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10 初夜のやり直し?
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コンコン……。
「奥様失礼いたします。入ってもよろしいでしょうか?」
カトレーヌの声だった。
「うん……、いいわよ……」
カトレーヌが部屋のカーテンを開け、もうすっかり日が昇り切っていることに気づいた。
「今何時かしら……」
「11時になります」
「えっ!?11時?もうお昼じゃない!」
もうすでにディートハルトの姿はなかった。
「ディートハルトはどこにいったのかしら……」
「旦那様はお仕事に行かれました。何やら、結婚式の準備でだいぶ仕事が滞っていたとかで……」
なるほど……。同じ仕事をする身として、理解できる。
私も明日から出勤予定だ。
「旦那様からは、奥様の体が辛いだろうから今日は部屋で食事をするようにと、賜っております」
さすがディートハルト!気遣いが素晴らしい。
この伯爵家では各々自室で食事をとっている。週末の夕食だけは皆でそろって食べるというのが慣例となっている。
おかげで気が楽なのだ。仕事をしていると残業も多いから、時間通りにも帰れないし、それで皆さんを待たせるわけにもいかない。
「奥様、まず湯浴みいたしますか? それともお食事に?」
あそっか、カトレーヌは初夜が行われたと思ってるのね。でも、お腹すいたし……。
「まずは食事にしてくれる?」
「かしこまりました。すぐにお持ちいたしますね」
◇◇◇
――あれから3か月の月日が流れた。結婚してからの生活リズムが整い、とても充実した日々を送っている。
しかし、一つ問題がある。……ディートハルトが帰ってこない。正確には帰ってはきている。
結婚してから一応同じベッドで寝ているが、深夜にディートハルトが帰宅して朝早く出発してしまうのだ。
未だ、初夜は行われていない。
カトレーヌには毎夜湯浴みできれいにされて、透け感のあるナイトドレスを着せられている。
週末の晩餐でお義母様から、そろそろなんじゃないという視線が辛い……。
そして、先に結婚したディートハルトの弟夫婦が妊娠したと、うれしそうに報告していた。義両親もうれしそうに目を細めていた。
そして、今日は金曜日。明日は私もディートハルトも仕事がお休みの為、今夜こそ初夜を決行しないと、私の立場が危うい。
今夜は寝ずに待っていよう。
私は大好きな月刊魔道具という雑誌をひらいた。月刊誌で、今一番熱い魔道具の紹介やレシピ、研究者の紹介などが書かれている。
私の愛読書で、いつか私もこの雑誌に載る事が夢なのだ。
キィ……と扉が開いた。
扉に目を向けると、瞳を大きく開いたディートハルトと目が合った。
「アーシュ、どうしたんだ?」
「おかえりなさい。いつも先に寝てしまうから、今日くらいは起きて待っていようと思ったの」
「そ、そうか……。ありがとう」
「何か飲む?」
「あぁ、ありがとう」
カトレーヌが用意しておいてくれた、保温力抜群の魔道具ポットからお茶を入れる。
「疲れの取れる、ハーブティよ」
「ありがとう」
ディートハルトは美しい口で、ハーブティを口に含んだ。
喉仏が上下し、飲み込んだのを確認する。なんだか色気がすごいわ。
これから初夜のやり直しをすると思うと、頬が熱くなった。
「ハーブティを飲んだら、体が熱くなったわ……」
そういって、上に着ていた厚手のガウンを脱いだ。
薄手のナイトドレスは下着が透けていて、なかなか恥ずかしいのだが仕方がない。
チラリとディートハルトを見ると、こちらを凝視している。
良かった……、効果はあったようね!
幼馴染で友達期間が長かったから、どうなるかと思ったけど、あとはディートハルトに任せておけばいいわね。
ディートハルトはティーカップを置いて、こちらに歩いてくる。
い、いよいよだわ!私の心臓も早鐘を打つ。
すると……。
「ずいぶん薄い寝間着だね、これでは風邪をひいてしまう。さあ、ガウンを着ようね」と、先ほど脱いだガウンを再び着せられ、しっかりと前をしめて、ウエストをぎゅっと締められた。
あれ……?
「さぁ、夜も遅い……。ベッドに入ろう……」
「うん……」
私はディートハルトに連れられて、ベッドに入った。
「おやすみ、アーシュ」と言って、おでこにキスをされディートハルトは私に背中を向けた。
えっ……。
それで終わり……?ウソ……。まるで子供を寝かしつける親のようじゃない。
青ざめている私をよそに、ディートハルトは寝息をたてて寝始めた。
こんなモヤモヤした気持ちじゃ、寝られないわよ!!
私は無駄に広くなったディートハルトの背中を睨んだ。
◇◇◇
――そして結婚して一年がたち、義弟夫婦に男児が無事に生まれ、伯爵家が幸せムードになっていた。
私とディートハルトの仲はいまだ変わらず、友人関係のままだった。
そんな中、週末の午後、庭園のテラスにディートハルトと私とお義母様の3人でお茶を飲んでいた。
「いったい、どうなっているの?」
お義母様が少し苛立った声色で話し始めた。
「あなたたちの結婚を早めたのは、早く子供を作ってほしかったからよ。アーシュレイさんの実家にも多額の援助をしたわ」
「はい……、本当にありがとうございます」
「アーシュレイさんも仕事ばかりしていないで、少しは真剣に考えてちょうだい」
はぁ……、やっぱりそろそろ言われると思ってたのよね。援助のことを言われると立場がないわ。
「はい……、申し訳ありません」
ガタッ!と勢いよくディートハルトが立ち上がった。
「母さん、悪いけど、私たちは失礼するよ。これは私たち夫婦の問題だ。母さんに言われる筋合いはない!」
「なっ!」
お義母様がハンカチを握りしめ、ワナワナと震えている。
ディートハルトがこんなに怒るなんて、初めて見た。
ポカンと見ていた私の手をディートハルトが強引に取り、その場を立ち去った。
はぁ~、お義母様を怒らせちゃってどうなるのよ~。
部屋に戻るのかと思ったら、執事と何やら話している。
そして、ディートハルトがこちらに向いた。
「アーシュ、これからちょっと出かけない? 気分転換にさ」
「あ、うん……。そうね、たまにはいいわね」
このまま屋敷にいて、またお義母様と顔を合わせるのも気まずい。
私たちは馬車に乗り込み、心地好い揺れの中、景色を楽しんだ。
ディートハルトは未だ無言だ。
さっきのこと、まだ怒ってるのかな……。
私は隣に座るディートハルトの袖を掴んだ。
「ん?どうした?」
思いもよらず、甘い声だったので少し恥ずかしくなった。
「あっ、さっきのこと……。大丈夫?」
「あ……、うん。母さんがごめんね。アーシュに嫌な思いさせちゃったね」
ディートハルトがそう言って、手を絡めてきた。
私も素直に甘えることにした。
「うん、少しね。でも、そういう約束ではあったから……。仕方ないよ……」
私はディートハルトの肩に頭をのせた。
「ディーは本当に逞しくなっちゃったね。昔は私の方が大きかったのに」
「ははは、いつの話をしてるんだよ」
「出会った頃よ」
「確かに、あの頃はアーシュの方が大きかったよね」
「私の事使用人だと勘違いしてたし」
「あ、それは仕方ないだろう!普通のご令嬢はあんな格好で水やりしてないよ」
私たちは目があい、どちらからともなく笑った。
こんなに、気兼ねなく話したのはいつぶりだろうか……。
そんなことを思っていると、馬車が止まった。
「着いたみたいだね。じゃあ、降りようか」
「ここは……」
そこは見覚えのある景色だった。
「奥様失礼いたします。入ってもよろしいでしょうか?」
カトレーヌの声だった。
「うん……、いいわよ……」
カトレーヌが部屋のカーテンを開け、もうすっかり日が昇り切っていることに気づいた。
「今何時かしら……」
「11時になります」
「えっ!?11時?もうお昼じゃない!」
もうすでにディートハルトの姿はなかった。
「ディートハルトはどこにいったのかしら……」
「旦那様はお仕事に行かれました。何やら、結婚式の準備でだいぶ仕事が滞っていたとかで……」
なるほど……。同じ仕事をする身として、理解できる。
私も明日から出勤予定だ。
「旦那様からは、奥様の体が辛いだろうから今日は部屋で食事をするようにと、賜っております」
さすがディートハルト!気遣いが素晴らしい。
この伯爵家では各々自室で食事をとっている。週末の夕食だけは皆でそろって食べるというのが慣例となっている。
おかげで気が楽なのだ。仕事をしていると残業も多いから、時間通りにも帰れないし、それで皆さんを待たせるわけにもいかない。
「奥様、まず湯浴みいたしますか? それともお食事に?」
あそっか、カトレーヌは初夜が行われたと思ってるのね。でも、お腹すいたし……。
「まずは食事にしてくれる?」
「かしこまりました。すぐにお持ちいたしますね」
◇◇◇
――あれから3か月の月日が流れた。結婚してからの生活リズムが整い、とても充実した日々を送っている。
しかし、一つ問題がある。……ディートハルトが帰ってこない。正確には帰ってはきている。
結婚してから一応同じベッドで寝ているが、深夜にディートハルトが帰宅して朝早く出発してしまうのだ。
未だ、初夜は行われていない。
カトレーヌには毎夜湯浴みできれいにされて、透け感のあるナイトドレスを着せられている。
週末の晩餐でお義母様から、そろそろなんじゃないという視線が辛い……。
そして、先に結婚したディートハルトの弟夫婦が妊娠したと、うれしそうに報告していた。義両親もうれしそうに目を細めていた。
そして、今日は金曜日。明日は私もディートハルトも仕事がお休みの為、今夜こそ初夜を決行しないと、私の立場が危うい。
今夜は寝ずに待っていよう。
私は大好きな月刊魔道具という雑誌をひらいた。月刊誌で、今一番熱い魔道具の紹介やレシピ、研究者の紹介などが書かれている。
私の愛読書で、いつか私もこの雑誌に載る事が夢なのだ。
キィ……と扉が開いた。
扉に目を向けると、瞳を大きく開いたディートハルトと目が合った。
「アーシュ、どうしたんだ?」
「おかえりなさい。いつも先に寝てしまうから、今日くらいは起きて待っていようと思ったの」
「そ、そうか……。ありがとう」
「何か飲む?」
「あぁ、ありがとう」
カトレーヌが用意しておいてくれた、保温力抜群の魔道具ポットからお茶を入れる。
「疲れの取れる、ハーブティよ」
「ありがとう」
ディートハルトは美しい口で、ハーブティを口に含んだ。
喉仏が上下し、飲み込んだのを確認する。なんだか色気がすごいわ。
これから初夜のやり直しをすると思うと、頬が熱くなった。
「ハーブティを飲んだら、体が熱くなったわ……」
そういって、上に着ていた厚手のガウンを脱いだ。
薄手のナイトドレスは下着が透けていて、なかなか恥ずかしいのだが仕方がない。
チラリとディートハルトを見ると、こちらを凝視している。
良かった……、効果はあったようね!
幼馴染で友達期間が長かったから、どうなるかと思ったけど、あとはディートハルトに任せておけばいいわね。
ディートハルトはティーカップを置いて、こちらに歩いてくる。
い、いよいよだわ!私の心臓も早鐘を打つ。
すると……。
「ずいぶん薄い寝間着だね、これでは風邪をひいてしまう。さあ、ガウンを着ようね」と、先ほど脱いだガウンを再び着せられ、しっかりと前をしめて、ウエストをぎゅっと締められた。
あれ……?
「さぁ、夜も遅い……。ベッドに入ろう……」
「うん……」
私はディートハルトに連れられて、ベッドに入った。
「おやすみ、アーシュ」と言って、おでこにキスをされディートハルトは私に背中を向けた。
えっ……。
それで終わり……?ウソ……。まるで子供を寝かしつける親のようじゃない。
青ざめている私をよそに、ディートハルトは寝息をたてて寝始めた。
こんなモヤモヤした気持ちじゃ、寝られないわよ!!
私は無駄に広くなったディートハルトの背中を睨んだ。
◇◇◇
――そして結婚して一年がたち、義弟夫婦に男児が無事に生まれ、伯爵家が幸せムードになっていた。
私とディートハルトの仲はいまだ変わらず、友人関係のままだった。
そんな中、週末の午後、庭園のテラスにディートハルトと私とお義母様の3人でお茶を飲んでいた。
「いったい、どうなっているの?」
お義母様が少し苛立った声色で話し始めた。
「あなたたちの結婚を早めたのは、早く子供を作ってほしかったからよ。アーシュレイさんの実家にも多額の援助をしたわ」
「はい……、本当にありがとうございます」
「アーシュレイさんも仕事ばかりしていないで、少しは真剣に考えてちょうだい」
はぁ……、やっぱりそろそろ言われると思ってたのよね。援助のことを言われると立場がないわ。
「はい……、申し訳ありません」
ガタッ!と勢いよくディートハルトが立ち上がった。
「母さん、悪いけど、私たちは失礼するよ。これは私たち夫婦の問題だ。母さんに言われる筋合いはない!」
「なっ!」
お義母様がハンカチを握りしめ、ワナワナと震えている。
ディートハルトがこんなに怒るなんて、初めて見た。
ポカンと見ていた私の手をディートハルトが強引に取り、その場を立ち去った。
はぁ~、お義母様を怒らせちゃってどうなるのよ~。
部屋に戻るのかと思ったら、執事と何やら話している。
そして、ディートハルトがこちらに向いた。
「アーシュ、これからちょっと出かけない? 気分転換にさ」
「あ、うん……。そうね、たまにはいいわね」
このまま屋敷にいて、またお義母様と顔を合わせるのも気まずい。
私たちは馬車に乗り込み、心地好い揺れの中、景色を楽しんだ。
ディートハルトは未だ無言だ。
さっきのこと、まだ怒ってるのかな……。
私は隣に座るディートハルトの袖を掴んだ。
「ん?どうした?」
思いもよらず、甘い声だったので少し恥ずかしくなった。
「あっ、さっきのこと……。大丈夫?」
「あ……、うん。母さんがごめんね。アーシュに嫌な思いさせちゃったね」
ディートハルトがそう言って、手を絡めてきた。
私も素直に甘えることにした。
「うん、少しね。でも、そういう約束ではあったから……。仕方ないよ……」
私はディートハルトの肩に頭をのせた。
「ディーは本当に逞しくなっちゃったね。昔は私の方が大きかったのに」
「ははは、いつの話をしてるんだよ」
「出会った頃よ」
「確かに、あの頃はアーシュの方が大きかったよね」
「私の事使用人だと勘違いしてたし」
「あ、それは仕方ないだろう!普通のご令嬢はあんな格好で水やりしてないよ」
私たちは目があい、どちらからともなく笑った。
こんなに、気兼ねなく話したのはいつぶりだろうか……。
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