文字の大きさ
大
中
小
27 / 51
27 企み
「奥様、ご懐妊おめでとうございます」
「…………ありがとう」
エイベル殿下が公爵邸へ来てから数日後。
何とブリアナが私の妊娠を祝いに本邸へ訪れた。
(一体何を企んでいるというの……?)
花束を持つ彼女の口元には笑みが浮かんでいたが、目は笑っていなかった。
「だけど驚いたわ、貴方がこうしてわざわざ祝いに来てくれるだなんてね」
「当然のことです、アラン様と奥様に待望の世継ぎが出来るのですから」
彼女にとって私の懐妊は想定外だったはずだ。
祝福などしているわけがない。
「アラン様ったら、奥様に子が出来て毎日とても嬉しそうにしていますわ」
「……そう、それは良かったわ」
私が妊娠してからというもの、アランがブリアナの元へ行く頻度は以前よりも圧倒的に少なくなった。
彼女の性格上、そのことを不快に思わないわけがなかった。
だからこそ、その笑みが恐ろしかった。
彼女は今何を思っているのだろう。
(もし、この子に危害を加えようとしていたら……)
身体に自然と力が入り、我が子を守るようにお腹に手を置いた。
何が何でもこの子だけは守らなければ。
「ところで……私が前に奥様ともっと親しくしたいと言ったことを覚えていますか?」
「ええ、覚えているわ」
当然、覚えている。
忘れられるはずがない。
ブリアナがアランの愛人となり、わざわざ本邸へ挨拶に来た日のことだ。
夫の愛人と仲良くするつもりなど無いから特に気に留めていなかったが、今になってその話を持ち出してくるとは。
「是非今度、私のお茶会へいらしてください」
「……茶会?」
冷たい声で聞き返した私に、彼女はフフッと笑って頷いた。
「ええ、奥様と二人きりでたくさんお話したいんです」
「私と話……?」
こっちはブリアナと話すことなど何も無い。
それに妊娠中の私に対して、わざわざ別邸へ足を運べとは何様のつもりなのだろうか。
なかなか答えを出せずにいると、ブリアナが落ち込んだように俯いた。
「もしかして……私と二人きりは気まずいでしょうか?」
「……いいえ、そんなことはないわ」
彼女の顔がパァッと明るくなった。
「では是非お茶会にいらしてください!美味しい紅茶やお菓子をたくさん用意して待ってます!」
「……ええ、分かったわ」
満面の笑みを浮かべるブリアナ。
そんな彼女を見た私は、引きつった顔でコクリと頷いた。
(ホンット、ブリアナと話していると疲れるわ)
彼女が目の前から立ち去った後、侍女が声をかけてきた。
「ブリアナ様はお帰りになられましたか?」
「ええ、たった今帰ったわ」
私はしばらく彼女が出て行った扉をじっと見つめていた。
「ところで……新しいドレスを用意してくれる?」
「ドレス……?何かパーティーでもあるのですか?」
「いいえ、ブリアナのお茶会に参加するの」
「え!?」
驚いた侍女が声を上げた。
「奥様、ブリアナ様は旦那様の愛人です。妊娠中の奥様に何をしでかすか分かりません。行くのは危険かと……」
「ええ、そんなこと分かっているわ」
「……では、どうして……」
「――彼女に自分の立場というものを分からせるためよ」
「…………ありがとう」
エイベル殿下が公爵邸へ来てから数日後。
何とブリアナが私の妊娠を祝いに本邸へ訪れた。
(一体何を企んでいるというの……?)
花束を持つ彼女の口元には笑みが浮かんでいたが、目は笑っていなかった。
「だけど驚いたわ、貴方がこうしてわざわざ祝いに来てくれるだなんてね」
「当然のことです、アラン様と奥様に待望の世継ぎが出来るのですから」
彼女にとって私の懐妊は想定外だったはずだ。
祝福などしているわけがない。
「アラン様ったら、奥様に子が出来て毎日とても嬉しそうにしていますわ」
「……そう、それは良かったわ」
私が妊娠してからというもの、アランがブリアナの元へ行く頻度は以前よりも圧倒的に少なくなった。
彼女の性格上、そのことを不快に思わないわけがなかった。
だからこそ、その笑みが恐ろしかった。
彼女は今何を思っているのだろう。
(もし、この子に危害を加えようとしていたら……)
身体に自然と力が入り、我が子を守るようにお腹に手を置いた。
何が何でもこの子だけは守らなければ。
「ところで……私が前に奥様ともっと親しくしたいと言ったことを覚えていますか?」
「ええ、覚えているわ」
当然、覚えている。
忘れられるはずがない。
ブリアナがアランの愛人となり、わざわざ本邸へ挨拶に来た日のことだ。
夫の愛人と仲良くするつもりなど無いから特に気に留めていなかったが、今になってその話を持ち出してくるとは。
「是非今度、私のお茶会へいらしてください」
「……茶会?」
冷たい声で聞き返した私に、彼女はフフッと笑って頷いた。
「ええ、奥様と二人きりでたくさんお話したいんです」
「私と話……?」
こっちはブリアナと話すことなど何も無い。
それに妊娠中の私に対して、わざわざ別邸へ足を運べとは何様のつもりなのだろうか。
なかなか答えを出せずにいると、ブリアナが落ち込んだように俯いた。
「もしかして……私と二人きりは気まずいでしょうか?」
「……いいえ、そんなことはないわ」
彼女の顔がパァッと明るくなった。
「では是非お茶会にいらしてください!美味しい紅茶やお菓子をたくさん用意して待ってます!」
「……ええ、分かったわ」
満面の笑みを浮かべるブリアナ。
そんな彼女を見た私は、引きつった顔でコクリと頷いた。
(ホンット、ブリアナと話していると疲れるわ)
彼女が目の前から立ち去った後、侍女が声をかけてきた。
「ブリアナ様はお帰りになられましたか?」
「ええ、たった今帰ったわ」
私はしばらく彼女が出て行った扉をじっと見つめていた。
「ところで……新しいドレスを用意してくれる?」
「ドレス……?何かパーティーでもあるのですか?」
「いいえ、ブリアナのお茶会に参加するの」
「え!?」
驚いた侍女が声を上げた。
「奥様、ブリアナ様は旦那様の愛人です。妊娠中の奥様に何をしでかすか分かりません。行くのは危険かと……」
「ええ、そんなこと分かっているわ」
「……では、どうして……」
「――彼女に自分の立場というものを分からせるためよ」
感想
あなたにおすすめの小説
さようなら、お別れしましょう
椿蛍「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
【完結】恋は、終わったのです
楽歩幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
婚約しても幼馴染を愛し続けるのですね
のあざみ婚約したというのに、婚約者の様子がおかしかった。
どうやら婚約者は幼馴染のことを忘れられないようだった。
幼馴染のことを愛し続けるなんて許されるはずがないのに。
【完結】あなたの隣に私は必要ですか?
らんか政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。
しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。
そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。
月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。
そんな状況で、アリーシアは思う。
私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。
* 短編です。
ご感想欄は都合により、閉じさせて頂きます。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……