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22 約束
「奥様、旦那様が朝食を共にしたいとおっしゃっています」
「……アランが?」
アランと話し合いをした翌日の朝。
突然彼から食事に誘われた。
(彼が別邸へ帰らず本邸で寝るだなんて……よっぽど私の妊娠に動揺したみたいね)
いつもならすぐにブリアナの元へ戻っているアランが公爵邸に留まったのだ。
驚かないわけがない。
「それと……こちらは旦那様からの贈り物です」
「赤い薔薇……?」
赤い薔薇は私が一番好きだった花だ。
そのことは彼もよく知っている。
――今となっては何の意味も無いが。
「奥様、朝食へ行かれますか?」
「そうね……たまには良いでしょう」
彼と話すことなんて何も無いものの、ここで断ると面倒なことになると思った私は彼と食事を摂るために部屋を出た。
***
部屋へ入ると、アランが先に席に着いていた。
「旦那様、遅くなってすみません」
「いいや、気にしないでくれ。私が早く来ただけだ」
「……」
そう口にしたアランの表情は以前よりも柔らかい。
まるで彼とブリアナが出会う前に戻ったみたいだ。
(前までは一時間以上遅れることもざらにあったのに……)
今日はこんなに早く来るだなんて。
彼の変化に笑いそうになってしまった。
椅子に座って食事を始めると、彼が声をかけてきた。
「ところで……生まれてくる子の名前はもう決めたのか?」
「いえ、まだ……」
「私たちの最初の子だ。何か特別な意味のある名前にしたい」
「……」
「君に似ていたらとても可愛いだろうな」
「……」
異様なほど優しい声が不愉快だった。
(妊娠したと分かった途端急に掌を返すだなんてね……)
彼が後継者を強く望んでいることは前々から知っていた。
決して私との子だから喜んでいるというわけではない。
「ところで……昨日話した件はどのようにお考えですか」
「昨日……?」
「守っていただきたい約束のことです」
そこで彼は昨日の話し合いを思い出したのか、ハッとなった。
それからしばらく考え込む素振りを見せた後、口を開いた。
「……後継者を君の子にするというのは良いだろう。しかし、ブリアナが君たち母子に手を出すなんてそんなこと……」
「私も彼女がそのようなことをする人だとは思っていません。念のために言っているだけです」
「そうか……」
当然、今の言葉は私の本心ではない。
アランを納得させるために言ったことだ。
「理解していただけたならこの後、書類にサインしてもらいます」
「……そこまでしないといけないのか?」
「ええ、大事なことですから」
アランは渋っていたが、私との関係を余計に悪化させたくないのか結局は首を縦に振った。
「それと、もう一つだけ約束していただきたいことがあります」
「何だ?」
「もし仮に、ジョルジュ男爵令嬢が私や子に手を出した場合……そのときは彼女の処遇を私に一任していただきたいのです」
「……」
ブリアナの名を出した途端、彼の顔色が変わった。
愛する女性がそのようなことをするわけがないと信じているのだろう。
もちろん、私もそうであればいいと思っているが。
「……分かった、そんなことにはならないと思うが……要求を呑もう」
「ありがとうございます、旦那様」
「……アランが?」
アランと話し合いをした翌日の朝。
突然彼から食事に誘われた。
(彼が別邸へ帰らず本邸で寝るだなんて……よっぽど私の妊娠に動揺したみたいね)
いつもならすぐにブリアナの元へ戻っているアランが公爵邸に留まったのだ。
驚かないわけがない。
「それと……こちらは旦那様からの贈り物です」
「赤い薔薇……?」
赤い薔薇は私が一番好きだった花だ。
そのことは彼もよく知っている。
――今となっては何の意味も無いが。
「奥様、朝食へ行かれますか?」
「そうね……たまには良いでしょう」
彼と話すことなんて何も無いものの、ここで断ると面倒なことになると思った私は彼と食事を摂るために部屋を出た。
***
部屋へ入ると、アランが先に席に着いていた。
「旦那様、遅くなってすみません」
「いいや、気にしないでくれ。私が早く来ただけだ」
「……」
そう口にしたアランの表情は以前よりも柔らかい。
まるで彼とブリアナが出会う前に戻ったみたいだ。
(前までは一時間以上遅れることもざらにあったのに……)
今日はこんなに早く来るだなんて。
彼の変化に笑いそうになってしまった。
椅子に座って食事を始めると、彼が声をかけてきた。
「ところで……生まれてくる子の名前はもう決めたのか?」
「いえ、まだ……」
「私たちの最初の子だ。何か特別な意味のある名前にしたい」
「……」
「君に似ていたらとても可愛いだろうな」
「……」
異様なほど優しい声が不愉快だった。
(妊娠したと分かった途端急に掌を返すだなんてね……)
彼が後継者を強く望んでいることは前々から知っていた。
決して私との子だから喜んでいるというわけではない。
「ところで……昨日話した件はどのようにお考えですか」
「昨日……?」
「守っていただきたい約束のことです」
そこで彼は昨日の話し合いを思い出したのか、ハッとなった。
それからしばらく考え込む素振りを見せた後、口を開いた。
「……後継者を君の子にするというのは良いだろう。しかし、ブリアナが君たち母子に手を出すなんてそんなこと……」
「私も彼女がそのようなことをする人だとは思っていません。念のために言っているだけです」
「そうか……」
当然、今の言葉は私の本心ではない。
アランを納得させるために言ったことだ。
「理解していただけたならこの後、書類にサインしてもらいます」
「……そこまでしないといけないのか?」
「ええ、大事なことですから」
アランは渋っていたが、私との関係を余計に悪化させたくないのか結局は首を縦に振った。
「それと、もう一つだけ約束していただきたいことがあります」
「何だ?」
「もし仮に、ジョルジュ男爵令嬢が私や子に手を出した場合……そのときは彼女の処遇を私に一任していただきたいのです」
「……」
ブリアナの名を出した途端、彼の顔色が変わった。
愛する女性がそのようなことをするわけがないと信じているのだろう。
もちろん、私もそうであればいいと思っているが。
「……分かった、そんなことにはならないと思うが……要求を呑もう」
「ありがとうございます、旦那様」
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