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32 事件
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オーレリアが公爵邸に来てから数日後、事件は起こった。
「大旦那様が怪我を……?」
「ああ、階段から落ちたらしい」
早朝、私の部屋にやってきたウィルベルトが深刻な顔で告げた。
昨日の夜、お義父様が階段から落ちて大怪我をしたのだという。
(事故かしら……それとも……)
考えたくはないが、誰かが突き落としたのだとしたら。
いくら引退したとはいえ先代の公爵閣下であり、現当主の父君でもあるお方だ。
ウィルベルトは何が何でも犯人を処罰するだろう。
「……昨日の夜、お前は何をしていた?」
「……私を疑っているのですか」
「……」
彼は否定も肯定もせず、私の答えを待っていた。
お前がやったのではないか、というような目で私を見つめる彼の視線が不快でたまらなかった。
ここへ来たときから彼はずっとそうだった。
全てを私のせいにしたいのだろう。
「昨日はいつも通り寝ていました。私は何もしていません」
「…………そうか」
きっぱりとそう告げると、彼は納得のいかない顔でこれ以上追究することもなく部屋から出て行った。
(……何かしら?)
てっきり事実確認もせずに責められるかと思ったため、彼の取った行動は少し意外だった。
(オーレリア様が一緒にいるから心が穏やかになっているのかしら)
どちらにせよ、運が良かったのは間違いない。
ただでさえ公爵家で冷遇されているというのに、義父殺しの汚名を着せられるのだけはご免だったからだ。
(どうかこれ以上は何も起こりませんように……)
そんな私の願いは、永遠に叶わぬものとなってしまう。
***
「な、何ですって……!?」
義父が階段から転落した翌日、またしても別の事件が起きた。
「お義母様がお茶に毒を盛られて倒れたと……!?」
義父の事故からまだ一日も経っていなかった。
それなのにこんなに立て続けに事件が起こるだなんて、異常だ。
「お義母様の容態は……」
「命に別条はない……が、毒の症状で酷く苦しんでおられる」
ウィルベルトがギュッと拳を握りしめた。
実の母親がそのような状況に陥っているのだ。
冷静でいられる方がおかしいだろう。
「毒の件については今捜査中だ」
「そうですか」
「当然、お前にも捜査の手が及ぶことになる」
「構いません、私の潔白が証明されるだけでしょうから」
「……」
ウィルベルトはまたしても何も言うことなく、部屋から出て行った。
(私を犯人だと思っているのか、そうは思っていないのか……よくわからないわね)
彼の考えは不明だが、今は義父と義母の回復が何より大切だ。
義理の両親なのだから一度はお見舞いに行くべきだろうと思った私は、ウィルベルトが開けたままにした扉から部屋を出た。
部屋を出て数歩歩いたところで、背後から鈴を転がすような声が耳に入った。
「――あら、奥様ではありませんか」
「…………オーレリア様?」
振り返ると、口元に笑みを浮かべたオーレリアが立っていた。
「大旦那様が怪我を……?」
「ああ、階段から落ちたらしい」
早朝、私の部屋にやってきたウィルベルトが深刻な顔で告げた。
昨日の夜、お義父様が階段から落ちて大怪我をしたのだという。
(事故かしら……それとも……)
考えたくはないが、誰かが突き落としたのだとしたら。
いくら引退したとはいえ先代の公爵閣下であり、現当主の父君でもあるお方だ。
ウィルベルトは何が何でも犯人を処罰するだろう。
「……昨日の夜、お前は何をしていた?」
「……私を疑っているのですか」
「……」
彼は否定も肯定もせず、私の答えを待っていた。
お前がやったのではないか、というような目で私を見つめる彼の視線が不快でたまらなかった。
ここへ来たときから彼はずっとそうだった。
全てを私のせいにしたいのだろう。
「昨日はいつも通り寝ていました。私は何もしていません」
「…………そうか」
きっぱりとそう告げると、彼は納得のいかない顔でこれ以上追究することもなく部屋から出て行った。
(……何かしら?)
てっきり事実確認もせずに責められるかと思ったため、彼の取った行動は少し意外だった。
(オーレリア様が一緒にいるから心が穏やかになっているのかしら)
どちらにせよ、運が良かったのは間違いない。
ただでさえ公爵家で冷遇されているというのに、義父殺しの汚名を着せられるのだけはご免だったからだ。
(どうかこれ以上は何も起こりませんように……)
そんな私の願いは、永遠に叶わぬものとなってしまう。
***
「な、何ですって……!?」
義父が階段から転落した翌日、またしても別の事件が起きた。
「お義母様がお茶に毒を盛られて倒れたと……!?」
義父の事故からまだ一日も経っていなかった。
それなのにこんなに立て続けに事件が起こるだなんて、異常だ。
「お義母様の容態は……」
「命に別条はない……が、毒の症状で酷く苦しんでおられる」
ウィルベルトがギュッと拳を握りしめた。
実の母親がそのような状況に陥っているのだ。
冷静でいられる方がおかしいだろう。
「毒の件については今捜査中だ」
「そうですか」
「当然、お前にも捜査の手が及ぶことになる」
「構いません、私の潔白が証明されるだけでしょうから」
「……」
ウィルベルトはまたしても何も言うことなく、部屋から出て行った。
(私を犯人だと思っているのか、そうは思っていないのか……よくわからないわね)
彼の考えは不明だが、今は義父と義母の回復が何より大切だ。
義理の両親なのだから一度はお見舞いに行くべきだろうと思った私は、ウィルベルトが開けたままにした扉から部屋を出た。
部屋を出て数歩歩いたところで、背後から鈴を転がすような声が耳に入った。
「――あら、奥様ではありませんか」
「…………オーレリア様?」
振り返ると、口元に笑みを浮かべたオーレリアが立っていた。
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