちろん直ぐに電話に出る。
「どうしたんだ、兄さん?」
『どうしたも何も、お前全く連絡よこさないからみんな心配してるんだぞ?忙しいのかもしれないが、せめて「生存確認」の連絡ぐらいよこしなさい。』
……怒られてしまった。
確かにこのところ忙しくてリッキーにしか連絡してなかったな。ごめん、みんな!
「……で、それで連絡したの?」
『いや、それはついでだ。本題は悠馬がもうすぐ夏休みだからそっちに遊びに行きたいんだとさ。それが可能かどうかを聞きたかったんだ。』
なるほど……って、悠馬が来るの!?
スコットさんとエミリーさんは会えたら嬉しいんだろうと思うけど……どうなんだろう?大丈夫かな?
『あと、少しだけだが、今そっちに行ってみたいんだとさ。今、危険はなさそうか?』
「えっ、今来るの!?」
『っていうか、もう鞄の中に入ってる状態だ。』
……マジかぁ。
これは取り出さないっていう選択肢は無いな。
「分かった、じゃあ少しだけだよ?」
『ああ、少しだけでいいよ。少しそっちを体験したら戻ってくるように、しっかり言っておいたから。』
それなら良いかな……?
とりあえず俺は兄さんとの電話を切り、鞄に手を突っ込む。……これか?
俺は鞄の中の人の手を掴み、外へと引っ張り出す。
出てきたのは俺と同じくらいの男の子。
髪色も、同じ銀髪。目の色もほぼ同じだ。
彼は俺の兄の子、つまり俺にとっては甥に当たる子なんだが……この世界では同じくらいの歳だからまるで双子のようだ。
「……え?紫惠琉にぃに……なの?」
自分と手を繋いでいる同じ年格好の、自分とそっくりな俺を見て、悠馬は目を丸くしている。
俺はそんな悠馬に苦笑いだ。
……ホント、俺と似てきたな。
「いらっしゃい、悠馬。それにしてもお前、年々俺に似てきてるな。」
俺はそう言って、同じ背格好の子の頭を撫でる。
すると悠馬は頬を膨らませてムッとした顔をする。
……俺、あんな顔をしてるんだ……?
なんか若干ショックを受けてしまったが、平静を装う。
「それにしても紫惠琉にぃに、歳が若返ったとは聞いていたけど、まさか同じくらいの歳になっているとは思ってなかったよ。」
「……まぁな。俺自身も驚いてるよ。それはそうと、お前夏休みに入ったらこっちにずっといて過ごすんだって?」
「あ~……父さんから聞いたんだ?」
「ああ、さっきな。」
「そうなんだ。そう、夏休みにこっちで過ごしてみたいんだよ。……良いかな?」
悠馬は俺に向かって上目遣いで見上げて頼みこむ。
……なんか見え方が違うな。以前とは背の高さが違うからか?
「とりあえず今夜はもう遅いし、俺の顔を見るだけにしとけよ?後日、俺の仲間を紹介するから。」
「え~~~~っ!来たばかりなのに、もう帰れって言うの!?ひどいよ、紫惠琉にぃに!」
悠馬は俺の胸元を掴んで揺さぶってくる。
お…おぃ、そんな揺さぶると気持ち悪い……。
「……?にぃにが2人いる……?」
俺と悠馬がすぐ間近にいるのを見て、うるさくて目が覚めたらしいユーリがそう呟く。
「……え?誰、その子?」
悠馬が声のする方を見て、驚いた顔をする。
……とりあえずはユーリに紹介するか。
俺は悠馬を連れてユーリのところまで行く。
「ユーリ、こいつは俺の甥……つまり俺の兄の子だ。名前は悠馬っていう。それにしても、まさかこんなにそっくりになってるとは思ってなかったよ。」
俺の説明にきょとんとしているユーリ。
……寝起きだから頭に入ってこないのかも。
それでも何とか理解したらしく、「じゃあ、あの2人の子ってこと?」と聞いてきた。うん、理解したな。
「そう、あの2人の子だ。彼らには後日会わせるが、今はもう遅いし無理だからな。」
「なるほどねぇ~。」
ユーリは俺の説明にうんうんと頷いている。
そんなユーリを悠馬は凝視している。……見過ぎだよ、お前。
「悠馬、この子は俺のパートナーのユーリっていう。仲良くしてやってくれ。」
「……紫惠琉にぃにの子供じゃないの?」
「……。」
……あれ?兄さんたちから何も聞いてなかったのかな?
「違うよ、この子は俺の子じゃなくて……なんていうのかな、俺が卵から孵したドラゴンなんだよ。」
「……えっ?ドラゴン?ドラゴンって、あのドラゴン!?でも……見た目『人』じゃん?本当にドラゴンなの?」
悠馬は驚きはしたが、疑惑の目もユーリに向けた。
ユーリは1つため息をつくと、一瞬光って子竜姿になった。
「うっ、わわっ!えっ!?えぇ~~!!!」
ユーリの姿を見て、ものすごく驚く悠馬。
まぁ初めて見るならこれくらい驚くよね。
「ほらな?さぁ、もう遅いから帰るんだぞ?今度来た時に他のメンバーに会わせるからさ。良いな?」
俺はそう言って、不満たらたらの悠馬を鞄に戻す。
戻したら直ぐに兄さんに連絡した。
「悠馬、そっちに帰したからね。あとはよろしく!」
『ああ、分かった。ありがとうな、あいつのわがまま聞いてくれて。』
「夏休みの件は俺の仲間に聞いてからの返事でいいかな?」
『ああ、それで良い。よろしく頼む。』
兄さんとの電話を切ると、俺はやろうとしていたことを思い出す。
まずはこの屋敷のある敷地内に悪い奴が入ってきていないかの索敵からだ。
俺はまず普通に索敵魔法を展開してみる。
範囲は街の外とは比べようもないが、この屋敷の敷地内くらいはカバーできている。
その状態で『俺達と敵対しない者』を意識して目につくようにしてみる。
するとこの屋敷の中で沢山の青い光が出ていた。
もちろんみんなの部屋の中の光も青だ。
それから今度は『俺達と敵対する者』を目に付くようにしてみる。
すると青色の光は消え、全くの黒一面が広がっている。
……よし、今だな!
俺は索敵魔法を展開しながら、すかさずこの屋敷の敷地や塀も含めて全てを結界で覆った。
もちろんこれは『俺達9人とこの屋敷で働く者』は素通りできるようになっている。
あと、この屋敷で飼育している動物もね!
流石にここまですればこの屋敷には問題はないはず。
セバスにも確認をお願いしたが、お墨付きをもらえたので安心だ。
「にぃに、なんで結界を張ったの?」
あの時寝ていて事情を知らないユーリが、首を傾げて問いかけてきた。俺は手短に説明をしてやる。
すると「にぃにがやったんだから大丈夫だね!」と言ってまたベッドに戻っていく。今夜は子竜姿で寝るらしい。
俺もなんだか疲れたので、もう寝ることにした。
先にベッドで寝ているユーリの隣へと横になる。
「……お休みなさいませ。後のことはお任せください。」
セバスはそう言うとにっこり笑う。
俺は1つ頷き、目を閉じた。
するとやはり疲れていたのか、直ぐに夢の国へと旅立ったのだった。
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