2 / 51
2 優しい夫
しおりを挟む
朝食の席に着くと、アランが声をかけた。
「アンジェ、もうすぐ私たちが結婚して五年になるだろう?その記念パーティーを開こうと思っているんだがどうだ?」
「あら……本当によろしいのですか?」
普通、貴族が結婚記念日にパーティーを開くことはほとんど無い。
開催するにはかなりお金がかかるし、準備も必要だからだ。
(わざわざパーティーを開いてくれるだなんて……)
本当に彼に大切にされているのだなと改めて感じた。
「私のために……ありがとうございます、旦那様」
「私たちにとって大切な日なのだから当然のことだ」
そう言いながら彼は机の上に置かれていた私の手を握った。
彼の手の温もりが伝わってくる。
思えば、アランは最初からとても優しい人だった。
周囲にどれだけ釣り合わないと言われようと、彼の強い望みで私との婚約を継続し続けた。
私を貶めようとする他の貴族令嬢たちから守ってくれたのも彼だった。
私の自慢の夫だ。
「それと、パーティーで着るドレスは私から贈らせてほしい。とびきり君に似合うのを選ぶよ」
「まぁ……ありがとうございます」
彼は私に定期的に贈り物をしてくれている。
宝石やドレスなど、伯爵家にいた頃は手に入らなかったような物をたくさん贈ってくれた。
(前にも貰ったばかりなのにまたドレスを贈ってくれるだなんて……)
彼の優しさに胸がトクンと高鳴った。
アランを愛するこの気持ちは永遠に変わることなど無いだろう。
彼となら一生を添い遂げられる自信がある。
――例え、私たちの間に子供が出来なかったとしても。
「旦那様、大奥様からお手紙が届いております」
「……母上から?」
侍従から渡された一通の手紙に、アランは眉をひそめた。
何が書かれているか分かっているかのような反応だ。
そして私も、内容にはある程度心当たりがあった。
(きっと後継者のことだわ……)
彼の母親である先代公爵夫人は会うたびに子はまだ出来ないのかとしつこく尋ねた。
アランが公爵家の一人息子である以上、後継者問題は避けては通れない道だ。
それは私も分かっている。
彼もこの問題にはとても敏感だった。
周囲から愛人を勧められることも多いようだが、彼は断固として拒否している。
結婚式の日、彼は私以外の女性と関係を持たないことを固く誓ってくれたからだ。
(だけど、正妻に子が出来ないのなら他の女性と作るしか……)
「――アンジェ」
「……旦那様?」
不安げに俯いていると、彼が両手で私の手をギュッと握った。
「母上には私から言っておくから、君は何も心配しなくていい」
「旦那様……」
「子供が出来なかったら分家から養子を取ればいいだけのことだ。母上には口出しさせないさ、公爵家のことに関する決定権は全て私にあるのだから」
「……!」
彼のこの優しさに何度救われたことか。
こんなにも優しい人は他にいないだろう。
「だから今はパーティーのことだけを考えよう。きっと楽しい会になるはずだ」
「はい、旦那様」
ゆっくりと頷きながら彼の手を握り返した。
「アンジェ、もうすぐ私たちが結婚して五年になるだろう?その記念パーティーを開こうと思っているんだがどうだ?」
「あら……本当によろしいのですか?」
普通、貴族が結婚記念日にパーティーを開くことはほとんど無い。
開催するにはかなりお金がかかるし、準備も必要だからだ。
(わざわざパーティーを開いてくれるだなんて……)
本当に彼に大切にされているのだなと改めて感じた。
「私のために……ありがとうございます、旦那様」
「私たちにとって大切な日なのだから当然のことだ」
そう言いながら彼は机の上に置かれていた私の手を握った。
彼の手の温もりが伝わってくる。
思えば、アランは最初からとても優しい人だった。
周囲にどれだけ釣り合わないと言われようと、彼の強い望みで私との婚約を継続し続けた。
私を貶めようとする他の貴族令嬢たちから守ってくれたのも彼だった。
私の自慢の夫だ。
「それと、パーティーで着るドレスは私から贈らせてほしい。とびきり君に似合うのを選ぶよ」
「まぁ……ありがとうございます」
彼は私に定期的に贈り物をしてくれている。
宝石やドレスなど、伯爵家にいた頃は手に入らなかったような物をたくさん贈ってくれた。
(前にも貰ったばかりなのにまたドレスを贈ってくれるだなんて……)
彼の優しさに胸がトクンと高鳴った。
アランを愛するこの気持ちは永遠に変わることなど無いだろう。
彼となら一生を添い遂げられる自信がある。
――例え、私たちの間に子供が出来なかったとしても。
「旦那様、大奥様からお手紙が届いております」
「……母上から?」
侍従から渡された一通の手紙に、アランは眉をひそめた。
何が書かれているか分かっているかのような反応だ。
そして私も、内容にはある程度心当たりがあった。
(きっと後継者のことだわ……)
彼の母親である先代公爵夫人は会うたびに子はまだ出来ないのかとしつこく尋ねた。
アランが公爵家の一人息子である以上、後継者問題は避けては通れない道だ。
それは私も分かっている。
彼もこの問題にはとても敏感だった。
周囲から愛人を勧められることも多いようだが、彼は断固として拒否している。
結婚式の日、彼は私以外の女性と関係を持たないことを固く誓ってくれたからだ。
(だけど、正妻に子が出来ないのなら他の女性と作るしか……)
「――アンジェ」
「……旦那様?」
不安げに俯いていると、彼が両手で私の手をギュッと握った。
「母上には私から言っておくから、君は何も心配しなくていい」
「旦那様……」
「子供が出来なかったら分家から養子を取ればいいだけのことだ。母上には口出しさせないさ、公爵家のことに関する決定権は全て私にあるのだから」
「……!」
彼のこの優しさに何度救われたことか。
こんなにも優しい人は他にいないだろう。
「だから今はパーティーのことだけを考えよう。きっと楽しい会になるはずだ」
「はい、旦那様」
ゆっくりと頷きながら彼の手を握り返した。
932
あなたにおすすめの小説
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる