【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ

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30話 皇太子の執着

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 帝国皇宮、謁見の間。

「レオ・ロウ」

 玉座に座る皇太子、ルースの声が、謁見の間に響いた。
 レオ・ロウは、その声を聞くと、内心で「またか……」とげんなりした表情を浮かべた。

 理由は明白だった。
 皇太子殿下がここ最近、三時間おきにソウタの様子を尋ねてくるのだ。

 さすがのレオ・ロウも、皇太子殿下が記憶喪失の後遺症で忘れっぽくなってしまったのではないかと、疑念を抱き始めていた。
 
 そこで、彼は相棒のユノ・セリウスに相談を持ちかけた。

「おい、ユノ。皇太子殿下、どうも様子がおかしいぞ。三時間おきにソウタ殿のことを聞いてくるんだが、もしかして記憶が飛んでるんじゃないのか?」

 レオ・ロウの真剣な問いに、ユノ・セリウスは、くすりと笑った。
 
 彼は、ルースが記憶を失っていようとも、ソウタに強く惹かれていることに気づいていたのだ。

「おい!笑い事じゃないぞ! こっちは真剣に相談してるんだ。三時間おきだぞ、三時間おきに同じことを聞かれるこっちの身にもなってみろ!」

 レオ・ロウは、ユノ・セリウスの態度に思わず声を荒げた。

 ユノ・セリウスは、謝りながらも楽しそうに提案した。

「すみません、すみません。ですが、いい案がありますよ。」

「今度、皇太子殿下がソウタ様の様子を聞いてきたら、ソウタ様を補佐官にしたらどうかと提案してみるのはどうでしょう?」

 レオ・ロウは、その言葉を聞いて、ハッと目を見開いた。

「……それはいい案だな!」

 彼は、ユノ・セリウスの提案に快諾した。
 これなら、皇太子殿下の傍にソウタを置くことができ、いちいち様子を聞かれることもなくなる。

 そして、三時間後。

 案の定、皇太子殿下の声が謁見の間に響いた。

「レオ・ロウ。ソウタ殿の様子はどうだ?」

 レオ・ロウは、待ってましたとばかりに、ルースに提案した。

「皇太子殿下。もし、ソウタ殿の容態がご心配なのであれば、いっそ殿下の補佐官にしてはどうかと」

「そうすれば、いつでもお側に置いて様子を見ることができますし、ソウタ殿も優秀な方ですから、殿下のお役に立つことでしょう」

 ルースは、レオ・ロウの提案を聞き、確かにそれはいい案だと考えた。
 しかし同時に、ある懸念が頭をよぎった。

「確かに……それはいい案だ……だが、私は以前の記憶がないのに、ソウタ殿をそばに置いてもいいのだろうか……」

 ルースは口ごもりながら、自身の胸中に芽生え始めている、記憶にない恋心について言及した。
 
 彼は、ソウタが自分に抱く感情(と報告されている)に応えることができない立場だと理解しているからこそ、傍にいることで、さらに苦しむのではないかと危惧していた。

 レオ・ロウは、ルースの言葉を聞き、ここぞとばかりに畳みかけた。

「もし、ソウタ殿を補佐官になさらないのであれば……どうか、三時間おきにソウタ殿の様子をお聞きになるのはおやめください、皇太子殿下!」

 レオ・ロウの切実な懇願に、ルースは観念したように息を吐いた。

「……仕方ない。ソウタ殿は有能だと聞くし、私情を挟むことはないだろう」

 ルースは、ソウタを補佐官にすることを決めた。
 
 それは彼の才覚を認めたからであり、同時に、心のどこかでソウタを傍に置きたいという、感情に突き動かされた結果でもあった。

「レオ・ロウ。すぐにソウタ殿に伝えるように」

 ルースは、レオ・ロウに命じた。
 その瞳には、再び、ソウタへの抑えきれない関心が宿っている。

 ――

 フランゼ侯爵邸。

 様々な騒動を経験したが、ソウタは無事に帝国の軍事学校を卒業した。
 
 これからは、生き残るためにあれこれと気を揉むことなく、のんびりと暮らせることに、ソウタはささやかな幸せを感じていた。

 侯爵邸で、読書をしたり、庭の手入れをしたりと、穏やかな日々を過ごしていた。

 しかし、その平穏は長くは続かなかった。

 それから間もなく、侯爵邸にレオ・ロウの姿が現れた。
 
 ソウタは、また何かあったのかと訝しむ間もなく、レオ・ロウに促されるまま、皇宮へと連行されることになった。

(また、どうして呼ばれたんだろう……?)

 ソウタは、心の中で混乱しながら、皇宮の謁見の間へと足を踏み入れた。
 
 玉座には、以前よりもさらに威厳を増した皇太子、ルースが座っている。

「皇太子殿下に謁見いたします!」

 ソウタは、レオ・ロウとユノ・セリウスと共に、深々と頭を下げた。

 ルースは、ソウタをじっと見つめ、静かに口を開いた。

「ソウタ殿。貴方は、サポーターとして非常に有能だと聞いている。そこで、私の補佐官として働かないか?」

 ルースの言葉に、ソウタは内心で、「え……めんどくさい……」と返事を渋った。
 
せっかくのんびりできると思っていたのに、また忙しい日々が始まるのかと思うと、気が進まなかったのだ。

 ルースは、ソウタの返事を渋る様子を見て、その表情を満面の笑みで確信した。

(やはり……私の傍にいると、私への感情が抑えられなくなり、辛すぎるのではないかと恐れているに違いない……ソウタ殿は、私を想ってくれているのだな……)

 ルースは、ソウタの躊躇を、自分への「愛ゆえの苦悩」だと解釈し、内心で喜びを噛み締めていた。

 その時、ソウタの本心に気づいたユノ・セリウスが、慌てて口を挟んだ。

「ソウタ様、もしよろしければ、オリオン殿も同じ部署で働くことになるかと……」

 ユノ・セリウスは、ソウタの「めんどくさい」という本音を察し、彼が興味を持つであろう情報を咄嗟に付け加えたのだ。

 ユノ・セリウスの言葉を聞いたソウタは、表情をパッと明るくした。

「オリオンも一緒に働くのか! それなら、楽しそうですね」

 ソウタは、あっさりと了承した。
 彼の頭の中には、オリオンとの楽しい仕事風景が浮かんでいた。

 ソウタの予想外のあっさりとした承諾に、ルースは少し納得いかない気がした。

 しかし、ソウタが自分のそばで働くことになるという事実に、ルースは内心で喜びを隠せないでいた。

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