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30 ダリルの決意
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「……義姉上、ちょっといいか」
「……ダリル様?」
調査を始めてから数日、屋敷の中で彼が私に声をかけた。
使用人の目があるため、堂々と屋敷内で会うことは出来ない。
私たちの立場を考えると当然のことだった。
「あの日、義姉上に言われたことについて考えてみたんだ」
「……」
彼は神妙な面持ちで自身の心境を語り始めた。
「……俺は、ずっと幸福を得る資格なんて無いと思っていた」
「……ダリル様」
「幼い頃からずっと先代公爵に言われ続けてきた。お前の父親は罪を犯した。お前は生かしてもらっているだけ有難いのだと。だからその恩に報いるように生きろと」
幼い子供に何てことを言うんだろう。
彼は何の罪も犯していないというのに。
「それから俺は後継者の座を諦め、騎士となることを選んだ。公爵家が繁栄するためなら汚れ仕事だって平然とやってみせた」
「……」
「だけど、あの日お前に言われて考えが変わった」
そこで彼は私と真っ直ぐに見据えた。
綺麗な赤い瞳が私を射抜く。
真剣な彼の表情に、胸がときめく。
「――俺は、これからは自分のために、そしてお前のために生きていきたい」
「ダリル様……!」
「俺も協力させてくれ、義姉上――いや、リーゼ」
そう言いながら彼は私の手をギュッと握った。
「はい、二人で共に未来を築いていきましょう」
「ああ」
***
ダリルが私の協力者となった。
私たちの関係は絶対に夫や義理の両親に知られてはならない。
変化が訪れたのは、それから少し経ったことだった。
「……オーレリアをこの本邸に住まわせることにした」
「……何ですって?」
夫のウィルベルトからそう聞かされた私は、耳を疑った。
(本妻と愛人が同棲だなんて……聞いたことも無いわ)
オーレリアに未練があることを知ってはいたが、そこまでとは。
愛する女性と一緒になれなくておかしくなってしまったのだろうか。
凍えきった瞳で彼を見つめていると、彼が口を開いた。
「……オーレリアが、私の子を妊娠していたんだ」
「…………あら、それはおめでたいですわね」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
祝う気なんてさらさらないが、祝福の言葉だけでも述べておいた方が良いだろう。
公爵家の後継者が誕生するのだから、とても喜ばしいことだ。
「お義父様たちには伝えたのですか?」
「ああ……子がいることを言ったらオーレリアとの同居を認めてくれた」
「それは良かったですね」
愛する女性と一緒に暮らせるのだ。
彼にとってこれ以上嬉しいことは無いだろう。
「……お前は反対するのではないかと思っていた」
「反対?そんなことしませんわ」
キッパリと言うと、彼が何故だかショックを受けた気分になった。
何故そのような顔をするのか分からない。
私たちは普通の夫婦ではないのだから、夫に婚外子が出来るところで別に何とも思わない。
「旦那様の好きなようになさればいいではありませんか」
「……」
ウィルベルトは何か言いたそうに私を見つめていたが、結局何も言わずに部屋を出て行った。
(ハァ……ホンット、よく分からない人ね。愛する人との間に子が出来たのだからもっと喜んでも良いはずなのに)
「……ダリル様?」
調査を始めてから数日、屋敷の中で彼が私に声をかけた。
使用人の目があるため、堂々と屋敷内で会うことは出来ない。
私たちの立場を考えると当然のことだった。
「あの日、義姉上に言われたことについて考えてみたんだ」
「……」
彼は神妙な面持ちで自身の心境を語り始めた。
「……俺は、ずっと幸福を得る資格なんて無いと思っていた」
「……ダリル様」
「幼い頃からずっと先代公爵に言われ続けてきた。お前の父親は罪を犯した。お前は生かしてもらっているだけ有難いのだと。だからその恩に報いるように生きろと」
幼い子供に何てことを言うんだろう。
彼は何の罪も犯していないというのに。
「それから俺は後継者の座を諦め、騎士となることを選んだ。公爵家が繁栄するためなら汚れ仕事だって平然とやってみせた」
「……」
「だけど、あの日お前に言われて考えが変わった」
そこで彼は私と真っ直ぐに見据えた。
綺麗な赤い瞳が私を射抜く。
真剣な彼の表情に、胸がときめく。
「――俺は、これからは自分のために、そしてお前のために生きていきたい」
「ダリル様……!」
「俺も協力させてくれ、義姉上――いや、リーゼ」
そう言いながら彼は私の手をギュッと握った。
「はい、二人で共に未来を築いていきましょう」
「ああ」
***
ダリルが私の協力者となった。
私たちの関係は絶対に夫や義理の両親に知られてはならない。
変化が訪れたのは、それから少し経ったことだった。
「……オーレリアをこの本邸に住まわせることにした」
「……何ですって?」
夫のウィルベルトからそう聞かされた私は、耳を疑った。
(本妻と愛人が同棲だなんて……聞いたことも無いわ)
オーレリアに未練があることを知ってはいたが、そこまでとは。
愛する女性と一緒になれなくておかしくなってしまったのだろうか。
凍えきった瞳で彼を見つめていると、彼が口を開いた。
「……オーレリアが、私の子を妊娠していたんだ」
「…………あら、それはおめでたいですわね」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
祝う気なんてさらさらないが、祝福の言葉だけでも述べておいた方が良いだろう。
公爵家の後継者が誕生するのだから、とても喜ばしいことだ。
「お義父様たちには伝えたのですか?」
「ああ……子がいることを言ったらオーレリアとの同居を認めてくれた」
「それは良かったですね」
愛する女性と一緒に暮らせるのだ。
彼にとってこれ以上嬉しいことは無いだろう。
「……お前は反対するのではないかと思っていた」
「反対?そんなことしませんわ」
キッパリと言うと、彼が何故だかショックを受けた気分になった。
何故そのような顔をするのか分からない。
私たちは普通の夫婦ではないのだから、夫に婚外子が出来るところで別に何とも思わない。
「旦那様の好きなようになさればいいではありませんか」
「……」
ウィルベルトは何か言いたそうに私を見つめていたが、結局何も言わずに部屋を出て行った。
(ハァ……ホンット、よく分からない人ね。愛する人との間に子が出来たのだからもっと喜んでも良いはずなのに)
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