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11 愛人
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「別れることはできないって、それは一体どういうことですか……?」
「言葉通りの意味だ」
わけが分からず、彼を問い詰めた。
「それはつまり、彼女との縁を切るつもりは無いということでよろしいですか?」
「……」
沈黙がまさに肯定を意味していた。
アランは彼女との愛を諦めることが出来ないようだ。
私以外の女性と関係を持たないという結婚式での誓いなど、その愛の前では何の意味も無いものなのだろう。
(こんな情けない男だったかしら……)
一度誓った約束すら守れないだなんて。
どうやら私は彼を買いかぶっていたようだ。
「本気でそのようなことを言っているのですか……」
「……」
黙り込んで何も言わない彼の姿に、苛立ちがこみ上げてくる。
ついに我慢の限界を迎えた私は、彼にあることを尋ねた。
「何故、男爵令嬢との縁を切ることが出来ないのですか……?」
知らない方が自分にとって良いはずだ、と心の中で思いながらどうしても聞かずにはいられなかった。
知ればきっと後悔する。
そんなこと分かりきっていた。
それでも聞いたのは、彼を信じる気持ちが僅かに残っているからだろうか。
「…………彼女を愛しているからだ」
あぁ、やっぱり聞かなければよかった。
彼への愛が、長い年月をかけて積み上げてきた信頼が音を立てて崩れていった。
彼は私を気遣う様子も無く、ただそれだけ述べた。
愛してしまったから。
自分の気持ちに嘘はつけないのだろう。
膝の上で握りしめた拳が小刻みに震えた。
しかし今は苛立っていても仕方がない。
(困ったわね……アランが男爵令嬢を本気で愛しているのなら……)
私は一体どうなるのだろう。
離婚という選択肢が頭をよぎる。
どのみち私たちの間に子供はいなかったから、離婚するのはそれほど難しいことでも無い。
男爵令嬢との間に真実の愛を見つけた彼ならやりかねないことだ。
(離婚は悲しいけれど、愛人の元へ通う夫の傍に居続けるよりかは……)
彼の心が男爵令嬢にある以上、私にはどうすることも出来ない。
こればっかりは仕方がなかった。
たとえ離婚されたとしても、優しい両親はきっと受け入れてくれるはずだ。
「……では、私とは離婚するということで」
「――それは出来ない」
「…………え?」
彼は離婚の提案を拒否した。
彼女を愛しているというのに、私と離婚出来ないとは一体どういうことか。
「君と離婚は出来ない」
「……何故ですか?」
「離婚だなんて世間体が悪くなるだろう……家同士の付き合いもあるし……」
「……」
可笑しくて、笑いが出そうになった。
私とは世間体のために離婚出来ない。
彼女のことは愛しているから別れられない。
(どこまでも自分のことしか考えないのね)
離婚して傷が付くのは貴方では無く私の方だ。
もちろん、常に男爵令嬢で頭がいっぱいな彼はそんなこと気にもしていないだろうけど。
「……では、どうなさるおつもりで?」
「……彼女を愛人にしようと思う」
「……そうですか」
予想していた通りの答えだった。
彼を信じていた自分が馬鹿らしい。
こんな男に恋をしていただなんて。
何だかもう全てどうでもよくなってしまった。
(彼女を深く愛しているというわりには世間体を気にして離婚も出来ず、愛人にするだなんて……)
呆れて反対することさえ出来なかった。
「……旦那様の好きなようにすればよろしいですわ、私は彼女のことに関しては一切口を挟みませんから」
「……」
夫に失望した私はそれだけ言って部屋を出て行った。
彼は何も言わなかったけれど、その言葉に安心したように見えた。
「言葉通りの意味だ」
わけが分からず、彼を問い詰めた。
「それはつまり、彼女との縁を切るつもりは無いということでよろしいですか?」
「……」
沈黙がまさに肯定を意味していた。
アランは彼女との愛を諦めることが出来ないようだ。
私以外の女性と関係を持たないという結婚式での誓いなど、その愛の前では何の意味も無いものなのだろう。
(こんな情けない男だったかしら……)
一度誓った約束すら守れないだなんて。
どうやら私は彼を買いかぶっていたようだ。
「本気でそのようなことを言っているのですか……」
「……」
黙り込んで何も言わない彼の姿に、苛立ちがこみ上げてくる。
ついに我慢の限界を迎えた私は、彼にあることを尋ねた。
「何故、男爵令嬢との縁を切ることが出来ないのですか……?」
知らない方が自分にとって良いはずだ、と心の中で思いながらどうしても聞かずにはいられなかった。
知ればきっと後悔する。
そんなこと分かりきっていた。
それでも聞いたのは、彼を信じる気持ちが僅かに残っているからだろうか。
「…………彼女を愛しているからだ」
あぁ、やっぱり聞かなければよかった。
彼への愛が、長い年月をかけて積み上げてきた信頼が音を立てて崩れていった。
彼は私を気遣う様子も無く、ただそれだけ述べた。
愛してしまったから。
自分の気持ちに嘘はつけないのだろう。
膝の上で握りしめた拳が小刻みに震えた。
しかし今は苛立っていても仕方がない。
(困ったわね……アランが男爵令嬢を本気で愛しているのなら……)
私は一体どうなるのだろう。
離婚という選択肢が頭をよぎる。
どのみち私たちの間に子供はいなかったから、離婚するのはそれほど難しいことでも無い。
男爵令嬢との間に真実の愛を見つけた彼ならやりかねないことだ。
(離婚は悲しいけれど、愛人の元へ通う夫の傍に居続けるよりかは……)
彼の心が男爵令嬢にある以上、私にはどうすることも出来ない。
こればっかりは仕方がなかった。
たとえ離婚されたとしても、優しい両親はきっと受け入れてくれるはずだ。
「……では、私とは離婚するということで」
「――それは出来ない」
「…………え?」
彼は離婚の提案を拒否した。
彼女を愛しているというのに、私と離婚出来ないとは一体どういうことか。
「君と離婚は出来ない」
「……何故ですか?」
「離婚だなんて世間体が悪くなるだろう……家同士の付き合いもあるし……」
「……」
可笑しくて、笑いが出そうになった。
私とは世間体のために離婚出来ない。
彼女のことは愛しているから別れられない。
(どこまでも自分のことしか考えないのね)
離婚して傷が付くのは貴方では無く私の方だ。
もちろん、常に男爵令嬢で頭がいっぱいな彼はそんなこと気にもしていないだろうけど。
「……では、どうなさるおつもりで?」
「……彼女を愛人にしようと思う」
「……そうですか」
予想していた通りの答えだった。
彼を信じていた自分が馬鹿らしい。
こんな男に恋をしていただなんて。
何だかもう全てどうでもよくなってしまった。
(彼女を深く愛しているというわりには世間体を気にして離婚も出来ず、愛人にするだなんて……)
呆れて反対することさえ出来なかった。
「……旦那様の好きなようにすればよろしいですわ、私は彼女のことに関しては一切口を挟みませんから」
「……」
夫に失望した私はそれだけ言って部屋を出て行った。
彼は何も言わなかったけれど、その言葉に安心したように見えた。
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