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12 ダリル・ブリントン
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ダリルが帰って来る日となり、夫人はとうとう部屋に引きこもるようになってしまった。
顔を真っ青にし、侍女に支えられながら部屋へ入って行ったきり彼女の姿を見ていない。
「アイツが今になって帰って来るとは……」
「いたところで公爵家の恥だからいっそ戦死してくれればよかったのに」
彼の帰還に不満を抱いているのは夫人だけでは無かったようで、義父とウィルベルトまでもがそう吐き捨てた。
これからもう一人の息子が帰ってくるとは思えないような殺伐とした雰囲気だ。
「……」
すぐ傍で聞いていて不快感を感じずにはいられなかった。
(どうしてそこまで彼を嫌っているのかしら……?)
義父にとっては愛する息子であり、ウィルベルトにとってはたった一人の弟だ。
いくら自分勝手に家を出て行ったとはいえ、そこまで言う必要は無いのではないだろうか。
優秀な兄だけを愛し、弟の方は冷遇する。
兄弟でここまで扱いに違いがあるのか。
(そんな家なら出て行きたくなるのも当然ね……)
じっと考え込んでいたそのとき、一人の使用人が声を上げた。
――「ダリルお坊ちゃまがお戻りです!」
その言葉と同時に、エントランスの扉から一人の男性が姿を現わした。
騎士のように引き締まった体に、思わず目を奪われてしまう。
(この方が……)
ウィルベルトや夫人と同じ金色の髪に、彼らとは似ても似つかない赤い瞳を持ち合わせた美しい青年だった。
兄であるウィルベルトとはあまり似ておらず、兄弟だと言われなければ気が付かないだろう。
(赤い瞳……綺麗……)
彼の姿を見るなり、義父が顔をしかめた。
「一体何故帰ってきた?ここへ来たところでお前の居場所など無い!」
怒声を上げる父親に対し、彼は平然と返した。
「そんなことは分かっています。しかし、誰が何と言おうと私は公爵家の一員ですから。幼い頃にしっかりとそう証明されたではありませんか」
「ぐぬぬ……私はお前を公爵家の人間だと認めていない!」
「父上が認めていなくとも、この身に流れる血は間違いなくブリントン公爵家のものですから」
ダリルはフッと笑いながら父親の横を通り過ぎると、後ろにいたウィルベルトの前で立ち止まった。
「……永遠に帰ってこなければ良かったものを」
弟の顔を見たウィルベルトはただそれだけポツリと呟いた。
そんな兄の態度を見てもダリルは表情を崩さなかった。
それどころか楽しそうに笑ってみせた。
「兄上、相変わらず冷たいですね」
「黙れ、お前のせいで母上がどれだけ辛い思いをしてきたか」
「勝手に産んでおいてそれは無いでしょう」
「お前……!」
ダリルはニヤリと口角を上げると、飛び掛かりそうなウィルベルトを無視して自室へと向かった。
彼が去った後、その姿を目にした使用人たちが怯えたように話し始めた。
「相変わらず気味が悪いわ……」
「戦場では女子供関係無く皆殺しにするらしいわよ……」
ウィルベルトとは違って屋敷内でのダリルの評判はあまり良くないらしい。
彼らの発言が事実かどうか定かではないが。
「それよりあの話、聞いた?」
「ダリルお坊ちゃまが幼い頃に奥様を剣で殺そうとしたらしいわ」
「まぁ、実の母親を手にかけようとしたということ?」
「何て恐ろしい男……」
「……」
そんな衝撃的な話を聞いても不思議と彼に対する恐怖心はあまり湧いてこなかった。
ただただあの赤い瞳が美しいと、そう感じた。
(義弟になるお方だし……挨拶はしておいた方がいいわよね?)
そう思った私は、慌てて彼の後を追った。
顔を真っ青にし、侍女に支えられながら部屋へ入って行ったきり彼女の姿を見ていない。
「アイツが今になって帰って来るとは……」
「いたところで公爵家の恥だからいっそ戦死してくれればよかったのに」
彼の帰還に不満を抱いているのは夫人だけでは無かったようで、義父とウィルベルトまでもがそう吐き捨てた。
これからもう一人の息子が帰ってくるとは思えないような殺伐とした雰囲気だ。
「……」
すぐ傍で聞いていて不快感を感じずにはいられなかった。
(どうしてそこまで彼を嫌っているのかしら……?)
義父にとっては愛する息子であり、ウィルベルトにとってはたった一人の弟だ。
いくら自分勝手に家を出て行ったとはいえ、そこまで言う必要は無いのではないだろうか。
優秀な兄だけを愛し、弟の方は冷遇する。
兄弟でここまで扱いに違いがあるのか。
(そんな家なら出て行きたくなるのも当然ね……)
じっと考え込んでいたそのとき、一人の使用人が声を上げた。
――「ダリルお坊ちゃまがお戻りです!」
その言葉と同時に、エントランスの扉から一人の男性が姿を現わした。
騎士のように引き締まった体に、思わず目を奪われてしまう。
(この方が……)
ウィルベルトや夫人と同じ金色の髪に、彼らとは似ても似つかない赤い瞳を持ち合わせた美しい青年だった。
兄であるウィルベルトとはあまり似ておらず、兄弟だと言われなければ気が付かないだろう。
(赤い瞳……綺麗……)
彼の姿を見るなり、義父が顔をしかめた。
「一体何故帰ってきた?ここへ来たところでお前の居場所など無い!」
怒声を上げる父親に対し、彼は平然と返した。
「そんなことは分かっています。しかし、誰が何と言おうと私は公爵家の一員ですから。幼い頃にしっかりとそう証明されたではありませんか」
「ぐぬぬ……私はお前を公爵家の人間だと認めていない!」
「父上が認めていなくとも、この身に流れる血は間違いなくブリントン公爵家のものですから」
ダリルはフッと笑いながら父親の横を通り過ぎると、後ろにいたウィルベルトの前で立ち止まった。
「……永遠に帰ってこなければ良かったものを」
弟の顔を見たウィルベルトはただそれだけポツリと呟いた。
そんな兄の態度を見てもダリルは表情を崩さなかった。
それどころか楽しそうに笑ってみせた。
「兄上、相変わらず冷たいですね」
「黙れ、お前のせいで母上がどれだけ辛い思いをしてきたか」
「勝手に産んでおいてそれは無いでしょう」
「お前……!」
ダリルはニヤリと口角を上げると、飛び掛かりそうなウィルベルトを無視して自室へと向かった。
彼が去った後、その姿を目にした使用人たちが怯えたように話し始めた。
「相変わらず気味が悪いわ……」
「戦場では女子供関係無く皆殺しにするらしいわよ……」
ウィルベルトとは違って屋敷内でのダリルの評判はあまり良くないらしい。
彼らの発言が事実かどうか定かではないが。
「それよりあの話、聞いた?」
「ダリルお坊ちゃまが幼い頃に奥様を剣で殺そうとしたらしいわ」
「まぁ、実の母親を手にかけようとしたということ?」
「何て恐ろしい男……」
「……」
そんな衝撃的な話を聞いても不思議と彼に対する恐怖心はあまり湧いてこなかった。
ただただあの赤い瞳が美しいと、そう感じた。
(義弟になるお方だし……挨拶はしておいた方がいいわよね?)
そう思った私は、慌てて彼の後を追った。
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