乙女ゲームの攻略対象者から悪役令息堕ちポジの俺は、魂の番と幸せになります

琉海

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10.母

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「あ、嵐のようだった…」
「そうだな。相変わらずのお元気さだな」
「元気ぃ?あれは元気っていうよりも、じょちょうしてるっていうんだよ!ヒス…皇后さまのいこうを笠に着てるってやつ」
「お。難しい言葉よく知ってるな」
「ふふん」

ドヤァ…と顔を向けると微笑まし気に頭を撫でられた。まぁ、俺は精神年齢的に言えばオッサンですから?得意気になる事でもないんだけど?
セフィロスに褒められると無条件に得意気な気持ちになる。もっと褒めて!ってなる。
これって、体年齢に精神が引きずられてるんかな?

「それにしても、よく分かったな」
「なにが?」
「皇后さまたちが来ることをだよ」
「あー…」

基本的に、俺はヒステリックババア…なげぇな。ヒスバァに会わないように細心の注意を払っているんだが、時々運悪くバッティングする事がある。

そうなると、あいつらは獲物を見つけた肉食獣のごとくぴーちくぱーちくと俺を蔑む。それ、幼子に言う事じゃねぇだろ?って事も容赦なくだ。

孔雀はその度に存在意義を無価値なものにされてその小さな胸を痛めていたわけだ。
そんな俺も、母の事を嗤われた時はさすがに反論したが、のちに母に対して陰湿な虐めを繰り広げたものだから、それに責任を感じてじっと我慢するようになった。
健気じゃね?それを思い返すたびに、もう、孔雀がいじらしくてさ!———俺だけど。

はぁ、まぁでもあと半年であいつらとは縁が切れると思うと待ち遠しいぜ。しっかし半年なげぇなー。セフィロスにはえへへと笑って誤魔化しておいた。
ぜってぇ誤魔化されてないけど、とりあえず流してくれた。セフィロス大好き。
でも、そのうち折を見て相談した方がいいだろうなぁ。

「あー、その、なんだ。る、ルチル様に会って行くか?」
「かあさまに?」
「俺はちょっと確認する事があるから一度、事務室に戻る。待っている間、ルチル様と会っておけよ。今日は早く切り上げる予定だからそんなに待たせない」
「うん。分かった。ありがと、セフィ」
「ルチル様と会うのも久しぶりだろ?そんなに待たせないが、少し長く時間を取っておくから」
「セフィ!大好きっ!!!」
「俺も孔雀が好きだぞ」

セフィロスにかあさまの部屋まで送ってもらい、真っ赤な顔でガッチガチに緊張したセフィロスがかあさまに挨拶しているのを密かに笑って、執務室へ行く彼を2人で見送った。

「かあさま!!!」
「あらあら。甘えん坊さんね」

久しぶりの母にぎゅううと抱き着いて、そのぬくもりと匂いを思いっきり吸い込む。母はほのかに柔らかい花のような香りがして、すごく落ち着く。

「母さま、大好き!」
「ふふふ。私も孔雀さんが大好きよ。世界一、大切な私の可愛い子」

うふふと2人で顔を合わせて笑い合う。
この時間が凄く大好きだ。
俺は前世であまり家族縁がなかったから、母の事は本当に大好きで大切な人だ。
———ん?そうなのか。俺には家族縁がなかったのか。
記憶を取り戻してから、こんな風にふと思い浮かぶ事が度々ある。映像というよりも、事実として言葉が出てくるというか。

そんな母がオヤジから近いうちに宣告される降嫁の事で心を痛めるだろうか。儚げな母を見てきゅうと胸が痛くなった。俺が、それを促した張本人でもあるから…。

「孔雀さん、どうしたの?」
「うぅん…」
「いいえ。そういうお顔をしている時の孔雀さんは何か悩んでいる時だわ。ほら、母に言ってしまいなさい」
「う…ダメです。これは、言ってはいけないのです」
「ふぅ~ん。そう。ならば、こうよ!!」
「アハハハハハハ!!やめて!やめてかあさま!くすぐったいですぅぅ」
「ほらほらほら、吐いておしまいなさい!」

母よ、そんなセリフどこで覚えたのですか。ザ・深窓の令嬢であるアナタはそんなノリの人ではなかったではないですかっ!!

「ち、ちびっちゃう~~!」
「うふふふ。はーっ。楽しかった。久々に孔雀さんの可愛い笑い声をたくさん堪能できたわ」

いや、母よ…幼子がちびりそうになるまでくすぐるなんて鬼でっせ。しかも強制的に笑わせてるのに笑い声聞けたとか…やはりどこかズレとる。そんなうちの母は天然女子です。

「うぅぅ…えらい目にあった」
「まぁ!孔雀さんたら。また語彙力がついたわね!こんなに小さいのに大人顔負けの言葉を使いこなすんだから。賢い!やっぱり、うちの子世界一!!」

な、なんだろうか。母ってこんなキャラだったっけ?もっとゆるふわだったような気がするんだが…まぁ、どんな母でも大好きですがっ。

「さて、孔雀さん。忘れてないわよ?何があったの?」
「うぅぅ…」


「へぇぇ。なるほどねぇ」
「くぅぅ。言ってしまいました…一応、とっぷしーくれっとだったのに」

両手をワキワキさせて綺麗な笑顔の母の圧に負けてしまって、洗いざらいゲロってしまった。どうも、母にはむちゃくちゃ弱い気がする。
決して、くすぐり地獄に屈した訳ではない!

「で?孔雀さんは私が陛下にフラれて傷つくんじゃないかと思って落ち込んでたのかしら?」
「あい…ごめんなさい。僕が、セフィを焚きつけて、オヤ…父さまにもお願いしました」
「……」
「お、怒ってる?」

おそるおそる母を見上げると、ほっぺピッカピカにした母がいた。

「孔雀さん!でかしました!!」
「へ?」

ららら~とか歌いながら俺を抱き上げてくるくる回る母に唖然とする。
な、なんかマジでキャラ変してね?

「いいのですよ、孔雀さん。お手柄ですっ!」
「お手柄…え?」
「わたくし、陛下にはほとほと愛想をつかしていたの。あ。こう言ってしまっては孔雀さんに失礼ね。あれでも孔雀さんの父さまですものね。
それでも、あんな人でも感謝はしているのよ?こぉぉんなに可愛くて愛しい子を授かる事が出来たもの!」
「かあさま…」
「それに、ここから連れ出してくれる算段も付けてくれるなんて…なんって母思いの賢い子でしょう!!孔雀さん、ありがとう」
「!!!お、怒ってませんか?悲しんでませんか?」
「いいえ!むしろ、とても嬉しいわ」

よ、良かったぁぁ~~…。

「でも、陛下から賜る時は知らないふりをしていなければね」
「は、はい。よろしくお願いいたします…」
「これで…孔雀さんの命が狙われる危険がかなり減るわね」

そう言った母の表情に胸が苦しくなる。彼女は、本当に本当に俺の命を案じてくれていたのだと…俺は、愛されているのだと…。
しんみりしている俺の横で、ヒスバァに目を付けられないように、これまで以上に神妙にしておかなければ!女は度胸よ!女優よ!と勇ましく拳を振り上げていた(かわいい)

こう、明け透けに話していることからも分かるように、俺らには侍女が極端に少ない。いるのはいるが、最低限なのである。だから、いま、この部屋の中にも本来ならば控えているはずの侍女もいない。
昔は、母が軽んじられている事に腹が立っていたが今となっては都合がいい。
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