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第三章:特別な夏休み
20.天国と地獄
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家へ入っていきなり!? そりゃさっきみたいに外じゃないから気にならないのかもしれないけど、まさかのキスシーン再びである。
「ああビックリした、そりゃミクにとっては普通のことなのかもしれないけどさ…… 僕にとっては慣れないとこで慣れないことで、とても落ち着けないよ……」
「もう、私にとって普通ってなによ! なんだか簡単にキスする女って言い方に聞こえて心外だわ。こよみったらデリカシーないんだからっ!」
「だって部屋に入ってすぐだったしビックリしちゃってさ。変なこと言っちゃったならごめんよ? でもホントに驚いて思わず出た言葉だから許して欲しいなあ……」
「ふふふ、別に怒ってないわよ。でも挨拶のキスと好きな人へのキスは全然違うんだからね? それはちゃんとわかって貰わないと困るわ。あ、まって、そのことに関してはもう何も言わなくていいから!」
僕はミクの言葉の後に「ってことはやっぱり僕のことが好きでキスしたってことだよね!?」と続けようとしたのだが、どうやらそれくらいはお見通しらしく先に釘を刺されてしまった。
「でもホントに挨拶でキスするんだね。海外ドラマでは普通に見る光景だけど、いざ目の前で見たら緊張しちゃったよ。外国人の大人を間近で見たのも初めてだしさ。お婆ちゃんってミクとよく似てるんだね」
「ちょっとそれは逆じゃない? 私がグランマに似てるってことよね? ママはグランパ似らしくて私よりは日本人顔なんだけど、それでもそばかすが多いとこは同じかな。私はあまり好きじゃないけどね……」
「なに言ってんだよ。そのそばかすがかわいいんじゃないか。ミクらしくて僕は最高に好きなところさ。でも一番はその賢さが滲み出てる話し方と態度かな。カッコいいもん」僕にとってミクは最高で理想の女子像なため、出し惜しみせずについ褒めまくってしまう。
「だーかーらー、そうやって褒めすぎるのは控えてよね? こよみのそういうとこ、恥ずかしくて仕方ないんだから」ミクの耳が赤く染まったところを見て、僕は叱られつつも、また一つかわいいところを見つけたと内心喜んでいた。
だが天国に来たと思ったのもつかの間、目の前の天使が悪魔へと変貌する。
「それじゃ宿題に取り掛かりましょ。ワークってどのくらい残って―― って、きっと手つかずなのよね? 最初から進めて今日中に全部やっちゃうわよ? ほら、そうやってあからさまに嫌な顔しないの!」
「くう、厳しい…… でもこれくらいはサクサク出来るようにならないとミクと並んで歩けやしないから頑張るよ」そう言って大げさにガッツポーズをとって見せると、後ろから声がかけられた。
「アーラアラー、これは可愛らしいKnightさんだこと。いいFriendができたって喜んでいたけれど、まさかBoyFriendだったとは驚きましたよ? ミーちゃん、良かったわね」
「もう、グランマはあっち行ってて。宿題終ってからちゃんと紹介するから。グランパが散歩から帰って来ても絶対通しちゃダメよ? それと後でおやつお願いね」
「はいはい、わかりましたよ。そんなに恥ずかしがることないでしょう? それじゃcharmingなKnightさん、ミーちゃんをよろしくね」
「ど、どうも…… ―― ふぅ、随分と濃いおばあちゃんだね。グランマって名前なの? おじいちゃんはグランパ? 夫婦で名前が似てるなんて面白いね。でも僕はナイって名前じゃないんだけど、なにかのあだ名みたいなやつ?」
「違うわよ、グランマはgrandmotherでおばあちゃんって意味。グランパはおじいちゃんね。あとこよみのアレは―― まあそれはいいわ、気にしないで」
「ちょっと、余計に気になるじゃないか。悪口じゃないならまあいいんだけど、突然男友達を連れてきたからいい顔してないとかだったら困るだろ?」
「大丈夫、大丈夫だから気にしないでいいの。いいお友達って意味だから。その…… 普通の友達よりも近い感じって意味よ! これで満足!?」ミクはなぜか声を荒げてしまったが、怒っていると言うより恥ずかしがってるように見える。どこに恥ずかしいポイントがあったのかわからない僕は首を傾げた。
その後は意外にも真面目に宿題に取り組み、おやつの時間になる前には半分手前まで終わらせていた。生まれてこの方、宿題をまともにやったことが無かった僕にとっては快挙と言っていい。
「なんだ、やってみれば案外時間もかからないもんだね。この調子なら高校どころか大学にだって行かれるかもしれないな。ところでミクがやってるのはそれなに? 魔法の呪文書みたいな表紙だけど」僕は見慣れない文字がぐにゃぐにゃと這っている表紙を見ながらミクへと尋ねた。
「これはだたの小説よ? 確かに魔法は載ってるけどそういうお話なだけ。ファンタジーな冒険譚で結構面白いの」そう言われて覗き込んでみると、中身は全部英語か何かで書いてあって面白いどころではない。
「ええっ!? ミクってばそれ読めてるの? まさかそれって英語じゃない? 僕なんて日本語の教科書だけで精いっぱいだってのになあ。大学どころか高校も遠く思えて来たよ」
「私だってすらすら読めてるわけじゃないわ。辞書を引きながら勉強のつもりで読み進めてるんだけど、夏休みに入ってから読み始めてまだ一章も終わってないの。グランマがいなかったらもっと進んでないでしょうね」
「そもそも読む気になるだけですごいと思います…… 本当に同じ高校行かれるか不安になってきたよ。もしかしなくても相当勉強しないといけないよなあ」僕はそういいつつもまだまだ先の話だからと余裕を持っていた。
「そうよね、来年には中学生になって、二年になったら真剣に受験を考える時期でしょ? ということは後二年くらいしかないってことよ? 出来る限り頑張ってそれでもダメなら仕方ないと思うけどね」
ミクは複雑な笑顔を作り僕を見つめる。僕はその瞳に吸いこまれるように視線を奪われてしまい、テーブル越しにゆっくりと顔を近づけて行った。
「ああビックリした、そりゃミクにとっては普通のことなのかもしれないけどさ…… 僕にとっては慣れないとこで慣れないことで、とても落ち着けないよ……」
「もう、私にとって普通ってなによ! なんだか簡単にキスする女って言い方に聞こえて心外だわ。こよみったらデリカシーないんだからっ!」
「だって部屋に入ってすぐだったしビックリしちゃってさ。変なこと言っちゃったならごめんよ? でもホントに驚いて思わず出た言葉だから許して欲しいなあ……」
「ふふふ、別に怒ってないわよ。でも挨拶のキスと好きな人へのキスは全然違うんだからね? それはちゃんとわかって貰わないと困るわ。あ、まって、そのことに関してはもう何も言わなくていいから!」
僕はミクの言葉の後に「ってことはやっぱり僕のことが好きでキスしたってことだよね!?」と続けようとしたのだが、どうやらそれくらいはお見通しらしく先に釘を刺されてしまった。
「でもホントに挨拶でキスするんだね。海外ドラマでは普通に見る光景だけど、いざ目の前で見たら緊張しちゃったよ。外国人の大人を間近で見たのも初めてだしさ。お婆ちゃんってミクとよく似てるんだね」
「ちょっとそれは逆じゃない? 私がグランマに似てるってことよね? ママはグランパ似らしくて私よりは日本人顔なんだけど、それでもそばかすが多いとこは同じかな。私はあまり好きじゃないけどね……」
「なに言ってんだよ。そのそばかすがかわいいんじゃないか。ミクらしくて僕は最高に好きなところさ。でも一番はその賢さが滲み出てる話し方と態度かな。カッコいいもん」僕にとってミクは最高で理想の女子像なため、出し惜しみせずについ褒めまくってしまう。
「だーかーらー、そうやって褒めすぎるのは控えてよね? こよみのそういうとこ、恥ずかしくて仕方ないんだから」ミクの耳が赤く染まったところを見て、僕は叱られつつも、また一つかわいいところを見つけたと内心喜んでいた。
だが天国に来たと思ったのもつかの間、目の前の天使が悪魔へと変貌する。
「それじゃ宿題に取り掛かりましょ。ワークってどのくらい残って―― って、きっと手つかずなのよね? 最初から進めて今日中に全部やっちゃうわよ? ほら、そうやってあからさまに嫌な顔しないの!」
「くう、厳しい…… でもこれくらいはサクサク出来るようにならないとミクと並んで歩けやしないから頑張るよ」そう言って大げさにガッツポーズをとって見せると、後ろから声がかけられた。
「アーラアラー、これは可愛らしいKnightさんだこと。いいFriendができたって喜んでいたけれど、まさかBoyFriendだったとは驚きましたよ? ミーちゃん、良かったわね」
「もう、グランマはあっち行ってて。宿題終ってからちゃんと紹介するから。グランパが散歩から帰って来ても絶対通しちゃダメよ? それと後でおやつお願いね」
「はいはい、わかりましたよ。そんなに恥ずかしがることないでしょう? それじゃcharmingなKnightさん、ミーちゃんをよろしくね」
「ど、どうも…… ―― ふぅ、随分と濃いおばあちゃんだね。グランマって名前なの? おじいちゃんはグランパ? 夫婦で名前が似てるなんて面白いね。でも僕はナイって名前じゃないんだけど、なにかのあだ名みたいなやつ?」
「違うわよ、グランマはgrandmotherでおばあちゃんって意味。グランパはおじいちゃんね。あとこよみのアレは―― まあそれはいいわ、気にしないで」
「ちょっと、余計に気になるじゃないか。悪口じゃないならまあいいんだけど、突然男友達を連れてきたからいい顔してないとかだったら困るだろ?」
「大丈夫、大丈夫だから気にしないでいいの。いいお友達って意味だから。その…… 普通の友達よりも近い感じって意味よ! これで満足!?」ミクはなぜか声を荒げてしまったが、怒っていると言うより恥ずかしがってるように見える。どこに恥ずかしいポイントがあったのかわからない僕は首を傾げた。
その後は意外にも真面目に宿題に取り組み、おやつの時間になる前には半分手前まで終わらせていた。生まれてこの方、宿題をまともにやったことが無かった僕にとっては快挙と言っていい。
「なんだ、やってみれば案外時間もかからないもんだね。この調子なら高校どころか大学にだって行かれるかもしれないな。ところでミクがやってるのはそれなに? 魔法の呪文書みたいな表紙だけど」僕は見慣れない文字がぐにゃぐにゃと這っている表紙を見ながらミクへと尋ねた。
「これはだたの小説よ? 確かに魔法は載ってるけどそういうお話なだけ。ファンタジーな冒険譚で結構面白いの」そう言われて覗き込んでみると、中身は全部英語か何かで書いてあって面白いどころではない。
「ええっ!? ミクってばそれ読めてるの? まさかそれって英語じゃない? 僕なんて日本語の教科書だけで精いっぱいだってのになあ。大学どころか高校も遠く思えて来たよ」
「私だってすらすら読めてるわけじゃないわ。辞書を引きながら勉強のつもりで読み進めてるんだけど、夏休みに入ってから読み始めてまだ一章も終わってないの。グランマがいなかったらもっと進んでないでしょうね」
「そもそも読む気になるだけですごいと思います…… 本当に同じ高校行かれるか不安になってきたよ。もしかしなくても相当勉強しないといけないよなあ」僕はそういいつつもまだまだ先の話だからと余裕を持っていた。
「そうよね、来年には中学生になって、二年になったら真剣に受験を考える時期でしょ? ということは後二年くらいしかないってことよ? 出来る限り頑張ってそれでもダメなら仕方ないと思うけどね」
ミクは複雑な笑顔を作り僕を見つめる。僕はその瞳に吸いこまれるように視線を奪われてしまい、テーブル越しにゆっくりと顔を近づけて行った。
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