愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの

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30 決意 ブリアナ視点

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「……」


アンジェが部屋を出て行ってから、私は微動だにせず拳をギュッと握りしめて座っていた。


――『貴方では、どれだけ頑張っても彼の正妻になどなれないのよ』


彼女に言われた言葉が頭から離れない。
アランを深く愛している私にとってそれは死刑宣告も同然だった。


お飾りの妻であるアンジェを蹴落とし、自分が公爵夫人となりアランの横に立つ。
密かに思い描いていた理想のストーリーがゆっくりと崩壊していく。


(私ではアラン様の正妻になれないですって……?)


そんなことあるはずがない。
だって彼は私を一番に愛しているのだから。


アランだって、本当はさっさとアンジェと離婚して私を妻に迎えたいに違いない。
ただアンジェの身分が高いから出来ないというだけで、彼の気持ちは私にある。


今だって、子供が出来たから仕方なく本邸に帰っているだけだ。
彼も強引に結婚させられた女より、愛する私といたいはず。


(惨めで醜い女……寵愛も得られないのに未だに彼にしがみつくだなんて)


妊娠さえしなければこれまで通りアランに見向きもされなかったはずだ。
ただちょっと魔が差しただけで、彼の心は変わらずに私のもの。
そう思うことで何とか耐えた。


「――セイラ」
「はい、ブリアナ様」


セイラは男爵家にいた頃からの専属侍女だ。
私の手足も同然で、最も信頼の置ける女である。


「バインベルク公爵夫人に相応しいのは誰かしら?」
「ブリアナ様でございます」


セイラはさも当然といったようにそう答えた。


(やっぱり、彼に最も似合うのは私)


私の様子がおかしいことに気が付いたのか、セイラが心配そうに声をかけた。


「ブリアナ様、あの女に何か言われたのですか?」
「……私では絶対に公爵夫人になれないと言われたわ」
「……何ですって?」


セイラが眉をピクリとさせた。


「公爵夫人に相応しいのは間違いなくブリアナ様でございます。旦那様の寵愛がブリアナ様にあるのは誰から見ても明白です」
「ええ、その通りだわ」


セイラは出会った頃から美しい私に心酔している。
だから絶対に私を裏切ることは無い。


「あの女、私に立場を分からせるとか言っていたわ」
「何を馬鹿なことを……立場を分かっていないのはあの女の方ですよ」


彼女の言う通りだ。
子供が出来たからって偉そうに。


(彼の隣に立つべきは私よ……私以外ありえないわ……)


あんな風に言われると余計に奪いたくなるものだ。
一度心についた火はそう簡単には消えなかった。


(絶対蹴落としてやるんだから)


――どんな手を使ってでも、公爵夫人の座を手に入れてやる。



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