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4 放置された花嫁
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結婚式当日。
(公爵様はまだいらっしゃらないのかしら……)
控え室でウエディングドレスに身を包んだ私は、新郎となるウィルベルトの訪れを一人待ち続けていた。
式が行われるまで残り三十分しかないというのに、彼は一向に現れない。
先に挨拶を済ませた先代の公爵夫妻――ウィルベルトの両親が溜息をついた。
「まったく、あの子にも困ったものね」
「あの男爵家の女に未だ未練があるようだ」
ウィルベルトの両親は彼と身分の低い恋人との結婚に猛反対していたと聞く。
だからこそ、私との結婚の話をすぐに承諾したのだろう。
愛の無い結婚。
その点を言えば彼もまた被害者ではあるが。
(数ある名門貴族の中でもオーブリー伯爵家を選んだのはきっと自分たちに逆らえない嫁を手元に置いておきたかったから……)
その方が夫妻にとって都合が良くなる。
そう考えると、この先義理の両親と良い関係を築いていけるとはとても思えなかった。
それから三十分が経過したが、とうとうウィルベルトが式場に来ることは無かった。
悲しさと惨めさで俯いていた私に、先代の公爵夫人は平然と言い放った。
「――リーゼさん、悪いけれど貴方一人で式に出てくれないかしら?」
「…………え?」
(結婚式に一人で出る……?)
驚いて言葉が出ない私をよそに、先代公爵が口を開いた。
「そうだな、これ以上待ってもアイツは来ないだろう。ウィルベルトはいないが……まぁ、大して問題は無いだろう」
「そんな……」
ショックで何も言えなくなった。
私はそこまで惨めな扱いを受けなければならないのか。
(新郎不在の結婚式だなんて……)
一人で式に参加することにより、私が参列者たちに何を言われるか彼らは何も考えていないのだろう。
しかし、有無を言わせない公爵夫妻の笑みに、私は一人で結婚式に臨むこととなった。
***
それから少しして式が始まった。
一人で現れた私に当然、会場はザワめいた。
「公爵様はどちらにいらっしゃるのかしら……」
「まさか一人で……?」
「まぁ、何て惨めで哀れな……」
参列者たちの視線が痛い。
隣に新郎がいない状態でバージンロードを歩いている私は、完全に好奇の目に晒されている。
「ふふ……良い気味だわ」
「オーブリー何かが身の程も知らずに公爵様と結婚しようとするからよ……」
彼らの中で悪人は式をすっぽかしたウィルベルトではなく、オーブリー伯爵家の娘である私の方らしい。
そうなるのも当然だ。
ウィルベルトは王国一の家門ブリントン公爵家の当主であり、私は悪徳伯爵家の娘だから。
(お父様……)
参列者の中には父親の姿もあった。
夫となる人に放置された娘のことなど気にも留めていないのか、父はただ満足そうにこちらを見つめていた。
父にとって私は駒でしかない。
ウィルベルトにどのような扱いを受けようとどうだっていいのだろう。
神父の前に立った私は、一人で誓いの言葉を口にした。
こんな結婚式は見たことが無い。
たった一人で参列者たちの痛い視線を受け止めなければならなかった。
(早く終わらないかな……)
式は十数分で終わったものの、己の惨めさを感じずにはいられない結婚式だった。
(公爵様はまだいらっしゃらないのかしら……)
控え室でウエディングドレスに身を包んだ私は、新郎となるウィルベルトの訪れを一人待ち続けていた。
式が行われるまで残り三十分しかないというのに、彼は一向に現れない。
先に挨拶を済ませた先代の公爵夫妻――ウィルベルトの両親が溜息をついた。
「まったく、あの子にも困ったものね」
「あの男爵家の女に未だ未練があるようだ」
ウィルベルトの両親は彼と身分の低い恋人との結婚に猛反対していたと聞く。
だからこそ、私との結婚の話をすぐに承諾したのだろう。
愛の無い結婚。
その点を言えば彼もまた被害者ではあるが。
(数ある名門貴族の中でもオーブリー伯爵家を選んだのはきっと自分たちに逆らえない嫁を手元に置いておきたかったから……)
その方が夫妻にとって都合が良くなる。
そう考えると、この先義理の両親と良い関係を築いていけるとはとても思えなかった。
それから三十分が経過したが、とうとうウィルベルトが式場に来ることは無かった。
悲しさと惨めさで俯いていた私に、先代の公爵夫人は平然と言い放った。
「――リーゼさん、悪いけれど貴方一人で式に出てくれないかしら?」
「…………え?」
(結婚式に一人で出る……?)
驚いて言葉が出ない私をよそに、先代公爵が口を開いた。
「そうだな、これ以上待ってもアイツは来ないだろう。ウィルベルトはいないが……まぁ、大して問題は無いだろう」
「そんな……」
ショックで何も言えなくなった。
私はそこまで惨めな扱いを受けなければならないのか。
(新郎不在の結婚式だなんて……)
一人で式に参加することにより、私が参列者たちに何を言われるか彼らは何も考えていないのだろう。
しかし、有無を言わせない公爵夫妻の笑みに、私は一人で結婚式に臨むこととなった。
***
それから少しして式が始まった。
一人で現れた私に当然、会場はザワめいた。
「公爵様はどちらにいらっしゃるのかしら……」
「まさか一人で……?」
「まぁ、何て惨めで哀れな……」
参列者たちの視線が痛い。
隣に新郎がいない状態でバージンロードを歩いている私は、完全に好奇の目に晒されている。
「ふふ……良い気味だわ」
「オーブリー何かが身の程も知らずに公爵様と結婚しようとするからよ……」
彼らの中で悪人は式をすっぽかしたウィルベルトではなく、オーブリー伯爵家の娘である私の方らしい。
そうなるのも当然だ。
ウィルベルトは王国一の家門ブリントン公爵家の当主であり、私は悪徳伯爵家の娘だから。
(お父様……)
参列者の中には父親の姿もあった。
夫となる人に放置された娘のことなど気にも留めていないのか、父はただ満足そうにこちらを見つめていた。
父にとって私は駒でしかない。
ウィルベルトにどのような扱いを受けようとどうだっていいのだろう。
神父の前に立った私は、一人で誓いの言葉を口にした。
こんな結婚式は見たことが無い。
たった一人で参列者たちの痛い視線を受け止めなければならなかった。
(早く終わらないかな……)
式は十数分で終わったものの、己の惨めさを感じずにはいられない結婚式だった。
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