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第一章 ヨナン・グラスホッパー編
107. 暴君アレクサンダー君
しおりを挟むアレクサンダー君が、立て続けにスライムを5匹程倒すと、
「この階層は、物足りんな」
そりゃあそうでしょう。
だって、アンタのステータス、
名前: アレクサンダー・カララム
職業: カララム王(お休み中)
称号: 若返り王 暴れん坊将軍
スキル: 剣術Lv.2、木魔法Lv.2、火魔法Lv.2、鑑定Lv.1
ユニークスキル: 身体強化Lv.2 魅了Lv.1
力: 1500
HP: 1200
MP: 1000
器用: 100
そう。『熊の鉄槌』のメンバー並の高ステータスなのだ。
普通に、カレンやアン姉ちゃんより強いし、このステータスなら、カララムダンジョンの最高到達階層記録を狙っても良いレベル。
それに、俺がちょっとだけ丁寧に作った剣と鎧も装備してるしね!
だけれども、決して、最高到達階層記録なんか狙わせない。
アレクサンダー君にもしもの事があったら、多分、俺、打首だしね。
傷さえ負わせても、絶対に殺されるし。
だって、今までだって、極度の姫プレイをやって来てたんだよ。
そんなアレクサンダー君を、危険な目に合わす事なんか出来るかよ!
とか、思ってたのも、我儘王アレクサンダー君には通用しませんでした。
「ヨナンよ! 上の階層に行くぞ!」
そりゃそうなるよね。
オーバースペックの俺が作った魔法剣で、いくらスライム倒してもつまらないし。
だって、スライムに向けて軽く一振すれば、勝手に火魔法が発動し、その火魔法が自動追尾してスライムに百発百中でヒットしてしまうのだ。
こんなの蚊を殺すより簡単。
あの素早いゴキだって、自動追尾機能で絶対に殺せてしまう優れもの。
アレ?これ売り出したら、爆売れしちゃうかも。
『ご主人様、何、現実逃避してるんですか!とっとと上の階層に行きますよ!』
鑑定スキルが、尻を叩いてくる。
人の気持ちも知らないで。
アレクサンダー君に怪我させたら、俺、殺されちゃうんだぞ!
『大丈夫ですよ! ご主人様が作った鎧装備してるんですから、例え、レッドドラゴンに踏まれても、アレクサンダー君は、傷一つつかないと思いますし!』
鑑定スキルが、俺の心を読んで教えてくれた。
「やっぱり、俺が作ったあの鎧、そんなに凄いの?」
『攻撃力8000ぐらいの敵の物理攻撃は全て弾きますし、上級魔法ぐらいなら、軽く弾きますよ。尚且つ、装備者のHP、MP自動回復機能まで付いてますし!』
「すげえな……」
『そんな装備を目を閉じて作っちゃうご主人様が、一番凄いんですからね!』
とか、仲良しの鑑定スキルとワチャワチャ話してると、
「10階層にショートカットする階段はどこじゃたかな?」
アレクサンダー君は、まさかの2階層に上がるんじゃなくて、10階層に向かうようである。
「あの……なんで10階層に続くショートカットがあるの知ってるんですか?」
「そんなの来たことあるからに、決まっとろうが!」
糞っーー! 誰がアレクサンダー君の姫プレイしたんだよ!
もっと下の階層で遊ばせとけばいいだろうに。
『まあ、アレクサンダー君の実力なら、10階層ぐらい余裕じゃないですか?』
「お前、俺が打首になったら、スキルのお前も死ぬ事分かってるのかよ!」
『分かってますけど、10階層ぐらい余裕ですって! そもそもアレクサンダー君のステータス自体が凄いですし、ご主人様が作った鎧まで装備してるんですよ!
それにもしもの事があったら、ご主人様が聖剣ムラサメを装備しちゃえばいいじゃないですか!
カララムダンジョンなんて、余裕に攻略できてしまいますって!』
「なるほどの~」
何故か、俺と鑑定スキルの会話に、アレクサンダー君が入ってくる。
というか、鑑定スキルの奴、アレクサンダー君にも、念話チャンネル繋げてたままだったのかよ。
得意の取捨選択、まるで出来てねーじゃねーか!
「それではヨナンよ。早速、カララムダンジョンを完全攻略してみせよ!」
アレクサンダー君が、尊大な態度で、俺に言い放ってきた。
「今から?」
「当たり前じゃろ! ワシとお前の2人だけで、難攻不落のカララムダンジョンを攻略したとなれば、お前だけでなく、ワシの名声も上がるのでな」
「アンタ、もう十分、名声持ってるでしょ!」
ヨナンは、ちょっとイラッとして、アレクサンダー君に対してアンタ呼ばわり。
こちとら、アレクサンダー君に怪我を負わさないで、カララムダンジョンを攻略しないといけないのだ。
カララムダンジョンを攻略するにしても、グッと、難易度が上がるのである。
「ワシが名声を持っている? そんな訳あるか! 先の大戦では、英雄エドソンが現れなければ負け戦だったし、それからバカ息子のせいで、ワシの威厳もガタガタじゃわい!
息子がAV男優の王様の気持ちが、お主に分かるのか!」
それを言われると、ヨナンも申し訳ない気持ちになる。
だって、アスカとルイ王子の濡れ場を録画したのは俺だし、それを断罪パーティーで流したのも俺の指示。
市場に流したのはエリザベスだが、やっぱり俺が原因で間違いない。
『ご主人様、カララムダンジョンの攻略ぐらい、やって上げましょうよ。
だって、このままだと、アレクサンダー君、息子がAV男優になるのを止められなかった、カララム王国史上もっとも残念な王様になってしまいますよ!』
「だな。息子が、自分が統治してる国民達のオカズになってしまってる残念な王様という話で、歴史の教科書に載ってしまうなんて、流石に可哀想過ぎるか……」
「お主ら……もうちょっとオブラートに包めぬものか? 余りに度が過ぎる物言いをするなら、不敬罪でお主らを打首にする事も出来るという事を、ゆめゆめ忘れるでないぞ!」
「「すみませんでした!」」
アレクサンダー君は、どうやら暴君で間違いないようだった。
ーーー
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