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4 異変
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あの後のことはあまりよく覚えてない。
パーティー会場から本邸へ帰る間、彼は一度も私の方を見ることなく、ただ何かをじっと考え込んでいるようだった。
「旦那様は……いらっしゃらないのかしら……」
「お忙しいようで、今日は自室でお休みになられるとのことです」
「そう……」
パーティーでのアランの姿が永遠に頭から離れなかった。
いつも優しい言葉をかけてくれるはずの彼がどこか上の空で、常に誰かを探しているかのように辺りをキョロキョロ見回していた。
公衆の面前でそんなことをするだなんて、彼らしくない。
(それより、どうしてこんなにも不安なんだろう……)
アランと出会ってから二十年以上経つが、彼のそのような姿はこれまで一度も見たことが無かった。
特に、私にはたったの一度も向けてくれたことの無いあの目が気にかかった。
私の勘が当たっているのなら、あれはたしかに――
そこまで考えてハッとなった。
(私ったら何を考えているの……彼がそんなことするはずがないわ……)
心の中では必死にそう言い聞かせるが、不安感はいつまで経っても拭えなかった。
(ひとまず、今日はもう寝ましょう……)
考えても仕方の無いことだと思い、ベッドに入って横になった。
***
翌日の朝。
何故かいつもより体が重かった。
複雑な思いを抱いたまま寝たからだろうか。
あまり疲れが取れなかったようだ。
「奥様、おはようございます……」
「ええ、おはよう……」
疲れ切った顔の私に、侍女が遠慮がちに声をかけた。
(侍女にまで同情されてしまうだなんて……)
こんな惨めな思いをしたのは初めてだ。
ここへ来てからというもの、優しい夫と親切な使用人たちに囲まれて幸せを感じたことしかなかったから。
自分や周囲がどれだけ変わろうと、いつものように朝はやってくる。
眩しすぎるほど差し込む日の光も、見慣れた部屋も、幸せの絶頂だった昨日のままだ。
着替えをしていると、侍女が言いづらそうに口を開いた。
「奥様、今日旦那様はこちらへはいらっしゃらないようです……」
「そう……」
何となく予想がついていた。
いつもならとっくに部屋へ来ているはずの彼がいつまで経っても訪れなかったから。
(こんなこと……今までにあったかな……)
彼を愛する気持ちに変わりはない。
だからこそ、不安でたまらなかった。
「……今日は一人で行くわ」
「はい、奥様」
仕方の無いことだと諦め、私は一人で部屋を出た。
いつも歩いているはずの廊下がとても広く感じるのは隣に彼がいないからだろう。
この時間帯に一人で歩くことなどほとんど無いからか、何だか違和感を感じる。
「……」
扉の前まで来ると、妙な緊張感が私を襲った。
彼に会えるとなるといつも胸がときめいて仕方がないのに、今日は何故だか気まずかった。
「旦那様、アンジェです」
「……ああ」
扉を開けて中に入った。
「……」
部屋の中ではアランが先に席に着いていた。
視線を少し下に向け、何かを考え込んでいるようにじっとしている。
(……もしかして、今も彼女のことを考えているの?)
彼の瞳に昨日から私は映っていない。
パーティー会場から本邸へ帰る間、彼は一度も私の方を見ることなく、ただ何かをじっと考え込んでいるようだった。
「旦那様は……いらっしゃらないのかしら……」
「お忙しいようで、今日は自室でお休みになられるとのことです」
「そう……」
パーティーでのアランの姿が永遠に頭から離れなかった。
いつも優しい言葉をかけてくれるはずの彼がどこか上の空で、常に誰かを探しているかのように辺りをキョロキョロ見回していた。
公衆の面前でそんなことをするだなんて、彼らしくない。
(それより、どうしてこんなにも不安なんだろう……)
アランと出会ってから二十年以上経つが、彼のそのような姿はこれまで一度も見たことが無かった。
特に、私にはたったの一度も向けてくれたことの無いあの目が気にかかった。
私の勘が当たっているのなら、あれはたしかに――
そこまで考えてハッとなった。
(私ったら何を考えているの……彼がそんなことするはずがないわ……)
心の中では必死にそう言い聞かせるが、不安感はいつまで経っても拭えなかった。
(ひとまず、今日はもう寝ましょう……)
考えても仕方の無いことだと思い、ベッドに入って横になった。
***
翌日の朝。
何故かいつもより体が重かった。
複雑な思いを抱いたまま寝たからだろうか。
あまり疲れが取れなかったようだ。
「奥様、おはようございます……」
「ええ、おはよう……」
疲れ切った顔の私に、侍女が遠慮がちに声をかけた。
(侍女にまで同情されてしまうだなんて……)
こんな惨めな思いをしたのは初めてだ。
ここへ来てからというもの、優しい夫と親切な使用人たちに囲まれて幸せを感じたことしかなかったから。
自分や周囲がどれだけ変わろうと、いつものように朝はやってくる。
眩しすぎるほど差し込む日の光も、見慣れた部屋も、幸せの絶頂だった昨日のままだ。
着替えをしていると、侍女が言いづらそうに口を開いた。
「奥様、今日旦那様はこちらへはいらっしゃらないようです……」
「そう……」
何となく予想がついていた。
いつもならとっくに部屋へ来ているはずの彼がいつまで経っても訪れなかったから。
(こんなこと……今までにあったかな……)
彼を愛する気持ちに変わりはない。
だからこそ、不安でたまらなかった。
「……今日は一人で行くわ」
「はい、奥様」
仕方の無いことだと諦め、私は一人で部屋を出た。
いつも歩いているはずの廊下がとても広く感じるのは隣に彼がいないからだろう。
この時間帯に一人で歩くことなどほとんど無いからか、何だか違和感を感じる。
「……」
扉の前まで来ると、妙な緊張感が私を襲った。
彼に会えるとなるといつも胸がときめいて仕方がないのに、今日は何故だか気まずかった。
「旦那様、アンジェです」
「……ああ」
扉を開けて中に入った。
「……」
部屋の中ではアランが先に席に着いていた。
視線を少し下に向け、何かを考え込んでいるようにじっとしている。
(……もしかして、今も彼女のことを考えているの?)
彼の瞳に昨日から私は映っていない。
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