真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる

文字の大きさ
2 / 2

覚悟はできていますわ、でも・・・

しおりを挟む
玄関ホールにはこの屋敷に勤める全ての使用人が集まっているのではないかというくらいの人で溢れていた。
そのほとんどが、最後になるかもしれないわたくしとの別れを惜しんでいる。

全員が純粋に別れを惜しんでくれているなどと驕るつもりはないけれど、少なくとも形だけは惜しんでもらえる程度に認められているのだと思うと、自分の生き筋に少しだけ自信がわくわ。


その様子を尻目に、最後になるかもしれない別れの挨拶を終えたわたくしはエスコートのための手を差し出すお兄様を無視して1人馬車に乗り込む。


ごめんなさいお兄様、でも、今誰かの手をとってしまえば覚悟が揺るぎそうなの。


わたくしが乗った馬車にお父様とお母様、そしてお兄様が乗り込み、動き出す。
目的地は王宮、そこで開かれる王家主催の夜会に向かっている。


本来であれば、わたくしは婚約者の第一王子フレデリクの迎えとエスコートと共に会場に向かうものだけれど、彼は来ていないの。

彼は今日別の女性をエスコートするためにわたくしの元へは来ないのよ。


フレデリクとの婚約が決まったのは、お互いに物心つかぬ頃。

お父様と国王はいとこ同士で仲が良く、野心の無いお父様は外戚としてうってつけで血筋としても適度に王家と離れているわたくしは国王にとってとても都合のいい存在だった。
お父様は婚約を嫌がったそうなのだけど、結局国王に押し切られる形で婚約となったの。

政略で定められた婚約者として、恋はしなかったけれどこの国を支え合う同志として信頼関係を育んでいたわ。
国のために学び、切磋琢磨しながら育ってきたの。

フレデリクはとても優秀だったわ。立太子はまだだったけれど、次期国王は彼に決まりだとみんなが口を揃えて言っていたの。

そんなあなたの横に立つことを重圧もありながら、とても誇らしく思っていたわ。


でも、フレデリクは1人の少女に恋をして変わってしまった・・・。


恋や愛は確かに素晴らしいものね。

でもわたくし達はそれに踊らされていい立場では無いでしょう?
溺れていいものでは無いでしょう?

でもあなたは、そう、なってしまったのね。


恋に溺れたあなたは、夢を語り、愛をささやいた。

その目が曇り、なすべきことを為せなくなってしまっていることに気づかなくなってしまった。


今までのあなたが完璧すぎたから、周りの失望もひとしおだったのはある意味不幸だったのでしょうね。


そして、あなたの気づかぬところで、様々な思惑が動き始めたの。


その全てを語る必要は無いでしょう。
ただ・・・



「本当にいいのか?今ならまだ引き返せるぞ。」

物思いに耽っていたら、そう言葉をかけられた。
お父様の声に懇願の色が見える。
でも・・・。

「ごめんなさい、お父様。わたくしフレデリク様は良き王になられると思うの、正気にさえ戻れば立派な王になれるはずよ。
サラ様は王妃の器とは言えないかもしれないけれど、フレデリク様を癒すことができるわ。それも王妃の役割でしょう?フレデリク様ならサラ様をうまく守ることもできるはずなの。」

そう、信じているのよ。

だから、親不孝な娘でごめんなさい。

でも、わたくしは覚悟を違える気は無いの。


今から向かう夜会で、フレデリクがわたくしとの婚約を解消しようとしていると情報が入っている。
事前に止めることもできたけれど、わたくしはそれを望まなかった。

渋る大人たちを長い時間をかけて説得したわ。
彼が婚約解消を宣言したら、その覚悟を示してもらうためにわたくしに毒付きのナイフを突き立ててもらうことにしたの。


説得するときにはそれらしい理由をいろいろ並べたけれど、突き詰めれば理由はただひとつ、わたくしのプライドを守るため。

物心付く前から第一王子の婚約者として、敬い傅かれていたわたくし。
両親でさえも婚約者として準王族としてみなされるわたくしには相応の態度で接していた。



プライドが高くなるのも当然でしょう?

でも、そんなプライドに見合う相応の努力と結果は残してきたわ。
だから誰に文句を言われる筋合いも無いの。


そんなわたくしが、別の女を選ぶ男と一緒にいられると思う?
わたくしを蔑ろにする男と一緒にいられると思う?

答えはNOだわ。

それが一時の気の迷いとしても、若気の至りだとしても、よ。


それにもし婚約解消を彼が言い出せば、婚約解消できずにわたくしが王妃となったとして、一生言われ続けるのよ、陰で見下され続けるのよ。
選ばれなかった女、だと。

もし婚約解消がなれば?
選ばれなかった女として、瑕疵のついた女として、女として真っ当な道は歩めないわ。
それ以上に、最高位の女として頭を下げられる立場だったのが、頭を下げなくてはならなくなるのよ。
そんなの、耐えられないわ。


だから、ね、それがどれほどの親不孝だとしても、わたくしは死をもってプライドを守るのよ。


そして、これは彼ら2人への手向けでもあるの。


もし、彼らがわたくしをきちんと殺せたならば、お父様とお兄様にはわたくしの存在をなかったものとして王家に仕えてもらう約束をしているの。

彼が彼女を選べば蟠りがどうしても発生してしまう。
我が家は野心が無いからこそ、家族に対する愛情があるからこそ、それは深い溝となってしまう。

それはわたくしの望むところでは無いの。


そしてもうひとつ、噂というのは話題性があればあるほど、素早くそしてねじ曲げられて伝わるものよ。

フレデリクがサラを選び、婚約者のはずのわたくしが命を落とせばどのような噂が広がるかしらね?

婚約者を殺してその地位を奪った冷酷な女?
目的のためなら人殺しも厭わぬ手段を選ばない女?

どう転んでも、いい噂にはならないでしょう。

それが、優しすぎる彼女を守る盾になるわ。

事実を知らない者は、彼女がいかに優しい振る舞いをしても勘ぐるでしょう。
裏を読み、偽るのがわたくしたちのやり方だもの、きっと、とてもうまく化けの皮をかぶっていると勝手に思い込んでくれる。


ふと気がつくと、馬車は動きを止めていた。
最後の旅路はあっという間だったわ。

両親と兄が先に馬車を降り、私の番になる。

死ぬのは怖い、怖くて怖くて堪らない。
足が震え、今にも逃げ出したくなる。

さっきお父様にはあんなことを言ったくせにね。

でも、彼らのために、何よりわたくし自身のために怯える心を足を叱咤して馬車を降りる。


わたくし達は偽る生き物。
怯えも恐れも笑顔の仮面に隠して、最後の審判に向かうわ。

そうしてわたくしは一歩ずつ歩を進めた。

























でも、ね、フレッド、他の誰もが信じなくても

わたくしはあなたが正しい判断をすることを本当は信じてるのよ
しおりを挟む
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

シュシュ
2026.01.06 シュシュ

読解力がなくてすみません!何が何だかわかりませんでした。1話と2話って繋がってますか?結局どうなったのか、何がしたいのか…

解除
ぽぽまも
2025.09.30 ぽぽまも

【二話目まで読んだ感想です】
おおおおお❗マリエール格っっっ好良い━━━━━━━━━━━━━━━‼️
高位貴族令嬢としてプライドに殉ずるその意気や良し‼️‼️
さて、お花畑ちゃんズはどう出るのかな❓
たーのーしーみー(≖ᴗ≖ )ニヤリ

解除
fumi
2025.05.22 fumi

お見事!

楽しませていただきました。
ありがとうございます。

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をしてきた元婚約者さま、あなただけは治せません。

こうやさい
ファンタジー
 わたくしには治癒の力があります。けれどあなただけは治せません。  『婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。』から連想した、病気を婚約破棄のいいわけに使った男の話。一応事実病気にもなっているので苦手な方はお気を付け下さい。  区切りが変。特に何の盛り上がりもない。そしてヒロイン結構あれ。  微妙に治癒に関する設定が出来ておる。なんかにあったっけ? 使い回せるか?  けど掘り下げると作者的に使い勝手悪そうだなぁ。時間戻せるとか多分治癒より扱い高度だぞ。  続きは需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/206551)で。 URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/423759993

妹は悪役令嬢ですか?

こうやさい
ファンタジー
 卒業パーティーのさなか、殿下は婚約者に婚約破棄を突きつけた。  その傍らには震えている婚約者の妹の姿があり――。  話の内容より適当な名前考えるのが異様に楽しかった。そういうテンションの時もある。そして名前でネタバレしてしまうこともある(爆)。  本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。  冷静考えると恋愛要素がないことに気づいたのでカテゴリを変更します。申し訳ありません。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  後で消すかもしれない私信。朝の冷え込みがまた強くなった今日この頃、パソコンの冷却ファンが止まらなくなりました(爆)。ファンの方の故障だと思うのですが……考えたら修理から帰ってきたときには既におかしかったからなー、その間に暑くなったせいかとスルーするんじゃなかった。なので修理とか出さずに我慢して使い続けると思うのですが、何かのときは察して下さい(おい)。ちょっとはスマホで何とかなるだろうけど、最近やっとペーストの失敗回数が減ってきたよ。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

先を越された婚約破棄

こうやさい
恋愛
 魔法学園の卒業式、王太子は婚約破棄してやろうと壇上に呼び出した令嬢に先に婚約破棄をされた。  その直後、令嬢の姿はかき消えてしまい――。  えーっと婚約破棄なら恋愛で……ってちょっと苦しい気がするこれ。まだ『絶対に叶わない』のほうが恋愛ぽい気が。。。ファンタジー? ミステリーにするには推理に必要な情報の提示が明らかに足りないしそもそも書き方がおかしいし……。カテゴリ保留とかなしとか閲覧者様の投票で決まりますとか出来ればいいのに。。。  『すべてが罰を受けた』はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

修道院送り

章槻雅希
ファンタジー
 第二王子とその取り巻きを篭絡したヘシカ。第二王子は彼女との真実の愛のために婚約者に婚約破棄を言い渡す。結果、第二王子は王位継承権を剥奪され幽閉、取り巻きは蟄居となった。そして、ヘシカは修道院に送られることになる。  『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。